関のストレス解消法「雪見の鍋に至るまで」
神尾先生の出てくる事件簿に載せた
「雪見の鍋」に至るまでの小さなお話
関、がんばれ…
関のストレス解消法「雪見の鍋に至るまで」
先日、実に美味しい雪見の鍋を関が振る舞ってくれたのだが。
その数日前。
「…滝岡。鍋をしたいんだが、五,六人集められないか?」
関家に備えられた道場で、早朝に試合をして軽く汗を流したあとに。
遠くをみながらほとんど上の空で云う幼なじみの強面に、滝岡は澄んだ早朝の寒さが薄青に空を渡る中に、問うことはせずにうなずいていた。
二人共に試合用の和服を着て、しばらく振りの稽古となったのだが。
…――これは、ストレスが大変なことになっているな、…。
この強面の幼なじみのストレスが主に何処からくるのか。
そして、その原因である秀一が、おそらくは仕事の絡みでしばらくは此処を訪れることができず。それがさらにストレスを増大させる原因になっているのが見て取れて。
関にとっても弟分である鷹城秀一。滝岡にとり弟である秀一が、おそらくこの幼なじみに無茶なストレスをかけている想像が簡単にできて。
少し、関に内心謝る心地で滝岡がいう。
「わかった。だが、光は無理だぞ?あれは手術の準備がある。他はシフト次第で誰がくることになるかわからんが、それでもいいか?」
「―――…光が来れないのか、…。それは残念だな。あの、細長くて背が高い先生、結構めしをちゃんと食うので気に入っているんだが」
片付けをしながら関がいうのに、滝岡が首を傾げる。
「…神原先生か?――うーん、…確か、先生も光と一緒にハイブリッド手術だ。小児心臓外科の専門医だからな、神原先生は。こちらに来てくださってから、光と一緒に合同手術をすることが多い。難易度の高い手術が国内でできるようになったとよろこばれているらしい」
うれしそうに少しばかり微笑んでいう滝岡に、伸びをして関が思い切り組んだ手をさらに上に伸ばしながらいう。
「それは仕方がないな」
「…わかった、五、六人でいいんだな?」
「そうだ。連絡くれ」
「…わかった」
仕事へ行く為に、道場を離れて母屋に戻りながらいう関に、滝岡がもう一度うなずいていう。
穏やかに、その背が抱えているストレスと、守秘義務等の為に、簡単に何一つ話すことのできない関が、それ以上を言葉にしないのを慮って。
片付けて母屋で手入れする為に運ぶ居合いの訓練用に刃引きされている漆塗りの鞘に入った刀を運びながら。
かくして、先日。
人数併せに院長まで伴うという、滝岡にとってストレスマックスな事態に陥りながらも、美味しい雪見の鍋をいただいたのだった。
これが関のストレス解消法です…
いいのかそれで?
美味しいからいいのか?




