シャルマ学園に入学。学園は王族や貴族だらけなので侍女は心配している
ふんわりちゃっかり設定で2話目です。
楽しんでもらえたら嬉しいです。
私達は学園に入学し、今は、全員で基礎についての授業と、それぞれの属性魔法に分かれての授業を受けている。
属性によっては人数がいなかったりするので、その場合は他属性と合流となったり、個人授業になったりする。
基礎が終わると、初級を習得し、中級以上になれば、他の属性魔法と協力して。新たな魔法を作り出す実験が出来る。大抵は既出であるが。
そして中級以上からは、色々魔法を派生させたりする事も出来る。
それまでは、地道に頑張るしかない。
私は幼馴染のエマとクロード、そして神殿の一件以来、仲良くなった、キャサリン様と勉強する事が殆どだった。
そうなると必然的に、キャサリン様の婚約者であるドミニク王子も加わる事になった。そしてドミニク王子の友人で、公爵家ご子息のセイン様も加わり、大変有意義な時間を過ごしていた。
そんな充実した時間であっても、私は物足りなく、心にぽっかりと穴が開いたような気分だった。どうしても、草魔法に未練があって、草魔法を使える人を探していた。
しかし「残念ながら、今期の学園には、どの学年にも草魔法の者は、在籍していません」と言われてしまったのだ。
私が盛大な溜息をつくと、エマが笑って「その内、見つかるわよ」と言ってくれた。
セイン様が少し考えてから、「ミシェル嬢は薬を作りたいのだろう? 薬魔法で無くても、新たに薬を作る方法を考えた方がいいのではないだろうか」
「セイン様、それはどうやって?」
「難しく考える必要は無いと思う。薬草図鑑を見ながら、薬草を集めるところから始めたらいいじゃないか。そこに、自身の聖魔法を流し込んでいく。上手く行くかは分からないが、実験しない事には先に進まない。それにエマ嬢とクロード」
「え、はい? 私ですか?」「ん? 俺?」
「闇魔法は極めると口寄せが出来るだろう?」
「や、やや、セイン様、恐ろしい事、考えないで下さいませ!」エマがあわあわしていた。
◇
翌日の授業後に、私達は分かれて勉強をする事になった。
クロードとエマは闇魔法なので、2人揃って学園の敷地内にある森で闇魔法を試しに行った。
闇魔法の初級は、ただ辺りを暗くするだけだが、暗闇は中々に怖い。中級以上になると索敵やセイン様の言っていた、口寄せが出来るようになる。
ドミニク王子とキャサリン様は、練習場で、風魔法と火魔法を組み合わせて、使ってみるそうだ。
私は、セイン様が薬草図鑑を持って来てくれたので、エマとクロードと同じ森で、暗闇に対抗しながら薬草を探していた。
「ミシェル嬢は、何故、聖魔法を嫌がるのだ? 薬を作るのと、回復や浄化は同じ医療のカテゴリーに感じるが」
「搾取されるからです」
「搾取? どういう事だ?」
「聖魔法を使って、回復や浄化を行って聖女になったら、ひたすらこき使われた挙句、捨てられたり、断罪されたり、最悪処刑されるのです」
「何だって? 一体どこでそんな話を聞いたんだ? そんな事が起こっているのか?」
「侍女が貸してくれた小説に、書いてありました」
「侍女が貸してくれた小説」
「はい」
「この国では…その様な事は、まず無いから安心するといい」
「いいえ、そんな言葉には騙されません。小説にも書いてありました。そういう甘言に唆されて、搾取されてしまうんです」
「グフッ いや、では契約書を作成しては、どうだろうか?」
「契約書? 読めないような文字で、詐欺まがいの事を書いてある契約書ですね! 奴隷契約書だったなんてこともあり得るそうですわ!」
「待ってくれ、一体、君の侍女は、どんな小説を読ませてるのだフフフッ」
「搾取や断罪、処刑に備える本ですわ!」
「あ、うん。わかった。ミシェル嬢の聖魔法としての回復や浄化は、薬を使うのと似ているだろう? もちろん薬草を探す事や、新たに薬を作る事に、全面的に協力する。
だから、僕の土魔法に協力してもらえないだろうか? 対価はきちんと、しっかり支払うと約束する。搾取なんてしないし、こき使ったりしない。
契約書を作成してミシェル嬢の望み通りにしよう。もちろん読めないような文字等、書いたりしない。どうだろうか?」
「……。そうですね、断罪や国外追放、処刑をしないと契約してください」
「ブフッそんな事する訳ないよ。いや、もちろん契約するよ! 君の侍女には、僕も小説を借りた方がいいのだろうかクハハハッ」
その時、地面が大きく揺れ。爆発音と共に爆風が襲ってきた。
セイン様は、咄嗟に私を抱えこみ、土魔法で土壁を作り、私を守って下さった。
爆風が収まり、不安に駆られていると、ドミニク王子の風魔法で声が届いてきた。
『怪我人がいたら、至急知らせてね。土魔法の人達は、練習場に集まって欲しい』
「セイン様、ありがとうございます。一体、何があったのでしょう。エマとクロードは無事でしょうか…あっ申し訳ありません! 私は全く動く事が出来ませんでした」
「気にする事では無いよ。まだそのような訓練は受けていないのだから。ミシェル嬢が無事で良かった」
辺り一面、砂埃で何も見えない。
「ミシェル嬢、ここで浄化を使えるかな? もちろんエマとクロードの無事を確認する為だよ」
「え、ええ、それは使えると思いますわ…」
とは言え、浄化は中級だ。成功するだろうか。冷汗が流れる。
「大丈夫、ここに力を集中させて」
セイン様が後ろから抱えるように私の腰に手を回し、お臍の辺りに手を置いた。
「息を細く長く吐いて、どんどん力を集めて。そう、もう出来るはずだよ。大丈夫」
私は森の中を浄化するイメージを思い描いて、浄化の力を放出した。
辺りが、眩く光り、澄み切った空気が広がっていった。
「成功だ。よく頑張ったね」
砂埃が消えて、綺麗な森に戻っていた。
◇
「ミシェルー! セイン様! 良かった無事で!」
「エマー! クロード! 良かった! 怪我が無くて!」
「セイン、一体、何が起こったんだ? 王子が練習場に集まって欲しいって言ってたけど」
「大方、魔法が失敗と言うか、思いの外、威力が凄かったのだろう」
「何て傍迷惑なバカップル!」
「「クロード!!」」
「私たちも練習場に向かいましょうか。ん? 何ですの? エマ、クロード」
「あなた達、いつからお付き合いしだしたのかなーって」
エマとクロードは、ニヤニヤしながら私達を見ている。
「はぁ!? あっ、これは、あなた達を助ける為に! 違うのよ!」
私はセイン様に手を回されたままだったので、後ろから包み込まれる感じになっていた。
「ふーん? まあ、そういう事にしといてあげるわ」
◇◇◇
練習場に着いたら、隕石でも落ちたかのような、巨大な穴が開いていた。
「よく来てくれたね! ちょっと直すのを手伝ってほしいんだ」
「帰りましょう」
「ミシェル嬢!?」
「これは奴隷の始まりですわ! 早く逃げないと! 一生虐げられて、鞭打たれて、働かされるのですわ!」
「「「ブフフフフフッ」」」
「セイン頼むよ!」
「セイン様! 奴隷にされてしまいますわよ!」
「いや、ミシェル嬢!?」
「キャサリン様! あなた様は、聖女におなりになるのではなかったのですか? 悪行に加担するなど!」
「ミシェル様!? 何か誤解をされていると思うの。これは聖女になるために、私の火魔法とドミニク王子の風魔法を合わせたら、想定外の威力が出てしまいましたの」
「そうでしたの! 青い炎の聖女姿を見たかったですわ! では、ごきげんよう」
「ミシェル、大丈夫よ。小説のようにはならないわ」
「エマ。本当? (だって王子よ。小説では大抵身分が上の者が唆すわ)」
「アハハハハハハ ドミニクこれはミシェル嬢と僕からの貸しだぞ! ミシェル嬢は砂埃を浄化しているからな!」
セイン様はあっという間に練習場を直してしまった。
「ここは魔法防壁があるはずでしょう?」
エマが元通りに戻った練習場を見回して呟いた。
練習場は万が一に備えて、その広大さにも関わらず、地面から壁、空にまで魔法防壁か掛けられている。
「キャサリンと私の愛の力が強すぎたのだろう」
「……エマこれは、みりょ」
「ミシェル、大丈夫よ。ドミニク王子は、惚気ていらっしゃるだけだと思うわ」
「エマ嬢、聞きたいのだが、ミシェルの侍女は、一体どのような小説を読ませてるのだ? 少々偏りすぎてはいないだろうか」
「セイン様、ミシェルの侍女はとても優しいのですが、異常なまでに心配性でして…そうだわミシェル、近いうちにあなたの邸に集まりましょうよ、勉強会も兼ねて」
「エマはいつものように、遊びに来ればいいのに。そうね、今回は皆さんもいらっしゃいますから、日程を調整しましょう」
「早速だが、明日はどうかな?」セインの食いつきがすごいとミシェル以外が思った。
「私は、明日で大丈夫ですわ」
「俺も、大丈夫」
「私も、問題ないな。キャサリン、君は? 大丈夫なら迎えに行くよ」
「ええ、私も大丈夫ですわ。是非、お伺いさせて頂きたいですわ」
「では、皆さま、明日は、1日集中勉強会ですわね。午前中からいらっしゃってくださいね!」
「「「1日集中勉強会」」」
「何というか、向かう方向が時々ずれるのよね、ミシェルは」
「いつもの事だろう」
「明日、楽しみにしていますわ」
「ああ、キャサリンと出かけるのは楽しみだね」
「エマ…」
「大丈夫よ…」
最後までお読みいただきありがとうございました(*'ω'*)
是非ブックマークや★★★★★で応援していただけると励みになります。
よろしくお願いいたします(*- -)(*_ _)ペコリ
ブックマーク、★★★★★、いいねがとっても嬉しいです!ありがとうございます!