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天運?

「アリューレ様、この度はわざわざお付き合いいただきありがとうございます」

「ラティス様、ラティス様は貴族の当主となられるのですから私のことはアリューレとお呼びください」

「いや、でも、準男爵だし」

「ご自分の功績で叙爵されるのですから胸を張ってください。私はあくまでも侯爵家の次女に過ぎませんので、アリューレと」

「わかりました。アリューレ。これでいいですか?」

「はい。できたら喋り方ももっと近しい感じの方が嬉しいです」

「アリューレ。これでいいかな」

「はい。ラティス様」

「アリューレも俺のことはラティスと」

「……わかりました。ラティス」


自分で頼んでおいてあれだが、アリューレのように可愛い子に名前で呼ばれるととてつもなく照れる。

名前を呼ぶのはリティアで少し慣れてきたが、呼ばれるのは慣れてないので強烈だ。

だけどヴィレンセ侯爵家の皆さんは本当にいい人ばかりで、身分の差を感じさせないくらい良くしてくれている。

おかげでアリューレとも結構仲良くなる事ができてよかった。

その夜遅くにユンカーが部屋へとやってきた。


「ラティス様ご報告です」

「うん、何かわかった?」

「はい。まず士爵位から準男爵へと陞爵される事は異例中の異例。制度としてはあったもののここ数十年使われたことのない制度だったようです」

「じゃあ、俺はどうして」

「王家の力が弱まってきているので、今回の件を大々的に流布し権威を取り戻そうという思惑があるようです。若きグリフォン。数々の戦場を駆け抜けた無敗の英雄。民衆の心を掴むには最適と考えたようです。よほどの事がない限り陞爵で王宮主催のパーティが開かれる事はないようですが、今回は大々的に行う事で民衆や貴族達に王家の力を示したいようです」

「それでか。やっと納得がいったよ。俺は見せ物みたいな役割かな」

「ラティス様、今回王家の思惑があり準男爵という貴族位を得る事ができるのです。この機を掴んだのもラティス様の天運ではないでしょうか」

「天運か……」


天運なんてものが本当にあるのならきっと俺はここにはいない。

自宅でいつものようにくつろいでいたはずだ。

なんで俺はこんな事になってるんだろう。俺が貴族で、しかもお披露目パーティ。ありえない事の連続に、最近こういうものなのかなと普通に受け入れそうになる自分が怖い。


「それともうひとつ。今お世話になっているヴィレンセ侯爵家ですが、王都でもかなりの力を持つようです。王家に連なる血筋であり、貴族院での席次は第四席。王家と貴族院を繋ぐ名実ともにトップクラスの貴族と言えます」

「そんなすごい人のところでお世話になってるのか。なにかやらかしたら大変な事になりそうだな」

「現当主のフェルナンド様は穏健派とのことですが、二人のお嬢様のことになると人が変わったようになると評判です。そこさえ問題を起こさなければ大丈夫ではないでしょうか」

「そう。今のところは大丈夫だとは思うけど」


やはり、ミラルダ様とアリューレか。本人から頼まれた事とはいえアリューレって呼んで本当に大丈夫か? 不敬罪で斬られたりしないよな。戦場とは違った意味で差し迫った生命の危機を感じてしまう。

慎重に慎重を期して生活を送っていたつもりだが、陞爵当日を迎える日にはなぜかミラルダ様とも距離が縮まり、ミランダ、ラティスと呼び合う間柄となってしまっていた。

今まで、女の人と名前で呼び合う機会なんかそうはなかったのに、噂による俺のおかしな評価によるところがかなり大きいのだと思うが、二人とも両親の前でも平気で名前呼びしてくるので、その度にフェルナンド様とヴィクトリア様の顔色を窺ってしまうが今のところは大丈夫のようだ。

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