滝岡家の犯罪防止計画 その3
その3です
小話はこちらでラストとなります
食事の後、浴衣を着てのんびりと廊下を歩いている振りをしながら秀一がそーっと障子の中を覗こうとする。
「こら、おまえ、何をしてる」
後ろから突然頭に手を置かれて、驚いて振り向く秀一に、あきれた顔をして滝岡が。
「おまえな、…。驚いた振りがわざとらしいぞ?まったく、どうした。眠れないのか?」
関はどうした?と聞いてくる滝岡に困った顔をしてくちを結んで。
「ん、別に、――神尾さんは?」
「神尾に話があるのか?いまどこかと連絡を取りに出たが」
不思議そうにみる滝岡に困って横を向く。
「えーと、…だから、――」
「どうした。何か話があるのか?」
穏やかに微笑んで、滝岡がぽんぽん、と秀一の頭に軽く手をおいて。
「ほら、どうした」
訊ねる滝岡に困ってみあげて。
夜の落ちる中に、庭を望む縁側にきて、困った風に闇におぼろに浮かぶつくばいを眺めて。
滝岡があっさりと縁側に座って夜の庭を眺めている隣に困りながら座る。
足をぶらぶらさせる秀一に、何もいわずに。
「えーと、あのさ?」
「ああ、…なんだ?」
闇の葉擦れを楽しむように庭を眺める滝岡を隣に。足をぶらつかせるのをやめて秀一がちら、と滝岡をみる。
そして。
とん、と肩にぶつかってくる秀一に。
「…おまえな」
無言で遠くをにらんでみている秀一に滝岡が多少あきれたように視線をむけて。
それから、穏やかに微笑むと頭に軽く手を置く。
「どうした」
「…――僕って、見栄っ張りだし」
「知ってる。それがどうした?」
ぽんぽん、と軽く手を髪に置く滝岡に秀一がくちを軽くむすんで溜息を。
「あのね?にいさん。…僕、こどもじゃないんだけど」
「…しってる、が、…。どうした?いまの様子はこどもにしかみえないが」
面白がるようにいう滝岡に、横を向いたままくちを尖らせる。
「…それは、――だってさ、」
「だって、なんだ?」
滝岡が微笑むと、くい、と軽く秀一の肩を抱き寄せる。
「うわ、…あ、あの、にいさん?」
驚いて滝岡を見ようとする秀一に、頭を軽くぽんぽんと叩いて肩に顔を寄せさせる。
面白がって微笑んでいる滝岡に、抗議しようと思うのだが。
む、とくちを結んで、滝岡の肩に抱き寄せられて動けずに。
「…―――スキンシップ?」
とだけ何とかくちにしてみる秀一に、滝岡が笑う。
「そうだな、…最近不足してたか?まったく、おまえはな」
髪を軽く叩いて、面白そうに微笑みながら。その滝岡に反抗しようかと考えながら、どうにも。
――温かいかも、だから、…えーと、つまり、…っ。
困って、ことり、とあらがうのをやめて額を滝岡の胸につけてみる。
「あのな?」
「うるさい。…どうせこどもだよっ」
「確かにな、…まったく」
髪をかるくはたいて抱き寄せる滝岡に。
ぎゅ、と後ろ手に滝岡の浴衣の帯を握ってみる。
「一緒に寝るか?」
「…ば、こどもじゃないしっ」
「こどもだろう。神尾も構わないだろうから、雑魚寝するか?まったくな」
穏やかに微笑んで少しばかり楽しむようにいう滝岡に。
――まったく、にいさんには敵わないんだけど。…
思いながら、ちら、とみあげて。
「どうした?」
面白そうにみる滝岡に。
「わかった、一緒にねる」
「そうか、じゃあ、神尾に許可をとろう」
面白そうに笑みをこらえている滝岡にちょっとむっとしながら。それから。
――にーさん、当たり前だけど神尾さんの許可が先なんだ。
本当に僕ってこどもみたいだけどさ、と。少しばかりすねて思いながら、ことり、と額で滝岡の胸をつついてみる。
「こら、あばれるな」
「えー、この程度でー?あばれてないもん」
「あばれてるだろ。神尾の許可がもらえないぞ?」
「えっ?その、それは、…」
ついつまる秀一に滝岡が笑う。
「うそだ。おまえが一緒にねるくらいなら、神尾は平気だろう。元々、紛争地帯でも平気でねてた奴だからな」
楽しげに笑う滝岡に、むっとしてみあげて。
それから。
やっぱり。
――にーさん、よかったな、…。
「…おい、こら、何を考えてる?」
「…妙な処でするどい、にーさん」
「当たり前だ。おまえも関もヘンな処でよくわからないことを考えてたりするからな。そういうときは大概わかる。…さて、神尾が寝不足になったら困る。部屋に戻るぞ」
「――はーい、…神尾さん、本当にいいの?」
立ち上がって肩に手を回されたままついていきながらきく秀一に滝岡が。
「この甘えん坊には仕方ないといってくれるだろ」
「えーっ!僕のこと?それ?それってひどいー!」
「…他に事実を何といえばいいんだ」
「…ええっ、ひどいー」
賑やかに部屋に戻って。
あっさりと神尾が構いませんよ、というのをきいて。
かくして。
「何をしてるんだ、こいつらは、…―――」
秀一が戻らないことに一応様子を見に来た関があきれてみる。
障子の向こうには。
滝岡を真ん中に。左手に肩を抱えられて、顔を滝岡の肩に伏せてねている秀一と。滝岡の右肩を枕にして安眠している神尾の三人。
「ねこの仔かなにかか」
あきれて眺めて軽く腕を組み、着流しの裾を軽く返して。
関が静かに障子を閉めて立ち去ったことにもまるで気付かず、ぐっすりと眠っている秀一に。
廊下を行く関が、少しばかり安堵したように僅かに微笑んで足を運ぶ。
夜の柔らかな月灯りが廊下を僅かに照らすのに。
ふと微笑んで、関は月を仰いでいた。
ゆったりとおだやかに、密やかに夜の刻は流れている。
――偶には、こんな夜も良いな。
柔らかに降る月灯りに、淡く染まる庭を眺めて。
平穏な夜の帳に、穏やかに刻はすぎている。
了
平穏な夜です
ゆっくり、おやすみを




