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水天宇宙を映す

作者: Rリアリィ

湖畔という物は人物を惹いてくれる言葉だと思っている。自分はそんな言葉に惹かれて小さな湖のすぐそばに家を建てた。湖には歩いて5分もかからない所に建てた家は森の真ん中なので周りは木しかない。そんな森を抜けて見える湖が好きだった。

夏場、夜が更けてきて涼しくなると、湖まで行き、湖畔にある桟橋で湖を眺めた。水面を見てみれば、綺麗な夜空を映す大きなスクリーンが出来上がっていた。そのスクリーンを、水黽が滑り込んで来て揺らして去っていく。そんな自然と戯れる時間が幸せだった。

冬になれば、周り一面銀世界となり、木から振ってくる雪に潰される新雪が見れる世界になった。湖は不思議と凍らず、冬の夜空を相変わらず映していた。月明かりに反射する雪のガラス、桟橋に積もってゆくそのガラス達はそのうち綺麗な新雪と化した。冬のスクリーンには振ってくる雪が消えてゆきながら美しい夜空を映して、波打っていた。

春になると、ざらめとなった雪は溶け、土筆の新芽や蕗の薹などが顔を出していた。春のスクリーンは周りに若干の茶色を残した緑で彩られ、また美しい夜空を映している。その空はいずれ宇宙と呼ぶようになっていった。

夏が過ぎて秋。秋になれば、紅葉が美しい音色の様に赤褐色に彩られていた。当然、スクリーンの周りも、赤、黄、茶等の彩で飾り付けられていた。映る宇宙を見れば、いつも通り綺麗な星を光らせており、落ちてくる枯れ葉がスクリーンを揺らして浮かび上がっていた。

またいつもの様に桟橋に座って夜空を眺めていた時、なにやら流れる光を発見した。思わず宇宙を仰げばそれはそれは綺麗な流星の山。一つ、二つと流れて行く星の数々、それは、まるで花火の様に美しく、儚く、水面に映し出された。動物達も目を光らせて同じく宇宙を仰ぎ、一緒に流れる様にそよ風が身体に当たって去り、湖は波打っていた。まるで夢の様な時間はあっという間に過ぎ、最後の星が流れると光はいつもの定位置で光っている。湖に目を落とせば、上弦の三日月が映っている。あの宇宙の景色を想い出しながら桟橋を去って家へ帰った。

宇宙は、人々が想いを寄せているが、湖は、その想いを体現してくれる者であり、湖畔はその観賞席であることを改めて、実感させられた。

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