表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
18/67

凱旋


帰り道ギルバートさんとユンカーさんからレクスオール家について聞くことが出来た。

レクスオール家は二代前のラティスの祖父が戦功を挙げたことにより士爵位を叙爵し騎士となる。

それ以来、リクエに隣接した領地を護ってきたそうだ。

レクスオール戦記にはラティスが祖であるかのように描かれている為この辺のことは初耳だった。

レクスオールの兵は百人を超える程度で、二十名程度は常兵だがそれ以外は普段色々な仕事についているとのこと。

領地は山林などを含む為、通常の士爵領よりはかなり広いらしい。

ラティスの両親はかなり優秀だったようだが、先日二人で馬車で移動中御者共々、不慮の事故に遭い亡くなったそうだ。

優秀な両親のおかげでラティスが、領主家として表舞台へと出てくる事はほとんどなかったらしい。

それが両親の死の直後にリクエ軍が侵攻してきた為、代替わりする間もなく急遽旗頭に担がれ出陣したとのことだった。

二人からの話を聞いてレクスオール戦記のラティスとは違い、どうも本物のラティスは人前に出る事が苦手で、避けていたように思えてきた。

実際、普段の生活の中でもラティスはあまり家から出てこなかったようだ。

いくら、広めの領地とはいえ、兵から俺がラティスと見分けがつかないのも、それが原因の一つかもしれないな。

それにしてもあの英雄的口上と戦略で、敵を撃ち破ったであろうラティスとはかなりイメージが異なる。

やはり歴史書とは誇張されて遺されるものなのかもしれない。


「ラティス様、もう少しで我が領地へ着きますぞ」

「ようやくか〜」


やはり馬での長距離移動はキツイ。

今まで鎧兜をつけて馬に乗ったことなんかない。

普通に乗るのと比べて何倍もキツイ。

乗っているだけでどんどん消耗してしまう。

おまけに重さのせいか、腿の内側が擦れて痛い。

正直擦り切れそうで、ほとんど限界が近かったのでよかった。

領地へ踏み込むと、領民たちが温かく迎えてくれた。

どうやらラティス達は慕われているようだ。

ひとまずよかったと思いながら道を進んでいると、後方に走って行き、そこで泣き崩れる人たちがいた。


「あああああああ〜」

「父ちゃん〜」

「ギルバート、あれは……」

「今回の行軍で命を落とした者の家族でしょう」

「そうか」

「名誉ある死とはいえ三十名ほどの者が命を落としましたので」

「補償はあるんですよね?」

「もちろんです」

「できる限り頼みます」

「はい」


その三十名の中には仕方がないことだったとはいえ、ハンニバルと一緒に特攻させた者が多数含まれているだろう。

つまりは俺が死を命じた、いや殺したに等しい。

俺はラティスじゃない。だけどラティスとして命じたのは俺だ。


「ちょっと止まってください」

「ラティス様」


俺は馬を反転させ後方へと向かい、泣き崩れている家族の前で馬から降りた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ