詰んだ?
「ラティス様どうかしましたか?」
「詰んだ……」
「なにがですか?」
「もうダメだ……」
「ラティス様、そんなにお腹が空いているのですか? あれだけでは足りませんでしたか?」
「いや、そういう事じゃ」
「仕方がありませんね。それではもう一軒行きましょうか?」
「どこに?」
「朝飯をやっているところですよ」
「いや……」
「遠慮は無用です。ラティス様にはこれから頑張って頂かないといけませんから。さあ行きましょう」
「え……」
なぜか俺はビルドワースさんの言うままに二件目のお店に連れて行かれ、今日二回目の朝ごはんを食べる事となってしまった。
「ビルドワースさん」
「はい、美味しいですか?」
「はい、まあ」
「それはよかったです」
やっぱりこの店の食事も味が薄い。
「ひとつ聞いてもいいですか?」
「はい、なんでもどうぞ」
「ベリンガムの事なんですけど」
「はい」
「ベリンガムって強いんですか?」
「強いか弱いかで言うとまあ強いんじゃないでしょうか。ベリンガムも士爵領ではありますが、その兵数は五百に迫ります。士爵家の中では上位に位置します。もう少し大きければ准男爵でもおかしくありません」
「そうなんだ。それじゃあレクスオールと合わせれば、準男爵級って事だよね」
「レクスオールが降る事はあり得ませんが、規模だけでいうとそうなります」
「ほかにベリンガムがレクスオールに望んでいるもの。こちらから輸出している物とかはあるの?」
「それは作物でしょうね。あちらからは岩塩、こちらからは作物を輸出しています」
「そうなんだ」
おそらくベリンガムは、グリムワール達を偶然の事故を装って亡き者にし、レクスオールを併合し准男爵となる。そしてレクスオールの広い土地で育った作物も我が物にしようとしたのだろう。
ふざけている。
元々レクスオールの兵の数は百二十。ほぼ四倍の兵力を持つベリンガムが攻め込んで来れば、大変な事になる。
先の戦いで九十まで減ってしまったが、ベルメール男爵より二百の兵を割譲してもらえる事になっている。
二百九十まで増えればどうにかなるか。
いや、いや。リクエの兵がすぐに使えるかどうかもわからないし、そもそもまた戦争?
だけど、普通に考えて、気づかれずに事故に見せかけてグリムワールを殺すような奴なら、このタイミングを逃すとは思えない。
兵が増強される前に攻めてこられても不思議じゃない。
もしかして今がヤバいのか?
まずい! まずい! まずい!
どうしたらいいんだ。このままじゃまずいけど、九十対五百もあり得ないし、そもそも昨日までみんな戦っていたのにまた戦争って無理だろ。
というより俺が無理だ。
普通に戦争するとか考えているが、昨日までは運良く生き残っただけで、今度戦争なんかしたら確実に死んでしまう。
悠長に二回も朝ごはんを食べている場合じゃない。
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