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僕がすべてを差し出しても一緒にいたいと願い続けた彼女

作者: 初老喜多

 「これでどうだぁ!」

 僕は僕の持っているすべてと以前なら僕が想像すらできなかった「カミ」に授けられた

 本来ならこの世界には存在しなかった「チカラ」まで吐き出し

 絞り出すような思いで彼女に叩きつける


 これでダメなら僕にはもう手立ては何も残されていない


 



 彼女は何処か僕自身に似ている

 彼女は遠い遠い記憶の始まりから存在している

 彼女は気づけば僕のそばにいて

 

 何度離れても

 僕が僕のことを忘れてしまうほど時間が過ぎても

 気が付けばまたそばにいて


 僕たちは何度も溶け合うように暮らしてきた

 僕と彼女の境界が曖昧になって

 もしかしたら僕たちはそもそも初めからひとりだったんじゃないかと

 「僕たち」は「僕」だったんじゃないかと自然に思い込めるほど

 

 でも気が付けば僕はやっぱり僕ひとりで

 最初から僕はひとりだったんだと考える

 そう考えていたことも忘れていく


 であうたびに少しづつ何かが違う

 でも紛れもなく彼女はいつもの彼女で

 僕にはどこがどう違うのかさえわからない


 


 いつから僕と彼女は闘ってきたのか?

 僕と彼女はどうやって闘ってきたのか?


 そもそも何故僕と彼女は闘ってきたのか?


 僕にはもう思い出す力も残されてはいない。

 僕の意識は朦朧としていて何かを考えることも何かを感じることも、

 もう僕にはできない。

 ただボンヤリと、だけど切実に一つのことだけを思っていた。


 もう許してほしい。

 もう終わりにしてほしい。

 

 これ以上

 


 僕が狂おしいほど愛した

 僕自身のような

 僕自身より大切な

 僕が決して手放すことのできない

 僕の存在全てと引き換えにしても後悔することのない

 大事にしたくて守ってあげたくて

 そのために僕の記憶の最初から今の今まで頑張り続けてきた






 彼女を殺したくなんかない


 



 だって

 彼女は僕と双子のように似ている

 僕と彼女は何かが決定的に違っているけど

 でも僕自身だとはっきりわかる



 僕は彼女を愛している

 感じたり考えたりしなくても

 愛していることは当たり前すぎることで

 

 それなのに

 あぁもう終わりが近いんだ

 すべての存在が温度を失っていく

 すべての存在が色彩を失っていく

 すべての存在が動きを止めていく

 

 あぁもう一度彼女と寄り添いたい

 あぁもう一度彼女と触れ合いたい

 あぁもう一度彼女と溶け合いたい

 あぁもう一度彼女が僕自身だと感じたい


 彼女はいつものようにただ僕といる

 こんな時でも僕といてくれる

 覗き込んでも

 話しかけても

 手を差し出しても

 ただ僕と一緒にいてくれる


 彼女は幸せだったろうか?

 彼女はつらかっただろうか?

 彼女は何も言わないけれど

 やっぱり僕といてくれる


 彼女はなにも答えない

 ただいつものように僕といてくれる

 彼女はきっと僕と一緒に終わってくれるのだと信じられる



 あぁ終わりを感じる

 あぁ僕と彼女の終わりを感じる

 あぁ僕と彼女が混ざり合って

 あぁ僕と彼女が消えていく






 








彼女は CANSER CELL



 

 

 


 

救いのない勇者と魔王の話を書こうとしたら

お話を膨らませることができずにこういう形に落ち着きました


百億の昼と千億の夜の世界観をパクっているかも知れないことに今気づきました

萩尾望都先生ごめんなさい

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