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「店主! これをいくらで買い取ります!?」
店主は怪訝な顔で肖像画を受け取り、鑑定の道具を手に取りました。
「おや、これはカシアン公爵閣下ではないですか。絵の腕前は一流ですが、いかんせんモデルが……。ええと、このご尊顔を拝見するたびに、最近の伯爵家の深刻な金欠が思い出されましてね。うーむ、せいぜい金貨一枚、といったところでしょうか?」
「なにを言っているの!? この美貌よ!? 市場に一点しかないこの奇跡の造形よ!? これを、あなたのような凡人が金貨一枚で済ますつもり!?」
エルゼは身を乗り出し、店主の襟首を掴みました。
「いい? 今から私が提案する『企画』に乗れば、あなたは金貨どころか、王室御用達の御用商人になれるわ!」
エルゼの目には、かつてないほどのギラついた光が宿っていました。
「カシアンは、閉じ込めてあるわ。だから、世の女性たちは、あの完璧な美貌を拝むことができない。飢えているのよ! そこで、この肖像画を担保に、『カシアン閣下の一日肖像画レンタル権』をオークションにかけるのよ! 落札者は、一日に限り、この絵を自分の屋敷に飾り、彼への愛を語る口上を五分間聞くことができる! そして、最高額を提示した者には……なんと、カシアン閣下の私物(着用済みシャツや手袋など)を進呈するの! これなら、女性たちは狂喜乱舞するわ!」
店主は目を丸くし、ごくりと唾を飲み込みました。
「……奥様、それは、まさか……カシアン様自身を『商品』にする、と?」
「そうよ! 彼が私の財産を『愛の証』と称して食いつぶすのなら、私も彼の『愛すべき美貌』で金を稼がせてもらうわ! これが私の、愛ある報復よ!」
商館へと戻っていきました。その足取りは軽く、顔には悪魔のような、しかし妙に魅力的な笑みが浮かんでいました。




