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出陣


「くっ……」

「最初より動けるようになりましたな。さすがはラティス様です」

「……」


今日で二十日目だが、まだ一度もギルバートに攻撃を加えることはできていない。

最初より動けるようになったとは言われるが全く実感はない。


「ううっ……」

「ラティス様、かなりさまになってきましたな。これからが楽しみです」

「……」


今日で既に四十日。俺の身体の限界はとうに超えている。かなりさまになったというのはどの程度のことなのだろう。

全く実感はない。

俺は訓練を終えると全く動けなくなるので領内は大丈夫なのか聞いてみたがビルドワースさんを中心にギルバートさんも仕事をしてくれているらしく全く問題ないとのことだった。

脳筋なのに内務が優秀って不思議だ。

そしてこの四十日毎日俺はリティアの世話になっている。

このままだとリティア無しでは生きられなくなりそうで怖い。

「今日で約束の二ヶ月です。休みなく訓練されるラティス様には感銘を受けました。兵達の訓練も滞りなく進んでおります。二ヶ月前とは比べ物にならないほど練度も上がっております」


「そうか。あとは待つだけだな」


結局二ヶ月で一度もギルバートさんに攻撃を入れる事は出来なかったが、この数日少しだけ避けるのが上手くなった気がする。この二ヶ月で痛感した。実戦経験のない俺が二ヶ月の訓練でギルバートさんに勝てるようになるはずがない。だけど、この二ヶ月の地獄は無駄ではなかったと信じたい。

この後の戦いで俺が生き残るための準備期間だったと思いたい。

それから三週間は何事もなく過ぎていき、強度は少し下がったが訓練も続けていた。


「ラティス様! ベルメール男爵様からの使者が!」


ついに来たか。


「通してくれ」

「はっ」

「レクスオール士爵、メルベール男爵様からの伝令です。メルベール男爵領にサンドニ男爵軍が攻めてきました。至急兵を集め救援にくるように」

「わかりました。支度でき次第向かうとお伝えください」


ほぼレクスオール戦記の通りだ。

やはりサンドニ男爵が攻めて来た。


「ギルバート! 聞いたか」

「はい。準備は整っております。いつでも立てます」

「兵を領内に五十残し後は出るぞ」

「はっ」


空になった領地を攻められても不味いので兵を五十とビルドワースさんを残しベルメール領へと出立する。


「皆のもの聞いてくれ。この戦いはレクスオールの未来を左右する戦いだ! この二ヶ月の鍛錬は全てこの日のためにあったんだ! この二ヶ月の地獄を思い出せ! この地獄に比べればサンドニ軍などものの数ではない! このラティスと共にサンドニを討つぞ! 皆はレクスオールのグリフォンの鍵爪だ! 敵の喉笛掻き切ってくれよう! さあ行こう!」

「おおおおおおおお〜!」

「ラティス様万歳!」

「あの地獄に比べればどんな相手でも怖くないぞ〜」

「ああ、あの地獄よりどこに行ってもマシだ!」

「いくぞ〜!」


この口上はレクスオール戦記にのっていたわけでは無いが、ラティスならこう言うだろうと思い声を上げてみたが、士気が上がったようなので良かった。

ただやっぱり、俺同様兵士達も地獄を見たんだという事は痛いほど伝わって来た。

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