呪いの人形
呪いの人形でエッチな事しか言えなかったら?
と指示しました。
並行世界の話。
呪いの人形事件
放課後・旧校舎の倉庫
カビ臭い空気が漂う旧校舎の倉庫。
スミスがホウキを片手に、誇らしげに棚を指差す。
「見ろよ佐波、皆川! ここに怪しいのがあったんだ」
峻は眉をひそめて、半分眠そうな顔のまま覗き込む。
「どうせガラクタだろ……って、うわ……」
そこには古びた日本人形があった。
白い顔に、のっぺりとした笑み。煤けた着物。
目だけがやたらギラついている。
「……きゃっ!」
真が足をすべらせ、思わずその人形に触れてしまう。
次の瞬間。
――ビシィィッ!
紫の光が人形から弾け、真の体を包み込んだ。
彼女は小さな悲鳴を上げて尻もちをつく。
「まこちゃん!? 大丈夫か!?」
峻が慌てて駆け寄る。
真はふらふらと立ち上がった。
頬は赤く、瞳は潤んでいる。
「ケガは――」
「……しゅー……触って……もっと……」
「はああああああ!?!?」
峻の顔は一瞬で真っ赤に。
スミスは腹を抱えて笑い転げる。
「おーっと!? 皆川がいきなり飛ばしてきたぞ!」
真自身も驚いたように口を押さえる。
「ち、違っ……な、なんで……!? ……んっ……キスしたい……」
「うわあああ!!!」
峻は後ずさり、机にぶつかる。
さらに真は、両手で顔を覆いながらも声を漏らす。
「抱きしめて……今すぐ……」
リリリが顎に手を当てて冷静に分析。
「これは呪いですよう。『エッチなことしか言えなくなる人形』の伝承そのまんまですよう」
旧校舎を抜け、三人は本校舎へ戻ろうとした。
だが真の「暴走発言」は止まらない。
「しゅーのベッドで……朝まで……」
「やめろぉぉぉぉ!!」
廊下にいた男子たちが一斉に振り向く。
「な、なに!? 今“ベッド”って……」
「皆川さん、マジ!?」
「神よ、俺に耳を与えてくれてありがとう!」
「聞くなあああああ!!」
峻は両手を振り回し、必死で人垣をかき分ける。
だが真は恥ずかしさで涙目になりつつも、なおも暴走。
「……子供……欲しい……」
「ギャアアアアア!!」
峻は床に崩れ落ちた。
解決のとき
混乱の極みに現れたのは、ルベス。
廊下の隅で人形をひょいと拾い上げる。
「これは呪いの人形の仕業ですねぇ。解除方法はシンプル……佐波さんが“心からの愛の言葉”を告げればいいのです」
「え、えぇ……!? この状況で!?」
「やれよ佐波! 今がクライマックスだ!」
真は涙目で、必死に口を押さえていた。
「……んっ……だいす……」
(もう限界だ!)
峻は腹を決め、真の両手を掴んで真正面から見つめる。
「まこちゃん……! 俺は、お前が好きだ! 誰よりも、大事に思ってる!!」
その瞬間、真の体を包んでいた赤いオーラがスッと消える。
彼女の顔から火照りが引き、普段の落ち着きを取り戻した。
「……しゅー……私……変なことばっかり……」
「い、いいって! 気にすんな! 俺も心臓止まるかと思ったから!」
人形はルベスの手の中でパリンと割れ、煙のように消滅。
これで一件落着――のはずだった。
だが翌日、校内は妙な噂で持ちきりだった。
「昨日、皆川さんが“峻くんの子供が欲しい”って叫んでたらしいぞ」
「マジか!? 公認カップルどころか、新婚モード!?」
「尊い……!」
「ちがぁぁぁぁぁぁぁう!!」
「うぅぅ……もう学校行けないよ……」
その横で、スミスとリリリとルベスが声を揃えて笑う。
「にゃはははは!」
こうして――皆川真の「呪いの人形事件」は、学園の七不思議に新たに加わったのであった。
やはり直接的にエッチな単語は使えないので遠回しの表現になりました。
誰でも使えるし、子供がやった時の為でもあるのでしょうね。




