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詐欺メイク、そしてピンクの髪色の女性がいた!?

ゆるふわ設定でお届けします。


何卒ご容赦くださいませ。


ご都合主義です。


楽しんでいただけたら嬉しいです。

「お嬢様、起きてくださいませ。嫌なのは承知しておりますし、私も嫌ですが、本日は神殿に行く日でございますよ」


「わかったわ。起きるわ…」


「本日のような日は突発的出来事が起こる可能性が高いので、お嬢様の魅力を半減させ、記憶に残らない、どこにでもいる令嬢メイクにしましょう」


「んん!? ええ…。お願いするわ」


「ドレスはこちらに」


「こんなドレス持ってたかしら?」


 それは何の特徴もない、かといって地味でも派手でもなく、さほどシンプルでも無く無難という言葉がぴったりなドレスだった。


「ご用意いたしておりました」


 鏡を見ると、自分で見ても、誰だか分からない、ぼんやりとした令嬢がそこには映っていた。


「相変わらずマーサのメイクはすごいわ。メイクだけではなく色々と凄いのだけれどね!」



 ◇



「さっきの、お父様とお母様のお顔ったら、面白かったわね!」


「何度もミシェル様かと確認されていましたね」


「フフフフフフ みんなにも見せてあげたいわ」


 私は馬車から街並みを眺めていた。


「マーサ、帰りに買い物がしたいわ」


「かしこまりました」


 神殿に着くと、魔法を賜った日に比べ多くの花が咲いていた。1ヶ月もたてば花も咲くわよね。


 中に入っていくと、神官が出迎えてくれた。


「ようこそミシェル様」


「ごきげんよう神官様」


「本日は中庭で、聖魔法をお教えさせていただきますね。ミシェル様は既に浄化魔法を習得されたご様子」


「それは鑑定魔法なのですか?」


「学園でのご活躍は聞いておりますよ」


「あっ! あぁ…」


「フフフ そんなに、がっかりなさらずに。基礎の回復魔法を見せていただけますか」


 中庭のガゼボにはお茶やお菓子がセッティングされてあり、そこに枯れた花や萎れた花が置いてあった。


 私は、全てが元通りの活き活きした状態を思い描く。そして全ての花を持って力を放出した。


「素晴らしいですね。枯れた花まで元通りです。少しばかり、力を制御する訓練をしてみましょうか」


「力を制御ですか?」


「フフフ周りの花々を見てください。どれも輝きが増しています。ミシェル様は魔法を使う際に、対象の周辺にも魔法が漏れています。漏れているというよりは範囲が広いと言うべきでしょうね」


「お腹に集めて放出されている力がありますね。その力を両手に移動させて、対象の物だけに、その対象を形成していくように伸ばすような感じで。もう一度やってみましょうか。

 とは言え、全ての花が元気になってしまいましたので。そうですね…」


 神官様はお菓子の上に手をさっと翳した。お菓子が粉々になってしまった。


「ああ、申し訳ありません。そんな悲しそうな顔をしないで下さい。ミシェル様なら、元に戻せますよ。先ほど言った通りにやってみて下さい」


 お腹に集めた力を両手に移動させてくる。対象の物だけを形成する。クッキーとマカロン。神官様許すまじ。


「雑念が入っていますよ、集中しましょうね」


 神官様は軽く手を翳すだけだったわ。再現力、具現化が大切って事? 記憶力も大事になってくるわよね? クッキーとマカロンの粉々になった色から元の形を思い出し、繫がるように手から力を軽く出し伸ばしていく。ふんわりと光ってクッキーとマカロンは元通りになった。良かった。

お菓子を粉々にするなんて悪徳神官に違いない。


「良く出来ましたね。もうお菓子ではやりませんよ。許して下さいね。ミシェル様はこの制御を身に付けましょうね。疲れたでしょう? お茶とお菓子をどうそ」


 帰りに神官様はお菓子を包んで持たせてくれた。


「ねえ、マーサ。やはり神官様のようなシルバーの髪で綺麗なアイスブルーの瞳でキラキラ系のかっこよく、物腰も柔らかな男性って執着系のあれなの?」


「それは、まだ分かりません。まさかお嬢様、神官様に?」


「違うわよ。お菓子を粉々にしたから」


「そうですね、仕方無かったとは言え…。ですが、お花を踏みにじるより、ティーカップ等を割るより良かったかと存じます」


「それは、そうね」


 私達は街の中の道具屋に向かった。薬草を採るのにバスケットを持っていったのだけれど、今後の事を考えると機能性の有る物を選びたかった。


 私はウェストポーチ、ショルダーバッグ、リュックとナイフを購入した。


 道具屋から出て、昼食を食べて帰ろうと話し、大通り沿いにあるレストランへ入った。


「私も風魔法のように、離れてる人と会話が出来るようになりたいわ」


「会話したい人でも、いらっしゃるのですか?」


「便利だなって思って」


 メインの魚料理を食べ終え、デザートを待っていた時だった。窓の外にピンク色を見た気がしたのだ。


「マーサ! 今、見た? ピンクの髪色の女性が歩いていた気がするわ」


「そんな…。それでは、ここで少しゆっくりしましょう」


「ええ、そうね。マーサみんなに」


「分かっております。大丈夫ですよ」


『ミシェル様が大通りのレストランで食事中に、ピンクの髪色の女性が歩いているのを見かけられました。皆様、家から出られぬ様ご注意くださいませ』


 帰宅後、私は書庫へ行き、何かないか手当たり次第、引っ張り出していた。


 マーサの言っていたピンクの髪色の女性がいたのだ。この国では、大抵、金髪、銀髪、茶髪、その中で更に色が濃かったり薄かったりする。


 焦らずにはいられない。何かないかと、本を手に取るが直ぐに使えそうな魔法は見当たらない。


 次に手に取った本は刺繍の本だった。


『刺繡に込められた意味 ~意匠から紐解く伝統の加護の魅力~』


 その本には、健やかに子供が育つようにと願いが込められた刺繍が載せられており、その意匠を分解して健康、安眠を示す加護文字について解説してあった。


 読み進めると、戦地へ赴く伴侶へ送ったマントに刺した刺繍が、防御、回復、変わらぬ愛であり、解説もあった。


 相手の為に、施された刺繍の加護により、防御、回復力が上がる。変わらぬ愛と言うのは、生還率を上げるのだろうと。


『これらの加護文字の刺繍は決して高い威力を持っている訳ではない。伝統的に伝えられてきた、簡単なお守りの魔法のような物である』と書かれていた。


 これは使えるのではないだろうか?


 私は本を部屋に持ち込み、防御と回復の意匠を下書きし、裁縫道具を用意し回復魔法を使いながら、一針一針刺していった。


 複雑な意匠では無い物の、回復魔法を使いながらと言うのは、疲れるし、結構時間が掛かってしまった。効果の検証は学園でやるとして、少しだけ休もう。既に外は白み始めていた。


「お嬢様、お嬢様! 起きて下さい! まあ、酷いクマですこと! 夜更かしをされたのですか?」


「ええ」


「朝食は簡単な物にしましょう」


「ありがとう。マーサ、このハンカチ、あげるわ。刺繍をしてみたの。防御と回復の簡単なお守りのような物だけど、効果はまだ分からないわ」


「お嬢さま…これは。ありがとうございます。肌身離さず持ち歩きます」


「うれしいわ、ありがとう」


「本日はセイン様が迎えにいらっしゃいます。お仕度をしてしまいましょう」


「何ですって!?」


「レストランで連絡を入れた後に、ドミニク王子からクロード様はエマ様と、セイン様はミシェル様と登校するように。これからは最低でも、必ず2人で行動するように、と連絡がございました」


「教えておいてよ…」


「お忙しそうでしたので」



 ◇



「おはよう、ミシェル嬢。……顔色が良くないが、体調が優れないのか?」


「おはようございます、セイン様。ただの睡眠不足ですので、お気になさらないでください」


「馬車の中で、少し眠るといい」


「いえ、そのような事は」



 馬車には、もちろんセイン様の従者も同乗している。セイン様は涼やかな眩し気な目をしているのに対し、従者の方は鋭い目をしていた。



「お嬢様、お嬢様、学園に着きましたよ」


 ゆさゆさと揺さぶられて目を覚ました。


「ん? マーサ? ……はっ!!」


 やってしまった…と後悔したのは言うまでもない。


「おはよう。さっきより、少し顔色がましになったね。良かった」


「お見苦しいものを、お見せしてしましました。申し訳ありません」


「気にすることなんて、何もないよ」


 私達はそのまま図書館へ向かった。図書館へ行く途中でエマとクロードに会ったが、2人からも顔色の悪さを指摘されてしまった。


 図書館に着くと、既にドミニク王子とキャサリン様がいらっしゃっていた。



 そして、私たちは場所を禁書庫へ移した。禁書庫は学長、学長の許可を貰った者、王族しか入れない。防音になっているのも都合がいい。


「ミシェル様、顔色が悪いですわ。お休みになられた方がよろしいのでは?」


「キャサリン様、お気遣いありがとうございます。ただの寝不足ですので大丈夫です」


「さて、ピンクの髪色の女性対策についてだ。今後はこのペアで登校し、学内でも我々で固まって行動しよう。一人になる事は避けたい。

 女性しか入れない、男性しか入れない場所の時は、適宜入れ替わり一人にならないように。他に何かあるだろうか」


「効果はまだ検証していないのですけれど、防御と回復の簡単なお守りのような物を作ってきました。皆さんどうぞ」


「刺繍をしてくださったのですね! ありがとうございます! ミシェル様」


「有難く使わせてもらうよ、ミシェル嬢」


「ありがとうミシェル」


「ありがとなミシェル」


「これは、嬉しいな。ありがとう、ミシェル嬢」


「変わらぬ愛と言う刺繍も有りましたので、その意匠はキャサリン様に、お教えいたしますわ」


「ミシェル。私にも教えてね」


「エマは好きな人がいるの!?」


 鈍すぎるだろうと皆が思った。


「セイン、君の道は厳しそうだな」


「ミシェル嬢、僕は、君から変わらぬ愛の刺繍を入れたハンカチを貰いたい。どうしても」


「えっ? 私のですか? 変わらぬ愛の刺繍ですよ? ……。もしかしたら魅了抵抗が有るかもしれませんものね!」


「マーサの講義と対策会議が無かったら、全く気付けなかったな」


「ああ、全くだ。1ヵ月後の基礎・初級実践テスト前に動き出す可能性があると考えるべきだろうね」


 セインは、とても大事そうに、ハンカチを胸のポケットにしまいながらドミニクに返事をした。


「そろそろ、授業が始まりますわ」


 キャサリン様の一言で、後は昼食時に相談する事にして、教室へ向かった。


 直後に全員が凍て付く事になるとも知らずに。

最後までお読みいただきありがとうございました(*'ω'*)


是非ブックマークや★★★★★で応援していただけると励みになります。


よろしくお願いいたします(*- -)(*_ _)ペコリ

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