基礎・初級実践テストに向けた強化合宿とピンクの髪色対策
ゆるふわ設定でお届けします。
何卒ご容赦くださいませ。
ご都合主義です。
楽しんでいただけたら嬉しいです。
必要な物は明日送り届ける、何かあれば直ぐに連絡を入れなさいと、どこの両親も同じようなことを言い帰っていった。
「今日は色々あって疲れたことだろう、早々に休んでと言いたいところだが、ハンカチの補充をしなければな」
「服の裏地等にも刺繍をしてみてはどうでしょうか」
「ああ、それもいいと思うよ。ミシェル嬢の好きな色は何色かな?」
「私ですか? そうですね、吸い込まれるような深く濃い藍色や日が沈む時のモーブ色やピンク色、夜空に浮かぶ月の色も好きです。セイン様は?」
「シャンパンのような色に紫紺」
王宮の侍女が色とりどりの布と裁縫道具を用意してくれた。
私は本を開いて、意匠がみんなに見えるようにテーブルに置いた。
王宮の侍女達が男性陣に刺繍の仕方を教えていた。
私達は黙々と作業に取り掛かった。私は紫紺の布を選び薄いベージュの糸に金糸を入れて刺繍をいれた。逆も作ってみた。シャンパン色の布に紫紺の糸で刺繍を入れていった。
本をパラパラめくると健康の文字が目に入った。最初のページにある子供のでは無く、健康でいてほしいという加護らしい。
エマも本を見たがったので、少ししか開けず、意匠だけ覚えられればいいと気にしていなかった。
意匠も気に入ったので、それも加える事にした。
そう言えば、変わらぬ愛の刺繍もして欲しいって言ってたわよね。
あまり考える事無く、その意匠も刺繍していった。
4枚作り終えたところで、私達は休憩してハーブティーをいただいた。
3人で刺繍を見せ合い、もっといい方法は無いかと考えていた。私はリボンが置いてあるのを手に取り、
「ああ!! これでよろしいのではないかしら? リボンにひたすら刺繍を入れて、また元通りに巻くか折り畳んで小さくしておく。魅了が使われたら意匠が焼けるのでしょう? リボンほど長ければ直ぐに無くなる心配もないですし小さいからポケットに入れておいて、残量を確認できますわ! 刺繍は大変ですけれど!」
「どんな事でもやってみましょう」
「確かにいい考え! 早速やりましょう!」
私は紫紺のリボンを探し、先ほどの糸で、回復、防御、健康、変わらぬ愛の順番で刺繍を入れていった。
半分くらい終えたところで、3人で「結構つらいね」と笑いあった。
「キャサリン出来たぞ! 受け取ってくれ」
「まあ、ドミニク王子が刺繍をして下さるなんて! 嬉しすぎます!」
「エマ。これを持ってて欲しい」
「クロード! すごいわ! ありがとう!」
「ミシェル嬢、ミシェルと呼んでいいかな? これを君に」
「わぁ、私の好きな深く濃い藍色に月の色だわ! 刺繍も素敵です! ありがとうございます! 何だかセイン様みたいな色ですわね!」
セインの顔が赤くなっていた。
そして女性陣からも男性陣へハンカチを渡した。何が起こるか分からないのでリボンも半分まで出来た物を切って小さく畳んで渡した。
「ハーブティーを飲んだら、今日はもう終わりにしよう。明日からは魔法師団に応援を依頼して実践で強化合宿をやっていこうと思う。
明日の強化合宿は帰宅後になるが、スケジュールによっては早朝になる事も有るかもしれない」
「頑張りますわ。断罪シリーズの様になりたく無いですもの」
「もちろんですわ」
「ええ、頑張りましょうね!」
セインは初めて見る意匠の意味を調べる為に本を捲っていた。
『私の為に健康でいて』これはどういう意味で刺繍したのだろうか? ミシェルが勘違いをしていたとしても、今この時だけは、そのままの嬉しさに浸っていたかった。
いつの間にか、自分の中でどんどん存在が大きくなっていったミシェル。
ふんわりと柔らかくシャンパンのような髪色と紫紺の瞳。その瞳にいつも映っていたいと思う。
◇
それから、用意してもらった部屋へ向かった。
ドミニク王子の提案で食事も一緒にとる事になった。今は時間が惜しいからと言う理由からだ。
「おはよう、良く眠れたかな? 今日から本格的に対ピンクの髪色との戦いになる。加護のお守りを忘れずに。何が起こっても動揺を見せず冷静に。
万が一にも、この中の誰かが魅了にかかったと感じた場合は、直ぐに連携して、予備のハンカチを無理やりにでも持たせる事。団体行動は必須。他に何かあるかな?」
「伝達手段を持っているのは、ドミニク王子だけですわ」
「そうか、そうだったな。早急に、連絡を取れる手段を考えなければいけないな」
「昨日の教師はどうなったんだ?」
「既に、魅了は解除されている。加護のお守りも持たせてある。教職員全員にもだ」
「あの、マーサを見かけませんでしたでしょうか? 昨日の対策会議の後から見ていないのです」
「大方、荷物を取りに帰ったのだろ?」
「私に一言も無くでしょうか?」
「それは、あのマーサからしたらおかしいな。王宮内で見かけた者がいないか聞いておくよ」
「ありがとうございます」
「では、学園に向かうとするか。因みに、私の従者とピンク頭で私の教科書の取り合いになったそうだ。『好感度を上げる為に必要でノートも綺麗に取ったから邪魔しないでよモブのくせに』と言われたそうだ」
「モブってなんだ?」
「ピンク頭の言葉にも打開策が隠されているかもしれない。不明な言葉は纏めておこう」
◇◇◇
「ドミニクー! おっはよぉー-! 昨日、帰ってこないから頑張ってノートも取ったんだよぉ! はい、教科書とノート!」
ドミニク王子の従者がさっと間に入る。
「フロールマン男爵令嬢、こちらはドミニク・ヴェッタシュトランド第一王子です。ご挨拶は?」
「昨日から何なの? 邪魔しないでって言ったでしょ? ドミニクゥ何とかしてぇ」
「随分と自由な家庭で育ったものだな。教科書が無いと言っていたな。それを使えばいい。返す必要等無い。キャサリン行こう」
「あ、待ってよぉ! ドミニクゥ!」
ピンク頭がドミニクの腕にしがみ付いてきた。
「王族に触れるとは何と無礼なのでしょう。下がりなさい」
キャサリン様がお怒りになられてる。すると、ピンク頭がドミニク王子にしがみ付いたまま、片手でキャサリン様の腕を掴んで
「邪魔しないで、婚約者だか何だか知らないけど消えてよ。ドミニクは私が攻略するんだから。ドミニクは私と愛し合うのよ」
「私がドミニク王子の婚約者と知っていてのその振る舞い。フロールマン男爵家に正式に抗議させていただきますわ」
「あれ…な…んで? 何で効かないの? ドミニクルート開放されてないとか? いやメインなのにそんな訳ないか…仕方ない、イベント迄待つか…え? 何なの? バグ?」
ピンク頭は諦めたのか、ブツブツ言いながら、離れていった。
私達は急ぎ禁書庫へ向かった。
「ドミニク王子、キャサリン様、大丈夫ですか?」
「ああ、私は問題ない、腹は立っているが」
「私も大丈夫ですわ。ローズブリンク公爵家から正式に抗議を入れますわ」
「きっと家族も言いなりなんじゃないのかな?」
「そうでしょうね、抗議を入れたという事実が大事ですから」
「2人ともお守りは大丈夫?」
「うわっこれは…」
「キャッ」
ドミニク王子のリボンは全滅して、ハンカチに至っては10枚中8枚がダメになっていた。
キャサリン様のハンカチは全て全滅しており、髪に結わえていたリボンが辛うじて残っていた。
4人のハンカチを10枚ずつドミニク王子とキャサリン様へ渡した。
しかし、前回より威力が高くなっているという事だろうか。
「ドミニク王子が初めて刺繍して下さったのに、こんな悲しい事はありませんわ」
「キャサリン、僕の刺繍で君が守れたのなら、こんなに嬉しい事はないよ。いつでも刺繍は出来るから」
「いつ纏わりつかれるか分からないから、急ぎ追加のお守りを貰わないといけないね。この調子だと学園中、洗脳状態に陥ってしまいそうだ」
セイン様がそう言いながら、残念そうな顔でリボンを半分に切りドミニク王子に渡していた。
教室に戻り席に着いた。突然、物凄い胸騒ぎがしたので、持っているハンカチの全てをセイン様に押し付けた。
「待て! ミシェルはどうするんだ?」
「私は何とかなりますので」
セイン様は困惑しながらも受け取ってくれた。
◇
授業が始まり、教師が入ってきて、開口一番
「ミシェルさん、ジェシカさんと席を変わりなさい」
「どういう事ですか? ミシェルは目が悪いので後ろには移動出来ません」セインが答える。
「ミシェルさんが目が悪いと嘘をつき、ジェシカ様の勉強の邪魔をしていると報告がありました」
「昨日は体調が悪くミシェルは治療室に行き、早退しています。どこで勉強の邪魔をするのですか?」
「火の無い所に煙は立ちません。移動しなさい。失望しましたよミシェルさん」
「……はい」
私が席を立つとセイン様も席を立った。
「セインはそこでいーのー」
「セインさん、何故立っているのです? 着席しなさい。移動はミシェルさんだけです」
「ミシェルは病み上がりです。隣にいないと心配です」
「それも仮病だと報告が上がっています」
「何だって!?」
「セイン様、何を言っても、今は無駄のようです。後ほど」
ジェシカ様と席を変わると、ジェシカ様は昨日ドミニク王子にしたようにセイン様にしがみ付いた。
何か凄く嫌だわ。他の人がセイン様に触れるなんて。落ち着かなきゃ。深呼吸を繰り返す。きっとお守りが足りなくなるだろうから、ここから回復魔法をかけるのはどうだろうか?
何でも実験しないと分からないってセイン様が言っていたのよね。
私は授業そっちのけで、セイン様に回復魔法をかけ始めた。
それは神殿で練習したように、全体に広がらないように、セイン様だけを内側から回復してすべての状態を完璧にするように。
物凄い抵抗を感じるけれど、セイン様の身体に合わせ何物にも浸食されないように力を伸ばして行く。
どの位時間が経っただろうか? 汗が滴り落ちて気持ちが悪い。でも続けなければ。気持ち悪くて気が遠くなってきた。目の前がチカチカする。もうその手を離しなさいよ。何であなたがセイン様にしがみ付いてるのよ。滴り落ちるのは涙なのか汗なのか分からない。
汗でぐっしょりしているのが自分でも分かる。一番後ろの席で良かった。後どの位? 私は2人の事を見ているのが嫌なの? 回復魔法をかけ続けてるのが苦しくて嫌なの? 何が嫌なの?
もう良く分からない。辛い…。
「あーん セインどこに行くの?」
「授業が終わったんだ、これ以上纏わりつかないでくれ」
「え、セイン? 効いてたんじゃないの?」
「ミシェル!? ミシェル!!」
大丈夫そうなセイン様を見た私は意識を手放した。そして、そのまま王宮へ運ばれた。ドミニク王子達も今日は危険すぎると早退をした。
診察の為、神官様が呼ばれた。
「魔法力の枯渇と極度の精神的不安ですね。ミシェル様は相当な魔法力の持ち主です。魔法力が枯渇する迄、一体何をさせたのですか?」
ドミニク王子は今起こってる事を全て話した。
「体の中から溢れる生命力を感じたので、90分もの間、途切れる事無く回復魔法をかけ続けてくれたのだと思う」
セイン様は震える声で、神官様に話した。
「エマ様とクロード様は、闇魔法をどこまで習得されていますか?」神官様が2人に尋ねた。
「お互い、まだ狭い範囲の索敵迄です」
「お守りを作る時間は、今は勿体ないので他の方達に任せましょう。学園も皆さんお休みしてくださいね。力の底上げをしない事には太刀打ちできません。例えば闇魔法の恐慌が使えるようになれば相手が魅了を使えなくなる確率が高くなるでしょう。相手の能力にもよりますが」
「魔法師団にも特訓の時間を多く取れるように動いてもらう」ドミニク王子が静かに、しかし怒りを滲ませた声で神官様に話すと、
「いいえ、必要ありません。明日から私と特訓しましょう。もう一人増えると思いますが。ですので私の部屋も用意してくれると助かります」
「こう言っては申し訳ないのだが、神官様が戦えるのか?」
「フフフ、明日楽しみにしていて下さいね、早朝から始めましょう。皆さん、練習場でお待ちしておりますよ」
神官様はニコニコしていたが、ドミニク王子は不快な表情を隠さなかった。
「私は両陛下にお会いして神官様の部屋と訓練の許可を取ってくる…」
◇
「ああ、聞いている。あまりに魅了の威力が跳ね上がるのが強すぎて、対応が間に合わなかったのだ。そんな中、ミシェル嬢はよく頑張ってくれたな」
「ええ、本当に。そこで私達は明日から学園を休んで特訓する事にしました。今のままでは対抗出来ないと、そう言われたのです」
「自分の弱さを把握し認めて励む事は、素晴らしい事よ」
「魔法師団を動かすよう手配しよう」
「いえ、魔法師団は必要ありません。神官様が訓練してくれると。それほど迄に私達は弱いのでしょう」
「神官様とは? まさか」
「クリストファー神官様です」
「ドミニク、何があっても、その、落ち込むことは無い」
「落ち込む事の無いよう精進いたします」
◇
「さあ、明日早朝から特訓開始だ。今日はもう休もう」戻って来たドミニク王子が明るい声でみんなに声を掛けた。
「神官様でも勝てる位の実力しか今の僕達には無いって結構きついな。だけどそれが事実だから頑張ろう」セインもそれに答える。
「ええ、そうね。頑張りましょう」エマもやる気に満ちた声で答えた。
「そうだな…」クロードは不安げに呟いた。
「実践訓練をすれば、きっと私達も強くなるはずですわ」キャサリンは変わらず前向きであった。
◇
「皆さん、おはようございます。では訓練を始めましょう。最初は戦いはどんなものかを知る事から始めますよ。練習場を上手く使って下さい。私はここを動きません。私が膝を着いたら皆さんの勝ちです。簡単ですね。では始めてください」
「ヒュッヒュッ」「八ッ…ハッ…」「た…す…」「くる…し…」「グッ…」
「皆さん、どうしました? 防御や攻撃をして下さい。おやおや…。んーはい、もう皆さんは死にました。窒息死です」
「「「ハアーーーーッ ハアーーーーッ」」」
「では次行きますよ」
「いやぁー----」「キャーー」「やめろー-」「くるなー-」「何なんだよ!」
「ほら、皆さん攻撃してください! どうしたんですか? 動けないんですか?」
全員の額に何かが当たった。
「はい、また皆さん死亡ですよー、額ですから致命傷です。頑張って攻撃してみて下さいね。次いきますよ」
5人は一瞬で深い穴に落ちた。叩きつけられなかったのは優しさなのか、本当に殺してしまってはまずいからなのか、最早分からない。
「大丈夫ですかー? 深すぎて見えませんけど。皆さん転落死ですよー。死んでばっかりですねー。そこから出てきてくださいねー」
◇
「出る前に作戦を練らないと。これでは攻撃も出来ない」ドミニク王子が息を整えながら話す。
「でも、行きますよって言った瞬間にはもう終わってしまってますわ」キャサリンが事実を述べる。
「行きますよを、気にしなくていいんじゃないだろうか?」セインが喉に手を当てながら思案気に言った。
「セイン、どういう事だ?」
「神官様は一番最初に『では始めて下さい』と言っただろ? 僕達が死んだとしても、神官を倒すまで続く訳だから継続中な訳だよ」
「そういうことか、勝手に俺達は合図を待ってたって事か」クロードが合点がいったと言わんばかりに声を張り上げた。
「だから、その前に仕掛ける。ここから索敵で位置は掴めるだろ? 索敵と風、土、火を組み合わせて、ここから攻撃するのはどうかな?」
セインの問いかけにドミニク王子が答える。
「一旦やってみよう。しかし穴に籠りっぱなしなのは危険だから、組み合わせて攻撃したらセインの土魔法で上まで出られるか?」
「ああ、上に出たら二手に分かれよう」
「外に出たら俺とエマは神官に暗闇をかけ続けるよ」クロードもやる気の姿勢を見せた。
「「それがいい」」セインとドミニク王子が賛成する。
「ドミニク、砂利を沢山出すから、風魔法で砂利を神官目掛けて打ち込んでくれ。キャサリン嬢はそれに火を乗せられるだろうか?」
「やってみますわ!」
「みんな反撃開始だ!」ドミニク王子が皆を鼓舞した。
エマとキャサリン、クロードとドミニクとセインが組んで穴の中から攻撃を仕掛けた。
すぐにセインの土魔法で岩を盛り上げ外に出て二手に分かれた。
神官様は涼しい顔で立っている。神官の周囲が暗闇になった。
盛り上げた岩を砕き、その砂利をドミニクが吹き上げ、神官目掛けて打ち込んだ。その砂利からボボボっと火が噴いた。
「ドミニク! キャサリン嬢! 2人の合わせ技を打て!」
行けるかと思った火の砂利は神官様の周りで全て落とされてしまった。水なのか?
「エマ嬢! クロード! 離れろ!」セインが叫ぶ。
逃げられないように土壁を神官様の周りに作った。これでダメならさっき神官様から受けた攻撃と同じ攻撃を返そう。
青い爆炎が頭上から落ちてきた。
皆が神官様死ぬなっと思った。流石にやりすぎだったかと。
しかし、青い爆炎は神官の頭上で見えない何かに弾き返された。僕は神官様の真下の地面に穴を開けた。確かに開けたのに神官様は普通に立っていて、にこにこしている。
「クロード! 暗闇を頼む!」ドミニク王子が叫ぶ。作戦を立て直すために、走りながら合流した。考えろ! 考えろ!
「あれは、結界でしょうか? でもどの魔法を組み合わせてるのか…」キャサリンが弱弱しく呟いた。
「そもそも神官って聖魔法じゃないのかよ!」クロードが叫ぶ。
「クロード、落ち着け。セイン穴を開けたよな? 何故落ちなかったと思う?」
「わからない…。同じ質量を補充したとしか考えられない」
「キャサリン、暗闇と火を組み合わせられないかな?」エマがキャサリンに問いかけた。
「やってみましょう」
暗闇の中、炎が上がっている。しかし次の瞬間、暗闇も炎も霧散してしまった。
◇
「僕とキャサリンの合わせ技が有るだろ? あれにエマ嬢とクロードとセインも合わせよう。もうそれしか思い浮かばない」
「わかった」3人が返事をした。
陽動で火の砂利を降らせつつ、タイミングを合わせて2人の合わせ技に暗闇と岩を乗せた。
溶岩が物凄いスピードで落ちてきた。自分たちを守るの為に土壁を作ったが大丈夫か? 物凄く熱い。
溶岩は神官様を避けて地面に溜まっていく。
「まずい、逃げよう! 溶岩で焼け死ぬぞ!」セインが叫び全員で走って練習場から森の中へ逃げ込んだ。
「エマ嬢、クロード、索敵無効とか、索敵返しみたいなのって出来ないのか?」セインが尋ねる。
「考えたこと無かったけど、索敵混乱なら今出来るかも」エマが自信なさげに答える。
「あの神官何なの? 全部の魔法を使えるの? それ以上?」クロードが叫ぶ。
「もう、余力が無いですわ」キャサリンが息も絶え絶えに口にする。
「みんな、もう結構限界だよ、出来る事って言ったら物理攻撃しか残ってないな」セインが呟いた。
魔法力が枯渇した場合の為に剣や弓等を使えるように訓練させられている。
ただ、弓も剣もナイフも無い。
「いい感じの木の枝を探すしか無いんじゃないか?」
ドミニク王子の案を聞いたセインがしばし考え作戦を提案する。
「エマ嬢とクロードは暗闇を頑張って欲しい、僕は陽動で投石するから、ドミニクとキャサリン嬢は風魔法と火魔法で少しでも威力を上げて、突っ込むのはどうだろうか?」
「石を当てないでくれよ」
「大丈夫だ」
木の枝を探し、ドミニク王子が風魔法を使って剣のように鋭利に加工した。
ドミニクとキャサリンが配置に着いたのを確認して、暗闇を発動させ投石を開始しした。
突っ込むタイミングは2人の判断だ。
「キャサリン、僕が先に行く。君は僕に隠れるように付いて来て欲しい。そして時間差で攻撃を入れて」
「わかりましたわ」
ドミニクが暗闇の中の神官様の位置に上から斬り込んでいく。その後をすかさずキャサリン嬢が突き刺した。
「捕まえた」
それはあっという間の出来事で、木の枝をひょいと躱して関節技をかけ、木をロープに変えてドミニク王子を拘束、キャサリン嬢も躱され同じように拘束された。
「皆さん楽しそうで何よりなんですが、私が飽きてきてしまって、さあどうしましょう。私は神官ですので回復ができますから、ここでこのお二人を切り刻みましょうか、それとも木の枝で突き刺す? 炎で焼く? どれがいいですかー?」
◇
「今、神官の周りには結界とか何も無いと思うんだ。僕が投降するふりをして神官の前まで行くから、その時に暗闇を使って欲しい。その後ろからクロードは神官を突き刺してくれ」
「だったら、怪しまれないように3人で行こう。エマ、一番後ろで暗闇を頼む」
「うん、わかった」
3人は両手を上げて神官に近づいて行った。神官は相変わらずニコニコしている。
神官の目の前に来た時、暗闇が発動した。すかさずクロードが神官を突き刺す。僕は掴みかかったが、簡単に投げ捨てられてしまった。クロードもだ。
エマは回し蹴りをしたが、躱されて投げ飛ばされてしまった。
「皆さん、戦う事がどういう事なのか、少しは分かりましたか? 今は力も無い、派生させた魔法も無い、合わせ技も殆ど無い、連携が取れて無い、情報が筒抜け、防御も攻撃も出来ない。今の皆さんは、ざっとこんな感じです。思い付いた魔法を実行する事はいい事ですよ。そこは素晴らしかったです。後、最後迄戦ったのも偉かったですね」
「神官様は全魔法使えるのですか?」
「クロード様。実践訓練中ですからね、教えませんよー。さて、ちょっと休憩しましょうか」
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