唐揚げ大戦争外伝 ~浮気疑惑と未来の真~
唐揚げ戦争の直後に主人公に浮気疑惑でハチャメチャに作ってと言ったらこうなりました。
ヘルヴェルトの並行世界とします。
夕暮れのマンション。
夕飯の片付けを終えた皆川真は、ソファに投げ出された夫、佐波峻のスマートフォンに目をやった。
画面には、見慣れぬメッセージが表示されていた。
『今夜、楽しみにしてます!』
「……え?」
胸の奥で冷たい音が響く。普段はおっとりしている真だが、その瞬間ばかりは呼吸が止まるほどの衝撃を受けていた。
(これは……浮気!?)
震える手でスマホを元に戻し、深呼吸。すぐに峻に問いただすことはせず、ひとりで捜査に乗り出す決意を固めた。
「スミスちゃん! 聞いてよ!」
真はスミスを呼び出した。
「しゅーが……浮気してるかもしれないの!」
「なにぃ!? 佐波のやつ~~! ただじゃおかねぇ!」
スミスは拳を鳴らし、怒りを露わにした。
そこへ双子のエティオとネリスが駆け寄ってきた。
「おにいたん、裏切り者なの?」
「おねえたんを泣かせるなんて許せない!」
「ちょ、ちょっと待って!」
真は慌てて制止しようとするが、もう遅い。
こうして「峻浮気疑惑調査隊」が即席で結成されてしまった。
スミスは探偵帽をかぶり、真はサングラスで変装。双子は望遠鏡や双眼鏡をぶら下げ、やる気満々だった。
そして、当然のようにそこに座っていた人物がいた。
「おやおや、これはまた楽しげなことを」
ソファに腰掛け、紅茶を優雅に傾けるルベスである。
「私もお手伝いしましょうか?
浮気調査など、なかなか愉快な遊戯ですね!」
「ろくなことにならないから帰って!」
真が即ツッコミを入れるが、ルベスは涼
しい笑顔で一歩も引かない。
その日の夜。峻は「残業がある」と言って出かけて行った。
真たち調査隊は静かに尾行を開始する。
「……あそこ、カフェだな」
スミスが低い声で呟く。
ガラス越しに見えるのは、女性と談笑する峻の姿。笑顔はいつもと同じ優しい笑
顔。だが今は、真の胸を鋭く突き刺した。
「浮気確定……」
真の手から冷たい汗が落ちる。
「佐波のやろう……!」
スミスが怒りに震える。
「おにいたん最低……」
エティオの声が小さく響く。
「ネリス、泣いちゃうよ……」
ネリスの目には涙が浮かんでいた。
ついに真は耐えられず、カフェの扉を乱暴に開け放った。
「しゅーっ!! やっぱり浮気してたんだね!!」
峻が驚き、コーヒーを盛大に噴き出す。
「まこちゃん!? う、浮気? 違うって!」
対面の女性は落ち着いた仕草で立ち上がり、真に向き直った。
「……わ、私?」
真は言葉を失った。そこに立っていたのは、未来から来た自分自身――少し年を
重ねた皆川真だった。
「初めまして。いえ、未来から来た“皆川真”と申します」
未来の真は優しく微笑む。
「あなたたち夫婦が喧嘩するたびに、世界が救われている。その真実を伝えるために、未来から来ました」
カフェの空気が凍りつく。
スミスは口をパクパクさせ、双子はぽかんと口を開け、現在の真は崩れ落ちそう
になっていた。
未来の真は続ける。
「唐揚げ一個で停戦したあの日から、人類の歴史は変わりました。あなたたちの痴話喧嘩こそ、宇宙規模の平和をもたらす力なのです」
スミスが頭を抱えた。
「つまり……佐波は浮気じゃなくて……人類を救ってる!?」
双子が声を揃えて叫んだ。
「おにいたんヒーロー!?」
「おねえたんも救世主!?」
現在の真は地面に崩れ落ち、涙目で叫ぶ。
「私、全力で勘違いしてた……!」
峻は苦笑して彼女を抱き寄せる。
「だから言っただろ。浮気なんかしてねぇって」
沈黙を破ったのは、紅茶を手にしたルベスだった。
「いやはや、これは実に面白い結末でした。未来の真まで巻き込むとは……私の期待以上です」
「やっぱりお前が仕組んでたのか!!」
峻が叫ぶ。
「未来まで操作するなんて反則だよ!!」
真も突っ込む。
ルベスは口元を押さえ、そして――
「にゃはははは! 唐揚げに続き、浮気疑惑までもが世界を救うとは!
人類とは愚かしく、そして愛おしい存在ですね!」
こうして「主人公浮気疑惑事件」は、とんでもない未来オチで幕を閉じた。
――唐揚げ戦争の物語は、まだまだ続くのであった。
唐揚げの取り合いで未来まで救っていた。
ハチャメチャですね、本当に。
また黒幕ルベスかよ! というか紅茶すきだな!
と言うか続編作りたそうにするな!
続くかは分かりません。




