7/11
7
エルゼが仕掛けた「カシアン・レンタル」は、帝都の淑女たちの間に、ペスト以上の速度で熱狂を撒き散らした。
「ああ、見て! この憂いを含んだ眉間の皺! 閣下は今、何を想っていらっしゃるの?」
「このシャツの袖口、閣下が実際に袖を通されたものなんですって! 嗅いで……薔薇と、ほんの少しの『雑草』の香りがするわ!」
肖像画一枚を借りるために、伯爵家の負債を数ヶ月分賄えるほどの金貨が積み上がる。エルゼは日々、札束の山を数えながらも、心のどこかに拭い去れない「泥」のような感情を溜め込んでいた。
「奥様、本日もオークションは大盛況です。……ですが、カシアン様本人が『自分も会場で愛を説きたい』と仰っておりまして」
執事の報告に、エルゼは手元の羽根ペンを真っ二つに折った。
「ダメよ、あの劇薬を外に出したら、今度は帝都中の女が破産するわ。……でも」
エルゼはふと、地下室で雑草を慈しむカシアンの、短くなった銀髪を思い出した。
彼を商品として扱い、金を稼ぐ自分。
私を愛していると言いながら、私のすべてを破壊する彼。
私たちは、どちらがより深く、相手を「食いつぶして」いるのだろうか。




