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バカップルの誕生秘話

ヒロインが怒ると怖いと言う設定を使って書かせるととんでもない方向になっていったので、その内容がバカップル誕生日みたいになりました。


並行世界の話。


 放課後・裏路地



 峻と真が歩いていると、数人の不良が小学生を囲んでいた。


「いいから金置いてけや!」


「ほらビビってんじゃねーぞ!」


 峻が止めに入ろうとした瞬間――


「しゅー、ここは任せて」


 真が一歩前に出た。


「……あなたたち、恥ずかしくないんですか?」


 にこりともせず、真は静かに言う。

 その声は低く落ち着いているが、不思議な圧があった。


「弱い子をいじめて、“強いフリ”をして、何が楽しいんですか?」


「お、おい、なんだコイツ……」


「た、ただの女だろ……」


 しかし真は一歩近づき、眼鏡を押し上げる。


「もし、あなたの弟や妹が同じ目に遭っていたら――それでも笑っていられますか?」


 空気が凍りつく

 沈黙。

 不良たちは思わず視線を逸らす。


「い、いや……そ、それは……」


「ち、ちげぇし……」


 真はさらに畳みかける。


「人を傷つけて手に入れた“強さごっこ”なんて、ただの弱さの証明です。本当に強い人は、人を守るんです」


 その言葉に、不良たちの顔から血の気が引いた。


 ガタガタ震え出す不良たち

 リーダー格がごくりと唾を飲む。


「……す、すんません……」


 他の不良もガタガタ震えながら頭を下げた。


「もう二度とやりません……! 姉御ぉぉ……!」


「よろしい」


 真はにっこり笑顔に戻った。



 その後

 数日後、廊下で。

 例の不良グループは真を見かけるたびに直立不動で挨拶するようになった。


「おはようございます皆川さん!!」


「遅刻しないで学校来ました!!」


「掃除も自主的にやりました!!」


 峻は呆れ笑い。


「……暴力ゼロでここまで支配するの、逆に怖ぇな」


リリリがこくこく頷いた。


「皆川の説教は、魂まで震えるですよう……」




 休日・街中


 

 峻と真が並んで歩いていると、数人の不良がにやつきながら近づいてきた。


「おいねーちゃん、かわいいじゃん。ちょっと遊んでこうぜ?」


「彼氏連れかよ〜? こりゃいい見世物だな!」


 峻が真をかばおうとした瞬間――


「……やめなさい」


 真は静かに睨みつける。


「ひっ……!」


 不良たちが一瞬たじろぐ。だが、すぐに虚勢を張った。


「な、なんだよテメェ! 俺らに逆らうと痛い目み――」


「お、おい待てぇぇぇ!!!」


 ドスの効いた声とともに現れたのは――街一番の番長・鬼塚。


 全員が「うわ、鬼塚だ……!」と青ざめる。

 しかし鬼塚は真を見るなり、即座に直立不動。


「お、お疲れ様です姐御ッ!!!」


「……あら、鬼塚さん。こんにちは」


 真は穏やかに微笑む。


「こんにちはじゃねぇっす! その節は本当にありがとうございましたッ!!」


 鬼塚は涙目で九十度の土下座。


 不良たちのパニック


「えっ……? 番長が……土下座……?」


「姐御……!? この子が……!?」


 ガタガタ震える不良たちに、鬼塚は怒鳴った。

「この方は皆川姐御だぞ!! テメェら、道の真ん中で何やってやがる!!!」


「ひぃぃぃ!!」


 その場の不良たちは即座に地面に額をこすりつけ、真に謝罪した。


 その後

 街を歩くと、どこからともなく不良たちが現れては――


「姐御お疲れさまです!」


「通ります、道開けろ!!」


「ゴミ拾っておきました!!」


 峻は完全に置いてけぼり状態。


「……まこちゃん、なんか俺より街で顔利いてない?」


「え? そんなことないよ?」


 真はにこにこしているが、周囲の空気は完全に“姐御一強”だった。




 学校帰り・街中



 真と峻が商店街を歩いていると、いつものように不良たちが道の端に整列していた。


「お疲れ様です姐御ッ!」


「荷物お持ちします!」


「今日は天気がいいですね!!」


 峻は苦笑しながら耳打ちする。


「……まこちゃん、完全に街の女帝だな」


「え? そうかな? ただちょっと注意しただけなのに……」


 真は首をかしげて本気で不思議そう。


 ファミレスで一息

 注文を待つ間も、窓の外には不良たちが敬礼ポーズで見張りについていた。


「……なぁ、まこちゃん」


「なに?」


「なんであいつらがあんなに慕ってるか、わかってないの?」


「んー……“勉強教えてくれる優しい先輩”って思われてるとか?」


「いや絶対ちがう!!」


 峻は頭を抱えた。




 別の日・駅前


 ルベスが現れ、にやにやしながら解説を始める。


「皆川様、ご自覚がないのが逆に恐ろしいのです。説教だけで人を震え上がらせ、番長まで平伏させる……その姿こそ“真の支配者”!」


「えぇ!? 私そんなつもりないんだけど!?」

真は両手をぶんぶん振って否定する。


 だが、その直後も別の不良グループが駆け寄ってきた。


「姐御! この前の宿題のプリント写させてもらってありがとうございましたァ!」


「それ感謝の仕方ちがうよ!!」


 真は半泣きで突っ込む。


 峻がぽつりと呟く。


「……まこちゃんが天然だから、余計にカリスマ性が増してんだよな」


 リリリが横でメモを取りながら。


「“天然無自覚カリスマ”……次世代の支配者像として論文が書けるですよう」


 真はますます混乱して頭を抱えるのだった。



 商店街の夕暮れ



 峻と真が並んで歩いていると――


「お疲れ様です、皆川様!」


「先日はゴミ拾い手伝っていただきありがとうございました!」


「おかげでウチの子、不良やめて受験勉強始めたんです!」


 と、商店街のおばちゃんや店員まで頭を下げてくる。


 真はおろおろしながら笑顔を返す。


「い、いえ……そんな大したことしてないんですけど……」


八百屋の店主:

「姐御のおかげでウチの売上も上がったんだ! “姐御に顔向けできる街にしよう運動”が広がってよ!」


喫茶店のマスター:

「コーヒー一杯タダでどうぞ。守護聖女様のおかげで街が平和なんでね」


 峻は思った。


(もう“姐御”から“聖女”にランクアップしてんじゃねーか……)



 後日、公園に行ってみると――

 ドンッとそびえ立つ石像。

 眼鏡をかけ、腕を広げて慈愛の笑みを浮かべる“皆川真像”。


「な……なにこれぇぇぇ!!?」


 真は真っ青。


 通りすがりの市民が感涙しながら手を合わせる。


「ありがたや……守護聖女様……」


「今日も悪を打ち砕いてくださり……」


「打ち砕いてないです!! 説教しただけですぅぅ!!!」


 真は両手をぶんぶん振って否定するが、誰も耳を貸さない。


 その日の夜、峻が苦笑しながら言った。


「……まこちゃん、気づいてないかもしれないけど、もう街全体が“皆川真教”に入信してるよ」


「な、なんでぇぇ!? 私そんなこと望んでないのにぃぃ!!」


 真は涙目で抗議するが、翌朝の新聞には――


【“守護聖女”皆川真、街の希望!】


 とでかでかと一面に載っていた。



 学園祭準備中・教室



 街での“守護聖女”伝説はついに学校にも伝わり、真は注目の的。


「皆川さんってさ、優しいし頼りになるし、なんかカッコいいよな」


「マジで憧れるわ」



男子たちがひそひそ話しているうちに――


「皆川さん、今度一緒に映画行かない?」


「おれ、悩み相談してほしいんだ!」


「お弁当作ってくれませんか!」


 次々と声をかけられる真。

 その様子を後ろから見ていた峻は、机をバンッと叩いた。


「……なんであんなに群がってんだよ!」


スミスがにやにや。


「おいおい佐波、嫉妬かぁ?」


「うるせぇ!」


 真は困り顔で峻のところへ戻ってくる。


「しゅー、なんか……最近、声かけられること多くて……」


「“多くて”じゃねーよ! 嫌じゃねーのか!?」 


「え? ただのお友達って思ってるけど……」


「いや絶対向こうはそう思ってねーから!!!」

  




 校舎裏・事件



 さらに翌日、真に告白しようと男子が花束を持って現れる。


「皆川さん! 俺と付き合って――」


「無理です」


 真は即答。


 男子が崩れ落ちる横で、峻はほっとした……が、同時にモヤモヤが残る。


「……なんかムカつく」


 ロマンチックなフォロー

 帰り道。

 峻は歩きながら不機嫌そうにつぶやいた。


「……なんで俺の彼女が他の男からチヤホヤされなきゃなんねーんだよ」


 真は立ち止まって、峻の手をぎゅっと握る。


「私はずっと“しゅーの彼女”だよ。だから大丈夫」


 その一言で、峻の頬は一気に真っ赤。


「……ば、バカ。そんなこと言うなよ……」


 リリリが物陰でメモを取る。


「嫉妬からのイチャイチャ……尊いですよう……」




 皆川争奪戦・開幕



 学校の昼休み。


「皆川さんに告白するのは俺だ!」


「いや俺だ! 昨日一緒に掃除したんだからチャンスは俺にある!」


「皆川先輩は優しいから後輩の俺を選んでくれるに違いない!」


 校庭の一角で男子が言い争いを始める。いつのまにか「皆川真ファンクラブ」ができており、メンバーは50人を突破。掲示板に「皆川さんの良いところランキング」とか書き出して盛り上がる始末。


 廊下でその様子を見ていた峻は、両手をブルブル震わせる。


「お、俺の彼女を……お前ら何勝手にオークションみたいに扱ってんだ……!」


 横でスミスがポテチを食べながらひとこと。


「佐波、人気者の彼女を持つ男の宿命だな。ガンバレ!」


「うるせーよ!!!」


 真の無自覚ぶり

 一方その頃の真。


「……みんな急に挨拶してくれるし、廊下通ると拍手されるし……なんでだろ?」


 リリリが真顔で答える。


「それは皆川が女神扱いされているからですよう」


「えっ!? 私そんな大したことしてないよ!?」



 放課後、ついに「皆川争奪戦・公開告白大会」が体育館で開かれる。

 出場者は男子20名。司会はなぜかスミス。


「第一回! 皆川に一番似合う彼氏は誰だ!? トーナメントを開始!」


男子A「俺は優しく支える!」


男子B「俺は家事スキル完璧だ!」


男子C「俺は筋肉で守る!」


 どいつもこいつも熱弁をふるうが、真はただポカン。


 ついに我慢できなくなった峻が乱入。


「ふざけんなァァァァァ!!!」


 体育館がどよめく。


 峻は真の腕を引っ張り、全員に向かって怒鳴った。


「真は俺の彼女だ! 誰にも渡さねぇ!」


 体育館はシーン……


 そして次の瞬間、観客の女子たちが歓声をあげる。


「キャーッ! バカップル爆誕!」


「尊い!」


「やっぱり皆川さんには佐波くんだよねー!」



 その後

 


 帰り道。


「……なんか余計注目された気がする」


「うん……でも私、ちょっと嬉しかった」


「へ?」


「しゅーが、ちゃんと“私の彼氏だ”って言ってくれたから」


 峻は耳まで真っ赤。


「~~~~っ!!」


 それを遠くから見ていたリリリはつぶやいた。


「尊死するカップル、ここに誕生ですよう」


 こうして二人は――誰の目にもわかる、堂々たる「学園一のバカップル」となったのである。



まさか宗教化していくとは思わなかったな。

というか登場人物が突然いたりするのは無料版って感じなのだろうか。

と言うかリリリ、ストーカーみたいになってるぞ?


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