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6 敵はアンタレスにあり

素人の俺でもわかる。眼前の敵は明らかにレクスオール軍よりも多い。多いというか比較にならない。

正面からぶつかっても勝てるとは思えない。ギルバートさんはレクスオール軍は精鋭と言っていたが勝てたら奇跡だ。

どう考えても気合いや技術でどうにかなる状況じゃない。

どうすればいい。

このままじゃ、俺は死んでしまう。精鋭じゃない俺は一瞬で殺されてしまう。


「若、どうされましたか? 敵も全軍をもって当たってきたようです。ここで奴らを蹴散らし蹂躙してやりましょうぞ。なにやらおかしな陣で小細工を弄そうとしているようですが、そのような小細工が通じる我が軍ではありません」


ギルバートさん。この数の敵見ても全く怯む様子は見受けられない。

俺を囲んでいる五人の顔を窺うがそれぞれがギルバートさんの言葉に頷いている。

まちがいない。この人たちは、あれだ。


『脳筋』


なまじ強さを持っている為に、突っ込むことしか考えてないんじゃないか?

いや、ダメだ。

このまま無策で突っ込んだら負ける。

絶対負ける。

『スコーピオン』に飲み込まれる。

必死で頭を働かせてレクスオール戦記のダリル台地の決戦の記述を思い浮かべる。

『スコーピオン』の陣で本陣、敵の大将たるリクエ子爵がいるのはサソリの心臓である『アンタレス』の位置だったはず。

こちらから見ると逆三角形の中程向かって右側。


「ギルバートさん、このままだと難しいんじゃないかな」

「なにをおっしゃいますか。この誉れ高きレクスオール家の郎党が、リクエ軍などに遅れを取るなどあり得ません」

「いや、だけど三千ですよ。三千」

「数の問題ではありません」

「若、一騎当千というではありませんか。こちらは精鋭百二十。一人が二十もやれば大丈夫です!」

「いや一騎当千って。それに二十五だし……」


ダメだ。この人完全に脳筋。

このまま当たれば俺もタダでは済まない。むしろ大将首として一番にやられる。

どうにかしないと。絶対にどうにかしないとマズい。

焦りから頭が真っ白になるが、その瞬間天啓のようにレクスオール戦記の一文が脳裏に浮かび、思わず口にしてしまう。


「敵はアンタレスにあり!!!」


俺の言葉に周囲の動きが一瞬止まるが俺は止まるわけにはいかない。


「この布陣はスコーピオンだ! 敵の大将首リクエ子爵は心臓の位置。アンタレスの位置にいる!!! 我が敵を引きつけている間に側面へと回り込み一気に討て!! 天は我に味方した!! グリフォンの化身たる我らが餌にすぎない小虫スコーピオンを喰らうのだ!!!」


「オオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!」


もう勢いは止まらない。たしかこの戦いで敵の大将首を討ったのはハンニバルだったはず。


「ハンニバル、大将首は其方にやろう。六十騎まかせる」

「わ、若。正気で!?」

「もちろんだ。主たる私の言葉が聞けぬのか?」

「い、いえ。わかりました。者どもついて参れ」


こんなのやりたくないが、この後に及んでは足掻くしかない。記憶によればレクスオール戦記でラティスは、ハンニバルに部隊を任せ、側面からの突撃で見事大将首を上げたはず。

替え玉の俺の言うことなど聞くに値しないだろうが、祭り上げたのはそちらだ。俺は死にたくない。

兵士たちの目のあるこの場で、主たる俺の言葉を無視する事はできないはず。

もし抗えば、俺が偽物と言っているに等しいのだから。


「若! 先ほどの指示は……」

「ギルバート、この戦勝つぞ!!!」

「は、はっ!」

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