第二十六話 躑躅森 泰斗
【毒】
「毒」とは、生命活動に有害な影響を与える物質の総称。毒によってはすぐに反応が出るものや、数日たってから反応が見えるものもある。
自然界には様々な生物が毒を所持している。その理由は主に、攻撃と防御。毒蛇とフグを例にすると、獲物を仕留めるために毒を使うのが攻撃である毒蛇。天敵から身を守るため、あるいは攻撃され捕食されてしまった場合、後世にその生物は危険であることを知らしめるための防御であるフグ。両者同じ毒だが、使い道が全くもって違う。もちろん、効能も違う。
【躑躅森の毒】
躑躅森泰斗は、「攻撃」と「防御」両方の毒を使う。攻撃は「毒素散布」、防御は「蠱毒」という名前が付いている。
躑躅森の毒は人間にも効果がある。というより、もとはとある霊の持つ霊術であったため人間にも霊にも効く。
【付着霊】
極稀に、人間に付く霊がいる。漢字は間違っていない。「憑く」ではなく、「付く」だ。もちろん「憑く」霊もいる。しかしそれは「憑依」や「取り憑き」のように、霊と人間が完全に一体化するもの(上上のような人間)である。しかしこの「付く」では、霊と人間それぞれがほぼ個別に動く事ができる。あくまでその「霊」は人間によって操作されるため、霊側が完全に個別かといったらそうではない。「憑く」霊は「憑依霊」と呼ばれるが、「付く」霊は「付着霊」と呼ばれる。
躑躅森泰斗は、付着霊を持っている。
【校内の付着霊所持者】
基本人間にも攻撃を与えることができてしまう霊媒術は、この付着霊が付いている事が多い。学校長の東西洛陽も、付着霊を所持している。現段階では、この2人のみが付着霊を所持している。
「「毒素散布 流」!!!」
『ははっ、、、毒かぁ、厄介な技を使うなぁ!!』
「でも兄ちゃん、こんなんくたばるような霊じゃないでしょ?」
『よくわかってるなぁ弟よ!!呪い殺すぜ!』
「泰斗くん!ゴリ押しじゃあ駄目、死んじゃう!!」
「ゴリ押し…?」
「あ…ご…ごめん、「爆進行毒素乱舞」……じゃ、死んじゃう…よ、」
「うるせぇ!これが俺のトップバトルだ!!」
躑躅森泰斗は厨二病である。
躑躅森泰斗は理不尽である。
爆進行毒素乱舞、通称「ゴリ押し」。躑躅森本人は、ゴリ押しと呼ばれることを嫌っており、躑躅森の前でゴリ押しと称すものには必ず怒りが湧いてしまう。そして理不尽な言動に出る。
この戦い方は、その名の通り爆発的な速度で毒素を撒き散らす。下級の霊や、知能の低い霊にはとても有効で、広範囲かつ高火力の攻撃である。しかしそれ以外の霊は、簡単に防御できてしまう。むしろ、相手の間合いのすぐ近くに入るため、後隙のうちに攻撃をもろに受けてしまう。
躑躅森は様々な独自の戦い方を制定している。そして彼はこの戦いの中で、最もシンプルかつ強い技を選別した。
「うらららららららららぁ!!!!!」
相手は会話可能の、祟の、四天王である。
『「日月閃光」!!!』
ビガァッッッ
太陽と月の光を凝縮させた、強力な光を放つ。
「ふぅ……恒例行事、終了!」
『んじゃ玉兎、充電しとくから。よろしく!』
「まかせな!」
「なんだ……なんの真似だ!!」
「はっははは、こっからはタイマン………じゃねぇか、だってそっち、三体、いるもんなぁ、3対1……なんだもんなぁ?」
「あぁそうだなぁ!!!「毒素散布 乱」!!!」
「「朧月」!!」
【朧月】
自身の力を増大させる。月の力をより強化させる技。
「躑躅森くん!!!」
「うるせぇ!突っ立ってろ!!」
これも躑躅森の戦い方の一つ、孤独毒々(こどくどくどく)。通称「でしゃばり」。ゴリ押しと同様。以下略。
一人で戦い、一人で打ち勝つ。複数人で戦うと、自分の感覚が狂う。故、単独で霊を祓う。これは、「自分の毒が他の人間にも影響することを防ぐ」という隠れた優しさでもある……訳ではない。あくまで、躑躅森が躑躅森のためやっている。
「躑躅森。危険だ。」
「黙っとけ学校長!ここは俺のフィールドだ!!」
「監獄を所持してから言え。馬鹿が。」
「なっっ………」
躑躅森は、監獄を所持をしていない。
校内で最も力を持つ躑躅森。初級生、中級生でも、何人か監獄を所持しているのにもかかわらず、上級生の彼は、なぜか監獄を所持していない。
付着霊だから?いいやそうではない。学校長は監獄を所持している。
単にイメージが足りない?いいや、そうでもない。彼は常日頃から「毒」について思考を巡らせている。それ故のあの能力でもある。
ではなぜ監獄を所持していないのか。
シンプルな実力不足である。
躑躅森は、自分は強いと思っている。もちろん、校内で最も霊を祓い、緑を使わずとも霊を見つけ出し、基本複数人で祓う霊を単独で祓ったり…。川原先生にギリギリ匹敵する存在である。
しかし、実際は「能力がとてつもなく強い」だけであって、「躑躅森自体の実力は無い」のである。
戦闘には慣れているそんな彼が、実力がないと言われると、校内がどうなるか分からないため、誰も言ってない。
「毒」という便利な能力に、己が溺れているのだ。
「躑躅森。私がやる。」
学校長が前に出た。
「羅針盤…「西南西」」
フッ…
「「月光」」
ジュバァジュバァジュバァ……
「わけわからん技使う霊媒師は何人も観てきたよ………もううんざり。さっきの毒の子は分かりやすかったんだけどなぁ、あんたみたいな、どうやれば攻撃できんのか分かんないつは…乱射に限るね。」
「そう言ってられるのも今のうちだ。まぁ…以外とすぐかもな。」
「はっ!そうかい、んなら、こっちも本気で言っちゃうよ?」
「「白乱 玉」」
「はっははは!その手の攻撃は何回も見たことが…………グボゴォ……」
霊から…血が…?
「私の能力は、羅針盤で16方位の向きをランダムに制定させ、その方向を相手が向いたら特大攻撃を与える。
そしてその特大攻撃の種類は、東西南北で決まる…。はぁ…なんとも地味な能力だ…。」
「ガハァッ………ゲホッ…ゲホッ……、」
「まだ血を吐いているのか。四天王の中で最強とはよく言ったものだ…。攻撃も単調、さらには避けやすいような技を最初にすべてつらつらと説明する。揚げ句の果てには威力がそこまでない。もう一発私の攻撃を食らえば祓えてしまいそうだ。」
「学校……長…、?」
学校長の能力は、先生以外誰も見たことのない。
世界一地味であり世界一強い能力である。
「学校長……そんな能力隠し持っていたのかよ…」
(すごい、私何もやってないのに大ダメージ与えてる………)
「あぁ〜……びっくりした…分かったわかった。そう言うかんじね?、…まぁでも、忘れちゃ駄目なのが…俺らは双子だって…こと。」
「「………芻毒………」」
「あ…?なんだ?」
「「蛟竜毒蛇」」
【芻毒】
毒素散布の上位互換の技。毒素散布がただの毒であれば、芻毒はいわば猛毒。そして、その猛毒属性を持った式神を出現させることができる。この式神は、躑躅森が操作できるものもあれば、自我を持つものもある。これは、いままで人前で躑躅森が使ったことのない技。学校長への仕返しである。
【蛟竜毒蛇】
一般的に、恐ろしいものの例えとして用いられる言葉。
この式神は、蛇と竜を混合させたかのような見た目をしており、口から猛毒を吐く。
「はははは………なぁ、てめぇの月の輝き……この毒で汚してやるよ……!!」




