すれ違う声、入れ替わる日常
中身が入れ替わる話で、なんやかんやあって元に戻ると丸投げしてみました。
並行世界の話。
目が覚めた瞬間、俺は叫んだ。
「…………え?」
目の前にあるのは、見慣れた俺の部屋――じゃなくて、まこちゃんの部屋だった。壁のメモ、机の上のカラフルなペン立て、柔らかい香りのする布団。
いやいや待て、なんで俺はここに――。
起き上がった瞬間、胸元が妙に軽く揺れた。
……揺れた。
「お、おいおい……これ……」
震える手で自分の髪を触る。いつもの短い髪ではない。肩まである、さらさらした黒髪。
鏡をのぞく。
映ったのは――まこちゃん。
「……入れ替わってる!?」
✦ ✦ ✦
一方その頃、俺の身体のまこちゃんは俺のベッドで目を覚まし、同じ叫び声を上げていたらしい。
朝から互いの家に電話するわけにもいかず、結局そのまま学校に行くことにした。よりにもよって平日。
そして登校中、俺(外見まこちゃん)は道で出会った。
「しゅー!? これ不便だよ!? 男の体、重いし声出すとビックリするし!」
「いや俺だって慣れないから! まこちゃんの声で喋ると妙に恥ずかしいんだよ!」
この時点で普通にバレるので、慌てて声量を落とす。
「とにかく、学校では絶対バレないようにするぞ」
「わかった……しゅーのフリ、する……」
「……なんでそんな無表情なんだよ。俺そんな暗いか?」
「しゅーって、ちょっと照れ屋で無表情っぽい時あるじゃん」
「いやないよ!? 誰情報!?」
✦ ✦ ✦
学校到着。
教室に入った瞬間、クラスメイトたちの視線が集まった。
『おはよー皆川〜!』
「お、おはよ……です……じゃなくて……だ、だぞ……?」
語尾でつまずくまこちゃん(中身俺)。
違和感がすごすぎる。
『峻、おまえ今日元気ないな』
「……まあ、ちょっとな」
妙に大人びた返事。
だめだ、俺の身体のくせに女子っぽい。肩すくめ方も女子。
そして極めつけ。
「しゅー、教科書貸して?」
いつもの調子でまこちゃん(中身まこちゃんのはず)が俺に話しかけてきた――ように見えるが、実際は俺の身体に入ってるまこちゃんが喋っている。
「あ……ああ……ほら……」
俺(外見まこちゃん)は自分の鞄から教科書を出そうとする。
だが。
まこちゃんの鞄の中身、配置がまじでわからない!
「ど、どこだ!? 筆箱は……ノートは……ポーチ多い!!」
「しゅー落ち着いて! それメイクポーチ! それは鏡! それはヘアピン入れ!」
「ポーチ多すぎだろお前ぇ!!」
周囲がざわつく。やばい。
✦ ✦ ✦
次の休み時間。
俺(外見まこちゃん)は女子に囲まれた。
『皆川〜今日なんか雰囲気ちがうね』
「えっ!? そ、そうかな!?(声高っ)」
『めっちゃテンパってるじゃんw』
『かわいい〜』
女子に囲まれるという人生初の状況に、素で動揺してしまう。
一方のまこちゃん(外見俺)は男子に囲まれ、体育の準備でシャツの着替えを要求されていた。
『峻、今日筋トレやるぞー』
「しゅー助けて!? 着替え方わかんない!! 肩幅広い!!」
「広いのは俺のせいじゃない!」
完全に地獄。
✦ ✦ ✦
放課後。
さすがに限界だった俺たちは、人のいない屋上へ避難した。
「もうむり……しゅーの体、重心違うし動かし方わかんない……」
「俺だってまこちゃんの声で喋るだけで心臓が死ぬほど恥ずかしいんだよ……」
互いに机にもたれて落ち込む。
その瞬間――。
バチッ
空気が弾けたような音とともに、身体がぐらりと揺れた。
「うわっ!」
「きゃっ!」
視界が真っ白になり――。
✦ ✦ ✦
気づくと、俺は俺の身体に戻っていた。
まこちゃんも自分の姿。
「……戻ってる?」
「戻ってる!! しゅー、声がしゅーだよ!」
「まこちゃんも戻ってる!!」
互いに手を握って確認し合い、思わず笑う。
なんで戻ったのかは結局わからなかった。
でもまあ――。
「……もう入れ替わるのは、こりごりだな」
「うん……でも、ちょっとだけ楽しかったかも?」
「俺は大変だったよ!」
「えへへ、ありがと。しゅーが私を頑張って守ってくれたから、なんとかバレなかったんだよ?」
「……そ、それは……ま、まあ……当然だろ」
夕焼けの屋上で、ちょっとだけ距離が近くなる俺たちだった。
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◆エピローグ
帰宅後、まこちゃんはママ――皆川真美に今日の話をしたらしい。
「あらあら、真さん。入れ替わり、ですか? 峻さんと?」
「うん! 本当なの!」
「まあ……二人とも無事に戻れてよかったですわ。いえ、よかったです」
にこにこしながら紅茶を淹れる真美さん。
怒る気配はまったくない――が。
「ただし……授業中に変な動きをしていた、と先生からお電話が来まして……」
「えっ?」
次の瞬間、笑顔のまままこちゃんの頭をやさしく“わしっ”とつかむ。
「ちょっとだけ、説教部屋にまいりましょうか」
「い、いやああああああああああああああ!!!」
その叫びを、俺は自室で聞いたような気がした。
AIのあとがき
今回は入れ替わりコメディでした。
二人の普段とのギャップが多いほど、入れ替わりの混乱は楽しくなるので、学校でのやり取りを中心にドタバタを描きました。




