百円スキル召喚士 ――異世界に連れてこられたのは俺と、百円ショップの棚だった。
異世界召喚されてスキルが100円ショップだったら?
で書いてもらいました。
一 召喚の間に現れた“店内”
世界が白く弾けた。
視界が焼き切れるような光の奔流に、俺は悲鳴を上げる暇すらなかった。
耳鳴り、浮遊感、重力の消失。
落ちているのか、上昇しているのか。
上下の感覚すらわからぬまま、俺はただ光の中を漂っていた。
――そして、唐突に着地した。
硬い石床の感触。
冷たさが靴底から伝わり、足が震える。
見上げれば、大聖堂のような巨大な天井。アーチ状の梁の間に青い魔力光が走り、床いっぱいに描かれた魔法陣が脈動していた。
周囲に並ぶローブの魔術師たちが、一斉に俺を凝視する。
「……召喚……成功……?」
「いや、しかし……これは……」
俺は訳がわからず、自分のすぐ背後を振り返った。
その瞬間、頭が理解を拒否した。
――棚。
いや棚だけじゃない。
陳列棚、ワゴン、フック、商品見本。蛍光灯まで。
そこに広がっていたのは、
俺がバイトしていた100円ショップの一区画そのものだった。
白い板張りの棚に、整然と並んだ商品。
カラフルなパッケージ、プラスチックの光沢、日用品特有の少し安っぽい匂いまでが漂ってくる。
「……え、俺、店ごと異世界召喚された……?」
口にした瞬間、現実感が一気に押し寄せた。
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二 銀髪の少女と肩書き“責任者”
「あなたが……勇者様、なのですか?」
恐る恐る近づいてきたのは、銀髪の少女。
肩まで流れる髪は淡く光り、瞳は澄んだ青。
白いローブの胸元に、小さなバッジが付いている。
〈大召喚失敗の責任者〉
なんだその不穏な肩書き。
「……なんか、すいません俺。棚ごと来ちゃって」
「い、いえ、こちらのミスなので……。本来は伝説の勇者様を召喚するはずでした。でも、見ての通り……なぜか“店”が……」
少女は泣きそうに100円ショップの棚を指差した。
「本当に……意味がわかりません……」
俺もわからん。
でも、とりあえず状況を把握すべく、少女に聞く。
「で、俺、なんかスキルとかあるわけ?」
「召喚者には固有スキルが付与されます。意識すれば、見えるはずです」
言われて視界に意識を向けると、半透明のウィンドウが浮かんだ。
固有スキル:『百円技能』
説明:100円ショップの商品の使用時、その品に応じた魔法的効果が発動する。
「…………は?」
しばらく固まる俺。
「す、すごいじゃないですか! きっと伝説級に違いありません!」
「違うよ絶対。適当に言ってるよね?」
少女は目をそらし、口笛を吹く。
やっぱりな。
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三 スキルの“実験”
とりあえず棚から手近なものを取った。
瞬間接着剤。
キャップを開けた瞬間――視界が光り、ウィンドウが変化する。
アイテム効果発動:
『瞬間固着魔法』
触れた対象の動きを数秒間停止させる。
「……魔法になった……!」
ローブの魔術師たちがざわめく。
「接着剤が攻撃魔法に……!?」 「いや、拘束魔法か……!? 新しい……!」
すげぇのかすげぇのかよくわからん。
続いてアルミホイルを取り出して軽く広げる。
『反射結界』
低級魔法・熱・光の一部を反射する結界膜を生成。
「強いな!?」
たった100円でここまでやるとは。
異世界の物価感覚が狂いそうだ。
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四 王都に響く咆哮
突如、城の外で空気を震わせる轟音が響く。
天井のステンドガラスが揺れ、砂埃が舞い上がった。
外の空が――赤い。
「し、しまった……! ドラゴンが王都に!」
「こんな日にまで来なくても……っ」
少女が震える。
外では巨大な影が城壁を越えて迫り、赤い炎が尾を引いている。
俺は棚を見た。
100円ショップの並ぶ日用品たち――しかし今は、“武器”だ。
この世界を守れるなら、100円の力でも十分だ。
「……行くしかないな」
俺はカゴを掴み、次々と商品を詰め込んでいく。
うちわ
ラップ
割り箸
万能ロープ
小型扇風機
園芸スコップ
キッチンタイマー
紙コップ50個入り
「行こう。100円の底力、見せてやる」
少女は目を見開き、震えながらうなずいた。
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五 炎竜との激突
城門をくぐった瞬間、夜空を焼くほどの炎が降りそそいだ。
地面が赤く染まり、空気が焦げる匂いが鼻を突く。
「くっ……!」
俺はラップを広げる。
『簡易遮熱膜』
薄膜が俺たちを包み、炎が壁に跳ね返って弾ける。
熱風が巻き起こり、少女の髪が揺れた。
「ま、守られた……!」
「100円だぞこれ!? 大丈夫かこの世界!」
次に、うちわを構える。
柄の部分が淡く光り始めた。
『風魔法:弱風』
たしかに弱い。
でも、炎竜の巨大な翼に直撃すると、飛行が大きくブレた。
「効いてる……!」
地面に降りてきた炎竜が咆哮を上げ、巨大な顎が俺を噛み砕こうと迫る。
割り箸を構えて叫ぶ。
『魔槍化』
割り箸が眩い光を放ち、金色の細槍に変わる。
重さはほぼゼロ。だが、手に吸い付くような重量感がある――“武器としての説得力”。
タイマーが鳴る。
耳元で甲高く。
『集中強化:一定時間、身体能力上昇』
筋力が爆発したような感覚。視界が研ぎ澄まされる。
そして――紙コップを一度に大量に投げつける。
『無数拘束』
白い魔力の奔流が竜の四肢に絡みつき、巨体が地面へと押し倒される。
「今だッッ!!」
俺は地面を蹴り、強化された脚力で跳躍。
竜の額へ槍を突き立てた瞬間、眩い閃光が走る。
衝撃が腕を伝い、空気が震え、
――炎竜は地響きを立てて崩れ落ちた。
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六 “店長”という新しい役目
「勇者よ! いや……店の者よ!」
王が俺の肩を叩く。
周囲の兵士たちは戦場に散らばった紙コップを拾いながら、俺を見て尊敬の眼差し。
「その“魔具店”、ぜひ王都に残してくれぬか!」
「魔具店って言うほどの商品じゃないけど……」
しかし、気づけば騎士や魔術師たちが店に列を作り始めていた。
「店長殿! この“園芸スコップ”は土魔法に使えるのか?」
「こちらの“ロープ”、強化は可能ですか!?」
「新商品はいつ入りますかね?」
異世界でも客は強い。
だが、少女は静かに笑って言った。
「あなたが来てくれて……本当に良かった」
「いや、勝手に棚ごと召喚されたんだけど」
「それでも、あなたがいなければ王都は滅んでいました。
――ありがとう、店長さん」
夕日が差し込み、棚の商品が金色に輝く。
ここからまた、100円と魔法の奇妙な共存の日々が始まる。
AIのあとがき
最初から最後まで一本の流れで繋がるよう、
場面転換・戦闘描写・情景・会話量を大幅に増やして仕上げました。




