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火魔法の令嬢が聖女になっても、いいじゃありませんか!

ゆるふわ設定でお届けします。

何卒ご容赦くださいませ。

ご都合主義です。


楽しんでいただけたら嬉しいです。

ヴェッタシュトランド国では15歳になると神殿で魔法を賜る事が出来る。


 これは家門等は関係なく、神が無作為に魔法を授けるのだ。


 その為、家族であっても魔法の属性に統一性は無い。どの魔法の属性も、神より賜る尊き力である事に変わりはない。




 15歳になると、シャルマ学園への入学許可が下り、入学式の1ヵ月前に神殿に招聘される。


 それなりの学費なので、神殿からの招聘を受け、魔法を賜った後、シャルマ学園への入学希望者は貴族や豪商の子女が殆どとなっている。



 魔法の賜り方は、両手を差し出し、神官が神殿の泉より汲んだ聖水を、その両手に注ぐ。そうすると、聖水はその様を、魔法の形態に変え、そしてふんわりと消えていく。


 それはとても幻想的な瞬間である。


 例えば、火魔法であるなら、聖水が両手の中で『ぽぅ』っと炎に変わり、漂うように、そして消えていく。


 その炎の色や消え方は、人により、それぞれ異なる。



 ◇◇◇



「よろしいですか? お嬢様。何度も申し上げてます通り、多くの人達が集まる時は、特に気を付けなくてはなりません」


「ええ、分かってるわ、マーサ」


「こういう時、不当に罪を着せられたり、断罪されたりするのです」


「目立たず、騒がず、ひっそりと。特に格上の貴族とは、目を合わせてはなりません。まして異性などと、口をきいた暁には、婚約者に手を出したと、断罪され修道院へ送られるのです」


「え、ええ」


「それから」


「ピンクの髪色の令嬢を見かけたら、すぐに逃げる事、でしょ?」


「そうです。とても大事な事ですので、忘れずに」


 マーサは私が7歳の頃からの、私専属の侍女だ。何故こんな物騒な事をマーサが言うのかと言うと、最近流行りの小説の、断罪シリーズにはまっているからだそうだ。


 以前は普通の王道恋愛小説を読んで、楽しくおしゃべりをしていたのに。私が幼かったせいもあるのだろうけど。


初めは、聞き流していたのけれど、毎日言われると、気を付けなければと言う気持ちになるのだから、習慣ってすごいわ。


「マーサ、心配しないで。私が草魔法を賜れる事を祈っててね! 聖魔法なんて賜ったら搾取され、断罪、悪女になるのでしょう?」


 2人で笑いながら支度をした。



 ◇◇◇



 幼馴染のエマとクロードと共に、神殿に到着し、中に入って行くと、賑やかな会話が聞こえてきた。



「公爵令嬢であるキャサリン様は、絶対、聖魔法に決まってますわね!」


「第一王子の婚約者ですもの、当然ですわよ!」


「ええ、私も、そうであれば良いと、願っておりますわ」



 キャサリン様のご友人の(きっとマーサに言わせると取り巻き)ご令嬢が、ここぞとばかりに騒いでいる。


 私は、列の後ろの方から、神殿の天井を眺めていた。無関心、無表情を装う私は、態度とは裏腹に、これから始まる儀式に、心を躍らせていた。


 どうか、私の魔法が、草魔法でありますように! そう心の中で祈っていた。


 草魔法は初級では、名前の通り草を育てる事が出来るだけだ。しかし、徐々に習得を進めていけば、植物の鑑定、蔦や棘等をつかった攻撃、そして一番私がやりたい事、それは色々な薬を作れるようになる事。


 楽しみでしかない。順番が待ち遠しくてワクワクしてしまう。





 ◇◇◇





 第一王子のドミニク様が颯爽と神官の前に歩み出て、恭しく両手を差し出した。


 注がれた聖水が、両手の中で『ぽぅ』っと明るく光り、そのまま心地よい黄金の風を神殿の中に届けた。



 公爵家のセイン様は、両手の中から大きな岩のような宝石が出来て消えていった。


 次々と皆が魔法を賜っていく。その光景は、とても美しく、現実離れしていた。



 キャサリン様の両手からは、とても美しい幻想的な青い炎が立ち昇って消えていった。


 私は、何て美しいのだろうと感激をしていた。今までの誰よりも、美しく荘厳だった。それは第一王子よりもである。


 しかし、キャサリン様には違ったようだ。


「な、な、なんですって!? 私が火魔法だと仰るのしょうか? 神官様、何かの間違いではないのでしょうか?」


「いいえ、キャサリン様。貴女は神から、火魔法を賜ったのです」


「そんな、そんな訳は、無いはずですわ! もう一度、聖水を注いでくださいませ!」


「キャサリン様、神を否定してはいけませんよ。キャサリン様の火魔法は、稀にみる素晴らしい魔法でした。精進なさってください」


 キャサリン様は真っ青になって、友人達に支えられていた。


 幾人もの魔法を賜る瞬間に感動していたら、私の前にいるエマの番になった。


 エマは両手を差し出し、注がれた聖水は『ぽぅ』っと神殿の天井を星空の様にした。


 エマは楽しそうに「闇魔法よ!」と私に向かって笑顔で言った。


「おめでとうエマ! 素敵だったわ!」 


「ありがとうミシェル! 次はミシェルの番ね」


「うん。絶対に草魔法のはずよ」


「出たわ。ミシェルの根拠の無い自信。行ってらっしゃい」


 漸くだわ! 私は両手を差し出した。その瞬間を見逃さないように。草魔法が出る瞬間を、この目に焼き付ける為に。


『ぽぅ』っと光った聖水は、どこまでも光り続けて、大きくなり、神殿内にいる人達に光を降り注いで、消えていった。


「ミシェル様は聖魔法を、賜ったのですね。神殿でも聖魔法の使い方を、お教えしましょう」


「あ…りがとうございます…」



 ツカツカツカ



「ミシェル様! あなた一体何をやりましたの!? 何故あなたが、聖魔法を賜るのですか!」


「キャサリン様、それは、私にも分かりかねます…」


「本来なら、私が聖魔法を賜り、聖女になるはずでしたのに! あなた、何をしたのですか?」


「いいえ、キャサリン様、私は、本当に、何もしておりません」


「伯爵令嬢ごときが聖女だなんて!」


 私だって、草魔法が欲しかったのよ! 今とっても悲しいのよ!


「何か仰ったらどうなんですの? やましい事が有るから、何も言えないのではなくって!」


 これは、もしやマーサが言っていた断罪!? ああ、聖魔法を賜ったから処刑されてしまうの? どうすれば? マーサは何て言ってたかしら?


 目を合わせるなとか、目立つな、騒ぐなとか、もう全てが遅いわ!


「黙っていないで、何か仰ったらどうなのですと言っているのです!」


 断罪なんてごめんだわ! ん? キャサリン様は、火魔法だから聖女になっても搾取されず断罪されないのでは!?


「聖女に、聖女に、おなりになれば、よろしいではありませんか! キャサリン様が、聖女におなりになればよろしいのですわ!」


「あ、あなた、一体、何を言っているの…?」


「聖女になりたいのでしょう? 火魔法でも、よろしいではありませんか!」


「聖魔法ではないと聖女ではないでしょう! あなた、私を馬鹿にしているの?」


「一体、誰が決めたと言うのです? 聖魔法だから聖女だと。火魔法の聖女、素敵ではありませんか! 先ほどのキャサリン様の火魔法は、それはそれは美しく荘厳でした! 火魔法を極めれば、爆炎で国民を守れるではありませんか! (知らないけど) 更に極めれば炎幕で結界を張り、聖女よりも聖女らしいではありませんか! (知らないけど)」


「え、ええ?」


「素晴らしい事ではありませんか! 青い炎の聖女! 美しく、かっこいい事ではありませんか! 聖女になりたいのであれば、それ位の気概をお見せ下さいませ!」


 草魔法じゃなかった上に、絡まれたのだから、ちょっと勢いが止まらなくなってしまった。


「私は、そんなキャサリン様の、素敵で美しく、凛々しい青い炎の聖女が、この国で活躍している所が見たいですわ!」


「そんな前例など…」 


「キャサリン様が、お作りになればよろしいではありませんか! 聖女に、おなりになりたいのでしょう?」


 

 あの令嬢の威勢のよ良さは、まるでアレンの子犬の時の様だなと、セインは笑ってしまった。



 令嬢の黄色い悲鳴が聞こえた。



「わ、私は聖女として、王子のお役に立ちたいと…幼少の頃より思っていたのです。ですが火魔法では…」


「むしろ、火魔法で良かったではありませんか! お役に立てるではありませんか! 火魔法の聖女いいではありませんか! 世の中に火は必要不可欠ですわ!」



 カツン、カツンと響く音が近づいてきた。



「僕が不甲斐な無いばかりに、キャサリンに、そんな思いをさせていたんだね。ごめんね」


「ドミニク王子…。そのお見苦しい姿を、お見せしてしまいまして、申し訳ございません」


「僕は、キャサリンが隣にいて、笑ってくれていたら、それでいいんだ。僕にとっては、キャサリンが聖女なんだよ」


 また黄色い悲鳴が聞こえた気がする。


「ミシェル様、その、つい感情的になってしまいましたわ」


「いいのです。私も言いすぎました。申し訳ありません。ですがキャサリン様が、青の炎の聖女になるのを応援しています!」


「不敬罪で捕まったらどうしようって心配してたよ! 本当にアハハハハ 君は変わらないな」


「本当よ! 心配したんだから! フフフ」


「クロード、エマ、笑いすぎよ」



 神官は、ただただ優しく見守っていた。



 後日、キャサリン様は、私の邸を訪れ、公爵令嬢だというのに、謝罪をされた。



「ミシェル様、神殿では、本当に申し訳ありませんでした。己の欲する魔法を賜れ無かったからと、あなたに酷い事を言ってしまって…」


「キャサリン様、私も言い過ぎました。申し訳ありません。でも、キャサリン様が、聖女になるのを本当に応援しています」



 マーサはお茶を淹れながら、じっと耳をそばだてていて、そして、すっと退室した。


 マーサには朝から、「公爵家のご令嬢が来るなんて、何をやらかしたんですか!」と叫ばれたのだ。



「私、聖女になれると思いますか?」


「なれない理由が分かりませんわ」


「恐れながら、こちらの本をご参考になされてはいかがでしょうか」


「マーサ!? あなたいつの間に戻ってきたの?」


「こちらは、聖女シリーズと断罪シリーズになります」


「聖女シリーズと断罪シリーズ」



 それからキャサリン様は、毎日のように遊びに来るようになった。私とマーサと小説を読んで、危機察知能力を身に着けようと言う、マーサの提案によって。


「私、悪役令嬢になる危ないところでしたのね」と断罪シリーズを少し読んだキャサリン様が呟いた。


「私は、とんでも令嬢になるところでした。いえ、もうなってるのかもしれません…」


 キャサリン様が悪役令嬢にならない為に、そして私が断罪されない為の勉強会。

という名目の楽しい時間を過ごしていた。


 そこに、エマとクロードが来る事も良くある事だった。




最後までお読みいただきありがとうございました(*'ω'*)


是非ブックマークや★★★★★で応援していただけると励みになります。


よろしくお願いいたします(*- -)(*_ _)ペコリ

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