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私の幸せを食いつぶす第三公爵の甘い罠 重い愛から噴出する勘違い悪意による良かれと思ってやる方向音痴な献身が返って迷惑です 薔薇の香りの浪費家を普通の愛だけでお腹いっぱいになる生き物へ変えてみせます  作者: 友人の痴話喧嘩の話を聞いている時の私? 笑顔を隠すのに必死よ。だって、口角が『もっと聞かせて』って疼くから


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カシアンの「雑草のパテ」が、貴族たちの間で「禁断の解毒剤」として一世を風靡し、エルゼの金庫が嬉しい悲鳴を上げていたある日のこと。

伯爵邸の門を、まるで戦車のような威容を誇る、特注の巨大馬車が突き破らんばかりに現れた。


「……私の、可哀想なカシアン!」


馬車の扉が開くや否や、絹のドレスをはためかせ、ダイヤモンドの雨を降らせるような勢いで飛び出してきたのは、公爵家の長女であり、カシアンが最も慕い、恐れる姉、イザベラだった。


彼女は東方諸国への三年間の船旅を終えたばかり。その肌は異国の太陽で磨き抜かれ、瞳には極北の氷山のような冷酷さが宿っている。


「イザベラ様……。ご帰還早々、門を壊すのはいかがなものかと」

エルゼが事務的に帳簿から目を離すと、イザベラは手にした扇子をエルゼの鼻先に突きつけた。


「黙りなさい、この銭ゲバ! カシアンからの手紙を読んだわ。『姉上、僕は今、道端の草を食べて命を繋いでいます。エルゼが僕を地下に閉じ込め、愛を与えてくれるからです』……なんですって!? 私の宝石のような弟を、牛や馬と同じ食事で飼い慣らすなんて、どんな拷問なの!」


「見てください、姉上。エルゼが僕を『しつけて』くれたおかげで、僕は命の根源(雑草)に触れることができた。今、僕はかつてないほど健康で、愛に飢えているんだ」


「カシアン……! ああ、なんて痛々しい……その、切り刻まれた髪! 飢えすぎて、ついに自分の体の一部まで食べてしまったのね!?」


「いいえ、これはエルゼのために焼いたパンの燃料に——」


「もういいわ、言わないで!」

イザベラは弟の言葉を遮り、カシアンを背後に隠すと、エルゼを蛇のような目で見据えた。


「いい、エルゼ。私はあなたのことが死ぬほど嫌いよ。カシアンという至高の芸術品に、帳簿のインクを塗りつけるような真似をするその商人気質。反吐が出るわ」


「光栄ですわ。私も、働かずに宝石をジャラつかせるだけの『飾られた肉体』を見ると、その維持費を差し押さえたくなる病気なんですの」


二人の間に、目に見える火花が散る。

しかし、イザベラはカシアンがエルゼの服の裾を、まるで宝物のように握りしめているのを見て、唇を噛んだ。


「……けれど。この子が、あなたがいなくなると泣き喚いて、帝都を涙の海に沈める(※姉の妄想)のも見たくない。カシアンの悲しみは、私の宇宙の終わりよ」


イザベラは、首元から拳ほどもある**『黄金真珠のペンダント』**をもぎ取ると、エルゼの机に叩きつけた。


「これは貸しよ。これで今すぐ、弟に最高級の牛のフィレ肉と、白トリュフを買いなさい。雑草料理なんて、今すぐ廃業よ。……もし次にカシアンが草を口にしたら、私はあなたの商館を丸ごと買い取って、更地にしてバラの棘を植えてやるから!」


「……黄金真珠。これ、伝説の、海底火山の噴火でしか生まれないという……」


エルゼの脳内計算機が、天文学的な数字を叩き出した。

この女、嫌い。猛烈に嫌い。けれど、これほど「利益」を運んでくる、分かりやすい敵もいない。よく考えたら、この人のせいでカシアンがこうなったのかもしれない。


「分かりましたわ、イザベラ様。カシアンに肉を食べさせましょう。ただし——」


エルゼは不敵に微笑み、真珠を指先で弄んだ。


「その肉を、カシアン自身に調理させ、貴女に振る舞わせます。世界で一番高い『姉弟愛の味』を、たっぷりとお見せしますわ。もちろん、観覧料チップは別途いただきますけれど」


「……面白いじゃない。受けて立つわ、この寄生虫の妻」


ブラコンの姉、無自覚な悪意を振り撒く弟、そして彼らを「搾取」して富を築こうとする不屈の妻。

ルミエール伯爵邸の食卓は、さらなる濃厚なドロドロと、黄金色の火花に包まれようとしていた。

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