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寄親への報告


レクスオール戦記は全十五冊にも及ぶ超大作だが、ご先祖様を崇拝する俺の父の影響で擦り切れるほどに隅から隅まで読み返した。

俺の頭の中にはレクスオール戦記の全てが詰まっていると言っても過言ではない。

そのおかげでリクエ軍との戦いを乗り切る事ができたといえないこともない。

だけど俺がレクスオール戦記の主人公であるラティスになってしまった。

この時点で史実とは異なるので、俺の知って過去とは違っているのか?

それとも俺がラティスとしてレクスオール戦記の主人公を演じなければ歴史が変わってしまうのか?

いったいどうなってるんだ?

考えてみても全くわからないがひとつだけ心配な事がある。

俺がラティスとして史実をなぞらなければ、もしかして歴史が変わり、歴史が変わるということはレクスオールの歴史が変わり、その末の端たる俺の存在自体に影響が出るのではないかということだ。

検証することはできないが、信じがたい事に俺が時間跳躍してここにいるくらいだから、その可能性はある。

可能性がある以上、全く乗り気ではないがこのままラティスとして振舞わざるをえないという結論に至ってしまっている。

問題はラティスは文字通りの英雄。

俺にそんな英雄の史実をなぞらえることなどできるのだろうか。

そんなことを考えているうちにいつのまにかみんなの食事が終わったようだ。

食事を終えると少し体力も戻って来た。

俺たちはそれから数時間進みようやくベルメール男爵軍へと至る事ができた。


「失礼致します」

「うむ、入るがいい。してリクエ軍を上手く撒いたのか? まさか逃げ帰ったのではあるまいな」

正面奥に小太りの男性が座っているがおそらくベルメール男爵その人だろう。

脇の男性が高圧的に喋りかけてくる。

「いえ、そんな事は……」

「では、どうなっている。戦況を報告しろ」


俺たちは命懸けで戦ったのに、自分達は遠く離れた場所まで逃げて、それでこの物言い。

ラティスじゃない俺でも腹が立つが、今のラティスはあくまでベルメール男爵の寄子。士爵の一人にすぎないので強く出る事もできない。


「え〜っと、我がレクスオール軍はリクエ軍本体と交戦。無事リクエ子爵家を打ち倒し、リクエ軍を降し傘下におさめました」

「な……に!?」

「私の耳がおかしくなったのか? よく聞こえなかったようだ。もう一度言ってくれ」

「我がレクスオール軍はリクエ軍本体と交戦。無事リクエ子爵家を打ち倒し、リクエ軍を降し傘下におさめました」

「ハハハハハ。レクスオール家の新しい当主は、この場で冗談を口にできるらしい」

「い、いえ、冗談ではありません。本当に倒しました」


俺の言葉を受け、脇の男性がベルメール男爵の耳元で何やらゴニョゴニョやっている。

今度はベルメール男爵が声をかけてきた。


「ラティス・レクスオールその言葉嘘ではあるまいな。事が事だ。冗談では済まぬぞ」

「はい、もちろんです。我が配下の者を残してきましたがリクエ軍三千も残してきましたので、ベルメール様のご判断を仰ぎたく」

「そ、そうか。おい、シングレア手勢を率いて確認してまいれ」

「い、いや、それは……」

「ラティス・レクスオール間違いないのだな」

「はい、もちろんです」


それから天幕の中は急にバタバタし始め、シングレアと呼ばれた人があたふたしながら出ていき、その後俺たちはようやくひと息つく事ができた。

ひと息つく事ができたとはいえ、乾いた草で編んだマットの上で休む事ができただけなので長時間の騎乗と相まって腰が痛い。

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