事故じゃない
「ビルドワースさん! ギルバートさんのところへ連れて行ってください!」
「元々そのつもりですが、そんなに慌ててどうかしましたか?」
「どうかしてます。ベリンガムが! ベリンガムが攻めてきます!」
「ベリンガムがですか? そんな馬鹿な。ベリンガムとは今までも上手くやってきてるんですよ」
「それは表面上だけです。レクスオールが消耗したのを見逃すはずがないんです」
「ラティス様、流石にそれは気負いすぎでは」
「とりあえず、ギルバートさんのところへ行きましょう」
ビルドワースさんは全くピンときていないようだが、それも仕方のない事だとは思うが、とにかく今は時間が惜しい。
ビルドワースさんに案内されてギルバートさんの家へと向かう。
「着きましたよ」
「あれ? ここってもしかして」
「ああ、そうです。あの奥がラティス様のお屋敷です」
なんとギルバートさんの家は、俺が昨日、空腹に耐え寝た家のすぐ目と鼻の先だった。
こんなに近いなら昨日教えておいて欲しかった。
「おお、ラティス様。食事でもしてこられたのですかな」
「…………」
「ラティス様どうかされましたか?」
「ギルバート様、実は……」
俺が無言でいるとビルドワースさんがギルバートさんに俺が無言のわけを説明し始めた。
「ラティス様、申し訳ございませんでした。このギルバート完全に失念しておりました。今日にでもすぐ料理のできる者を探して参りますので」
「そう、それなら助かるけども。こんなに近くなら昨日のうちに教えておいて欲しかったよ」
「申し訳ございません。言葉もありません」
「まあ、過ぎたことを言っても仕方がない。それよりも大事な話があるんだ」
「どのようなお話でしょう? まさかラティス様を辞めたいなどと」
「いや、できることならすぐにでも辞めたいけど、今はそれじゃないんだ。ベリンガムの事なんだ」
「ベリンガムがどうかされましたか?」
「落ち着いて聞いてほしいんだけど」
「はい、大丈夫です」
「ベリンガムが攻めて来ると思う」
「ははっ、なにを言われるかと思ったらベリンガムが攻めてくるなどと。ラティス様いくらなんでもそれはありません」
「いや、信じられないかもしれないけど本当なんだ」
「ラティス様、お言葉ではありますがベリンガムとはこの数十年というもの諍いもなく良好な関係を築いております。攻めてくるという事などは。そもそも理由がありません」
「理由ならある。グリムワール達、ラティスの両親を殺したのはベリンガムだ」
俺の言葉を聞き、ギルバートとビルドワースの顔色が変わる。
「そんなバカな。御領主様達は事故で亡くなったのです」
「その事故をしくんだのはベリンガムなんだ」
「そのような話。そもそもラティス様は先代様とも面識はないはず。なぜそのような事がわかるのです」
ギルバートの疑問ももっともな話だ。
だけど未来からやって来て、レクスオール戦記を穴が開くほど読んだから知ってるんだと言っても信じてはもらえないだろう。
じゃあどういえば信じてもらえるんだ。
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