1話 依頼
どうもお茶チャです。
基本読む専ですが、この機に投稿しようと思い。始めました。
駄文、急展開があると思いますが、ご了承下さい。
依頼
重苦しい空が頭上を覆っている。一隙間も無く鉛の雲が、今が朝か夜かを悟らせない。
時折降る雨はドロっとした、心地の悪いものだが、それが当たり前。そうなって何百年が経っただろう。
「コーヒーってのは平等さの塊だと思う。……苦いし、でも飲む者に少なからず安らぎを与えるんだ」
コト、と目の前の男に一杯差し出す。まるでタールのように深く、どろりとした色味だが、目の前の男は待ってましたかと言わんばかりにそのコーヒーを煽った。
「……上手いな。苦い、かなり苦いが……上手い」
俺も一口飲む。瞬間、苦味が口に広がって一瞬顔を顰める。ちょいと苦味が強くて俺は苦手だ。なんでコイツは好んで飲むのか、それが分からない。でも好きになるものが俺のコーヒーにはあるのだろう。知らないけど。
「俺はキツイかな。砂糖入れなきゃ飲めねえよ。自分が入れたコーヒーだってのに」
「確かに苦味が強い……が、苦いからってそれがコーヒーの良し悪しを決めるわけじゃあ無い。要は熱だ、それに掛ける熱で美味さを決める。お前のコーヒーはとても美味い訳じゃあない。だが上手なんだよ」
「お褒めに預かりまして光栄だ。……そうだ、最近かなり嬉しい掘り出し物があってな……旧時代の物なんだけど……」
「………おい」
「あぁ、あったあった……これ、汚染された土地でも花を咲かせられる装置。良いよね、花って。今じゃあ滅多にお目にかかれない『花』だぜ?いっそこの辺に花なんて植えちゃってさ」
「おい。俺はお前の馬鹿話を聞くためにここに来たんじゃあないんだ。依頼なんだよ、俺はそれをしに来た」
依頼。その一言で俺は他所行きから仕事用にスイッチを切り替える。
「……話を聞こうじゃあないか」
「数日前。北のコロニーの付近で謎の波形を感知した。これが先遺物だったら手に負えない。念の為って感じだが、ジャンク屋のお前に依頼したいって話だ。依頼主は北のコロニーのトップからだ。報酬金は保証するぜ」
「成る程ね……」
ジャンク屋。それは俺を指す名前。
一つ、話をしておく。この世界には旧時代と呼ばれる時代がある。今から300年前の時代なんだが、今とは違って空は青空が広がって、緑が沢山あったらしい。今の砂漠まみれ廃墟まみれな世界とはまるで違う。何やら300年前に大規模な戦争があったらしく、その弊害でこうなっちまったらしい。
そしてその戦争で使われた兵器や道具それらは先遺物と呼ばれ、各コロニーから警戒されている。
何せ扱い方も、制御方法すら不明な物だ。そんな物を好き好んで触りに行くか?俺なら行かない。
だが、コロニーと呼ばれる人類の移住区の周辺にあったとなれば、国のトップも動かざるを得ない。だが全てが不明なモノをどう処理するか。そうなった時に指名が来るのが俺ことジャンク屋だ。
企業秘密だから余り深くは喋れないが、軽く言うならば、ソレ専門の能力があるから……だろう。
「……因みに、護衛とか僚機とかそういうのはあったりするか?」
「欲しいなら付けるが?ただ費用は報酬金から差し引く事になるけど」
「マジか……はぁ、んじゃあ別に要らない。そこまで危ないものじゃあないんだろう?」
「多分な。北のコロニーの方はそこまで早急にって感じじゃあないから。大丈夫だとは思う」
「……期待しないでおく」
こう言うのは大抵なんかあるんだ。
北のコロニーは大して急いでないって話だが、仕事柄予感がする。急いでいないっていうことは、目の前の問題がそこまで危険じゃあない、大したことのない物か。それとも手の打ちようが無い、諦めている状況かの二つだ。
ただ目の前の男は自分が行くわけじゃあないから大して緊張もしていなければ、飲み終えたコーヒーを催促してくる始末だ。
「でもよぉ。お前はそんな簡単にやられる。そんな奴じゃあないだろ?」
「気軽に言いやがって……そうだな、こんな所でやられはしねぇよ………」
「んじゃあ、依頼は受けるって事で、話を付けとく。一応三日後に北のコロニーに向かってくれ。頼んだぜ、レスト」
事務所の扉を開いて去って行った男──仲介屋『ガム』を見送る。
虫の知らせっていうのか、予兆、予感っていうか、三日後の仕事は絶対面倒な事が起こる。そんな確信にも似た予感を胸に抱いて俺は来る三日後に向けて準備を始めた。
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