完 無敗
これで完結です。
薄味本格戦記を真剣に書いてみました。
ありがとうございました。
「いやあ、親の私から見てもお似合いだよ」
「それは命を一度ならず二度までも救われて惚れないはずはありませんよねアリューレ」
「お母様、そんなはっきり言わなくても。恥ずかしいです」
「まあ、初々しいわね。私達にもこんな時があったわね。フェルナンド」
「そうだね。僕たちが婚約したのは、ラティスよりも年が下だったけどね」
え? どういう事だ? 話の流れ的に理解できてしまった。訳がわからないが、俺とアリューレが婚約した事になってる? なんで? どうして?
「あ、ちょっと手洗いに」
混乱した俺は、そう言って一旦席を立ってからユンカーの部屋へと急いだ。
「ユンカー、どういう事なんだ。俺とアリューレって婚約したのか?」
「おめでとうございます。本日の帰りの馬車の中でご婚約が決まったと伺っております」
「…………」
帰りの馬車?
婚約?
帰りの馬車は痛みで意識が朦朧としていた様な。
だけど、フェルナンド様とアリューレがなにかを喋りかけて来てくれて、どうにか相槌を打った気はする。
…………。
まさかあれって婚約の話だったのか?
いやそれ以外に考えられない。
気づかない内に俺はアリューレと婚約してしまっていたのか。
もちろんアリューレと婚約する事になんの文句もない。
すごくかわいいし侯爵家のお姫様だし、俺にはもったいない様な女性だ。
だけど、大きな問題がひとつある。
それはレクスオール戦記通りに行動しないと史実が変わってしまう可能性があるという事だ。
ラティスには三人の奥さんがいた。
一人はリティアで後の二人は‥‥誰だったっけ。
う〜ん確か第一夫人は、どこかのお姫様だったような。
それで第二夫人は……誰だっけ。
元々レクスオール戦記はラティス中心の記載が多く、元々夫人達の記述は少なかった。
あれ……
名前が思い出せない。
リティアの名前は思い出せたのに後の二人の名前が思い出せない。
もしかして、俺の記憶の中のレクスオール戦記の内容が薄らいできている?
実際に起こった事が強烈過ぎて、死にかけたりもしてるし本の中の記憶が薄らいでしまったのか?
アリューレはお姫様といえばお姫様だけど、もしかして第一夫人だったりするのか?
いや第二夫人の可能性もあるのか。
「ラティス様、どうかされましたか?」
「いや、いいんだ。そろそろ戻るよ」
だめだ。全く思い出せない。もしかして倒れた時に頭でも打ったのか。
あ〜どうすればいいんだ。
「ラティス、今度アリューレをラティスの領地に連れて行ってくれないか。私的には将来どちらで暮らしてもらってもいいんだが」
「ラティスのご両親のお墓にもご挨拶に行きたいな」
「そうね。それは大事な事だから今度時間がある時にみんなで行きましょう」
「私も行っていいのかい?」
「あなたはお仕事があるんだから無理に決まってるでしょう」
「そんな……」
ダメだ。この人達を前に、無かった事にしてくれとは口が裂けても言えない。
こうなったら腹を括るしかない。
きっとアリューレはラティス戦記の中の第一夫人か第二夫人に違いない。
そうとしか考えられない。
俺はそう無理やり結論づけて食事を終えた。
それから二週間、俺は侯爵家の屋敷で回復に努め、どうにかレクスオール領へと帰れそうになった朝のこと。
「ラティス様、ギルバート様より使いがきました」
「無事に着いたって?」
「いえ、旧ベルメール男爵領に隣接するバーミンガム男爵軍に怪しい動きありとの事で至急お戻り願いたいとのことです」
なんだって。バーミンガム男爵!? 知ってる。知ってるぞ。レクスオール戦記で知ってる。ラティスが倒した相手じゃないか~!
この前死にかけたのに、また戦うのか。
ラティス戦いすぎだろ。
レクスオール戦記によればラティス・レクスオールはシューティングスターとよばれ幾多の戦を勝ち抜き生涯戦において無敗を誇ったと記されている。
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