リティアのご飯は美味しい
「それよりラティス様のご活躍でレクスオールの大勝利と聞いています。これでレクスオールは安泰ですね。父もラティス様の事をグリフォンの生まれ変わりだと褒めちぎっていました」
「それは、まあ、なんて言うか、うん」
史実をなぞっただけでたまたま上手くいった事をこんなふうに褒められるとなんとも言えない気持ちになってしまう。
「今日はお祝いですから腕によりをかけて夕ご飯を作らせてもらいますね」
「それは楽しみだ。だけどお金は大丈夫なのかな」
「はい。レクスオール家の方は皆いなくなってしまいましたので、一時的に私のレイゲン家が金銭の管理をさせていただいています。いつでも言っていただければラティス様に」
「あ〜特に使う予定もないし、お小遣い程度貰えればいいかな」
「わかりました」
正直いきなり大金を渡されても、今の俺ではどうしようもない。
まあ、なんとなくだがレクスオール家自体はそれほどお金を唸らせているような家には見えない。
それからリティアが、家にないものを色々と持ってきてくれて食事も作ってくれた。
「それじゃあ、いただきます」
「お口に合うといいのですが」
リティアはそう言いながら少し不安げな表情を浮かべていたが、俺はリティアの作ってくれたスープを口に運ぶ。
「うまい!」
「本当ですか?」
「ああ、本当。朝食べたお店のより断然うまいな」
「それは言い過ぎだと思いますが、嬉しいです」
「いや、本当だって。だって味がしっかりするし、濃厚というかとにかく美味しい」
「ありがとうございます」
お世辞抜きでこの時代の食事でダントツで美味しい。
塩味はやっぱり薄いが、今までに無く色んな味が合わさって旨味が増していて美味しい。
なんだろ。これってハーブとかなのか?
「色んなハーブとかが入ってるの?」
「ラティス様、さすがです。今日は八種類のハーブを入れてます」
「やっぱり。おいしい。リティアも食べなよ」
「いえ、私は後でいただきます」
「二人しかいないんだし、俺もこんな広いテーブルで一人っていうのもなんだから一緒に食べない?」
「ラティス様がそう言われるのであれば、いただきます」
ギルバートさんの娘とはいえ、家の家事をしに来たリティアと一緒に食事をとるというのは領主としてはいただけないのかもしれないが、俺の感覚的には、この状況でリティアを待たせて俺一人だけが食事をとるというのはない。
それからリティアと二人で話をしながら夕食をとったが、ここにきてから初めて肩の力が抜けた気がした。
この時代にわけも分からずやってきていきなり命のやりとりをしてずっと緊張したままだった。
今日の朝食事をとった時も完全に緊張が解ける事はなかった。
だけど、家でリティアが美味しい食事を作ってくれて、一緒に楽しそうに食べてくれてようやく緊張の糸が解れてきた気がする。
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