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ヒーローショーと文化祭

別の話を書かせている時に出来たものです。

多分この回の二人は付き合ってないですね。


並行世界の話。


 土曜日、商店街イベント広場。

 ステージの上では、派手なBGMとスモークが鳴り響いていた。


> 『さぁ! 正義のヒーロー・ブレイヴレッド登場だぁーーっ!!』




 観客席には子どもたちの歓声。

 その裏で――


「……どうして俺がこんな格好してるんだ……」


 赤いマントにヘルメット姿の佐波峻は、肩を落とした。


「決まってるじゃない、“ボランティアのくじ引き”で当てたからよ」


 青いスーツの皆川真が腕を組み、得意げに言う。

 腰にはおもちゃの剣、そしてアンダーリム眼鏡はしっかり装着。


「ていうかまこちゃん、ブルーのスーツ似合いすぎじゃない?」


「ふふん、正義の青は冷静と知性の色。つまり私にぴったり」


「自分で言うなぁ……」


 だが、その直後――スタッフがバタバタと駆け寄ってくる。


「ヤバい! 悪役役の人、来てない!!」


「えっ」 


「代役お願い! そこの赤い人!」


「俺ぇぇ!?」



---



 即席悪役、開幕


峻(悪役):黒いマントを羽織り、棒読みで登場。


ヒーロー:青いスーツで颯爽と対峙。


真:「出たわね、悪の組織・タマゴ帝国!」


峻:「……わ、わははは! 世界は我々のものだ!」


(子どもたち:「がんばれブルー!」)


 真は見栄を切って構える。


「行くわよっ!」


峻:「こ、こい!」


 だが本番中に真がヒールを滑らせた――


 ドンッ!!


 ステージ中央で、真が峻に突っ込み、見事に倒れる。

 マントとスーツが絡まり、ポーズは――まるで抱き合うように。


「……」


「……」


観客席:「きゃーーーーー!! カップルヒーローだーーー!!」


「ち、違うんですこれ!!」


 峻が慌てて立ち上がるが、マントが絡まってまた倒れる。

 真が上に、峻が下。

 マスク越しに顔が近い。


「ま、まこちゃん……ち、近い……」


「う、うるさい……! 観客の前で変なこと言わないで!」


「いやこの体勢がもう変なことなんだよ!!!」



---


 バックステージの攻防


 

 控室に戻った二人。

 峻はマントを脱ぎながら、深いため息。


「……もう誤解どころじゃないな。SNSで“熱愛ヒーロー”とか言われてるぞ」


「う……!」


 真のスマホにも通知が止まらない。

 “#抱き合うヒーロー #赤と青の禁断コンビ”

 “#目線が恋人すぎる”


「だ、誰が恋人よ! あんなの事故だよ事故!」

 

 峻が笑い転げる中、真は頬を真っ赤にしてマスクを投げつけた。

 だが、その瞳の奥――ちょっとだけ、笑っていた。



---


 イベント終了後。

 子どもたちが二人のところに駆け寄ってくる。


「レッドとブルー、かっこよかった!」


「また二人で助けてね!」


 真は一瞬びっくりして、それから小さく笑った。


「……そうね。また“二人で”ね」


 峻も照れくさそうに頷く。


「もう誤解もトラブルもいらないな」


「ふふ、それは無理でしょ。私たちだもの」


 笑い声が重なる。

 夕焼けのステージの上、二人の影が寄り添って長く伸びていった。



---


 次回予告


> 「次は文化祭! クラス劇で“恋人役”を演じることになった二人。

本物以上にぎこちない恋の演技が、再び誤解を呼ぶ!?

『舞台裏のキスシーン大騒動!』――coming soon!」




---




 秋の文化祭。

 教室を改造した簡易ステージには、手作りの背景と照明。

 そして今日の主演――

 佐波峻と皆川真。


 演目はクラス劇「星に誓う恋人たち」。


 ロミジュリ風の恋愛劇で、まさかの恋人役を演じる二人だ。


「なぁまこちゃん……なんで俺らが恋人役なんだ?」


「人気投票で決まったんだよ。……貴方が一位、私が二位」


「え、人気投票ってそんなシステムあった!?」


 真は台本をぱらぱらめくりながら、眉をひそめる。


「……最終幕、“キスを交わして幕を閉じる”」


「なっ!? 聞いてないぞ!?」


「私だって聞いてない!!!」


 教室の外では、クラスメイトたちが「絶対盛り上がるって!」とニヤニヤ。

 地獄の幕が、ゆっくりと上がる。



---


第一幕 誤解、再び


 舞台の上。

 真(姫役)は涙ながらに峻(騎士役)を見上げる。


「あなたと過ごした日々は、まるで夢のようでした……」


「俺も……君を守るために剣を取ったんだ」


セリフを言いながらも、峻の心臓はバクバクだ。


(近い近い近い! 距離が恋人仕様だ!!)


 一方の真も、平静を装いつつ内心大混乱。

 

(な、なんでこんなに見つめられると動揺するの……!?)


 観客のクラスメイトたちはざわざわ。


「おおー! 本物みたい!」


「いやもう本物だろあれ!」


真:「……さよなら、愛しい人」


峻:「さよなら、まこ……じゃなくて、マリア……!」


(セリフ混ざってるぅぅぅ!!)


 教室が笑いの渦に包まれる。

 峻は慌てて軌道修正しようとするが、真の方は逆に照れ隠しで怒鳴った。


「この浮気者っ!!!」

(そんなセリフ台本にないぃぃぃ!!)


 完全に即興劇。

 だが、拍手と笑いは止まらなかった。



---


第二幕 “そのキス”


 笑いも収まり、最後の場面。

 照明が落ち、二人だけにスポットライト。

 観客が静まり返る。


峻の台詞:「君を守れて、よかった……」


真の台詞:「なら、せめて最後に――キスをして」


 その一文で、二人の心臓が同時に跳ねた。


(本当にやるのか……?)


(まさか本当に……?)


 一瞬の沈黙。

 空気が止まり、教室全体が息を呑む。


 真が、震える声で言った。


「……誤解されても、もういいわ」


 そして、彼女は――

 峻の頬に、ほんの一瞬だけ触れるようにキスをした。


 驚きで動けない峻。

 会場、爆発。


「きゃああああああああ!!!」


「本番でやったああああ!!!」


「ガチだ!! ガチだこれ!!!」


 幕が閉じても、拍手と悲鳴が鳴り止まなかった。



---


エピローグ


 夕方、片付け後の教室。

 窓から差し込むオレンジ色の光。

 峻と真だけが残っている。


「……まこちゃん」


「なに?」


「その、あれ……演技、だったんだよな?」


 真は少し考えてから、いつものようににっこりと笑った。


「そうね。――“演技”よ」


「そ、そうか……」


「でも、誤解されてもいいって言ったでしょ?」


 彼女は赤いアンダーリム眼鏡をくいっと上げる。

 頬が少し赤い。


「……たまには、誤解のままでもいいかもね」


 峻は苦笑しながらうなずいた。


「誤解のままでも……悪くないか」


 窓の外では、風が秋の落ち葉を舞わせている。

 笑い合う二人の影が重なり、

 まるで舞台のラストシーンのように、ゆっくりと夜に溶けていった。




【END】



AIは文化祭が大好き。

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