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五話 依頼完了 与太話


 朝、鐘の音で目が覚める。疲れはとれたようだ。朝食を食べに行くか。


 朝食を食べてから冒険者ギルドへ向かう。中に入り受付に向かう。昨日と同じ女性がいる受付には少し列ができていたので並ぶ。順番が来たので声をかける。


「依頼完了の報告に来ました」


「もう達成されたんですね。おめでとうございます。感触はどうでしたか?」


「基本的には魔法で一撃当てれば倒せるので楽だったんですが、油断して危ないところでした」


「少し詳しく聞かせていたいただいてもよろしいですか?」


 門を出て湿地帯に向かい、帰ってくるまでの話をした。


「昨日、ご説明したかと思いますが、基本的には餌の多い場所から弾き出された弱い個体が集中している湿地帯の南側に回り込んで討伐するのがセオリーとなります。南側はそれほど足場も悪くないですし。また、朝はまだ動きが鈍いため、その時間を狙うのもセオリーです。午後に西からでは危険です」


「そ、そういえば聞いたような」


「あくまでセオリーなので強制ではないですが。今後気をつけてくださいね。強い個体は餌場である湿地帯を離れる事はあまりないかと思いますが、数が減ったほうが近辺の安全性が高まるのでありがたくはあります」


「はい、気をつけます」


「では素材関連窓口へ行って、素材を提出し、明細を貰ってきてください。今後は先にそちらで明細を受け取ってからこちらに来た方がスムーズとなります」


「わかりました」


 素材関連窓口へ行く。隣の建物らしい。行ってみると素材を搬入できるようにか、入り口が開放的な作りの建物があった。中に入り、ギルド証を渡し、素材を提出しにきた旨を伝える。案内された場所で収納から素材を取り出し置いていく。


「リザードマン五体の依頼だったな。確認した。これを受付に持っていけば依頼完了となる。素材の買取金は査定が終わったら口座に振り込まれるから後で確認してくれ。あ、素材は全部売っちまっていいのか?」


「大丈夫です」


 明細を受け取って受付に行く。依頼完了の手続きを終える。依頼の報酬はすぐ受け取るか、口座への振り込み、どちらにするか聞かれたので口座振込でお願いしておいた。


 ふと気になったので聞いてみる。


「キマイラってどんな魔物なんですか?」

 

「ゴールドランクの魔物で、火炎のブレス、頭突き、毒が厄介な事、単純な身体能力とサイズが大きい事、それと死角が少ないという点で手強い相手です。ゴールドが五人程度で対処します。もしかして西に出たという話から?」


「はい、それもあるのですが、少し西から一緒に旅をした方が目の前でキマイラを瞬殺しまして。その時一応お前にも倒せるだろうとは言われましたので気になりました」


「キマイラを瞬殺ですか。お名前は何というんです?」

 

「それが名乗られなかったのです。赤い髪の若い男性です。後は剣と魔法を使っていたことが特長ですかね。できればまた会ってお礼を言いたいのですが」


「おそらくはプラチナ以上、いやミスリル以上の方かもしれませんね。パッと思いつく限りでは心当たりはないのですが」


「そうですか」


「ユウト様の場合であれば、ブレスは魔法で防ぐか転移で避ける。近づかれたら転移で距離をとる。後は逃げられるだけの魔力を残しながら遠隔で攻撃を続ければ勝てそうではありますね。簡易的な鑑定で見た限りでは能力としてはミスリル以上もありえましたし」


「そうなんですね」


「焦らず戦闘経験を積まれていけば、次第に潜在能力にランクが追いついて来るかと思います。キマイラは正式な依頼としてはまだ受けられませんが、討伐されるのですか?」


「気が向いたらと考えています」


「お止めする事はできませんが、その時はいつでも逃げられるように気をつけてくださいね」


 礼を言って受付を離れる。別の依頼を見繕うか聞かれたが、一旦やめておいた。


 せっかくなので酒場ブースらしきところに向かう。噂話でも聞いて見識を深めようかと思った。単純にミード以外のお酒が飲みたくなった訳ではない。…宿にはミードしかないんだよな。

 

 カウンターに座ってどんなものがあるか聞いてみる。エールやワイン、蒸留酒などがあるそうだ。いくつかある蒸留酒の中で安いやつを注文すると、グラスに注がれて出される。魔法で氷を作れるか試してみる。できた。グラスに氷を入れて、少しおいてから口に含む。そこそこだな。


 噂話を聞いてると、やはり西の警戒度が少し上がっているようだ。商人が護衛にかける金も増すからかき入れ時らしい。


「おう、兄ちゃん。俺にもそれくれや」


 ちびちび酒を舐めていると、ぬっとグラスを握った手が突き出てきた。一瞬意味がわからなかったが、少し考えて氷を入れてみる。


「ありがとよ」


 顔を上げると、いかにも腕の立つ冒険者、という感じのおじさんが酒を飲んでいた。頭には獣耳が生えている。腰からは猫のような尻尾も生えていた。


「おお、やっぱ冷やした方がうめぇな。兄ちゃん、ランクは?」


「シルバーです。一昨日冒険者になったばかりなので経験は浅いですが」


「これから経験を積めばいい。最初からシルバーなら力はあるんだろうしな。ソロか?」


「一人ですね」


「そうか、パーティは組まないのか?」


「社畜時代、いや冒険者になる前は上の人間に顎で使われながら集団行動をしていたので、反動でしばらくはのんびりしたいんですよね」


「わかるぜ。まあ護衛なんかしてると多少雇い主にあれこれ言われるがな。商会なんかで働くのよりはマシだろうな」


「後、もしパーティを組むなら、可愛い女の子がいいです」


「いないことはないが、確かにそれだとハードルはたけぇな。美形なら危険がある冒険者より、それなりの収入のある男の嫁にでもなって街で暮らした方がいい。まあ美形の女が冒険者やるメリットもなくはないがなぁ」


「メリット?」


「単純だ。魔物を倒していくと寿命が伸びやすいんだよ。少し全盛期に若返りもする。身体能力や魔力も上がるな。よく言われるレベルが上がる、ってやつだ。だから若い時間が長くなる。一応生まれながらにしてレベルが高いやつもいるし、武術を極めたり、魔術を極めたりと、何かを極めようとしても上がる。生産職でもな。どっかで聞いた伝説級の女冒険者なんて、長命種族でもないただのヒューマンなのに一世紀以上生きてるくせして若々しいまんまだったってよ」


「アンチエイジングですか。そりゃ女性にはたまらないですね。いや女性以外もか」


「ちなみにどっかの国の王がつけてる迷宮産の指輪なんて、不老の効果がついてるらしいな。その指輪を迷宮で見つけて献上した冒険者は高位貴族になったらしいぜ。聞いた話だと迷宮の素材から作られる若返りのポーションなんてのもあるらしい」


「へぇ、夢がありますね」


「だな。まあ夢がある分危険があって、よく死ぬのが冒険者なわけだが」


「そうなんですか」


「話を戻すと、パーティを組むなら可愛い女とイチャコラやっていきたいんだよな?」


「はい」


「じゃあ奴隷を買えば良いんじゃないか?」


「奴隷ですか?」


「ああ、見た目が良くて戦力になるのはかなり高いだろうが、見た目だけの奴隷なら手の届かない範囲じゃない。連れ回しながら魔物を倒してればそれなりに強くなるだろうしな。レベルが上がるのは魔物を仕留めたやつだけじゃない。近くにいたものも上がる。程度に差はあるようだがな。貴族なんかには定期的に騎士団連れてパワーレベリングしてる奴もいるって話だ」


「へぇ、それならなんとかなりそうですね」


「まあ普通の冒険者が似たような事やろうとしたら、娼婦でも相手にして頭を冷やせボンクラと言うところだがな。登録ん時からシルバーの魔術師なら運が良ければなんとかなるんじゃないか?当然悪けりゃ奴隷も本人も死ぬが」


 奴隷、奴隷かぁ。そういうのもあるのか。奴隷というワードを頭の中で反芻していたら酔いが回ってきたような感じがする。


 ちょっと考えてみるか。

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