99.リスタ、波乱を巻き起こす(通常運転)
俺、ノア・カーター!
何だか知らないうちに悪魔の軍勢を退けていたよ★
「どうしてこうなるんだよぉ~……ふわぁああん……」
カーター領の領主の館にて。
俺はベッドの上でゴロゴロしてた。
「やめたいよー、引退したいよー、帝王なんてやめたいんだよおぅうう」
毎日襲ってくる馬鹿の相手にくわえて、帝王としての仕事も地味に多い。
『大変っすねー』
ロウリィはベッドに寝そべって毛繕いしている。
完全に動作が猫である。
「なにその淡泊な感じ! 腹立つんですけど?」
『いやまあ人ごとですし、だいたい自業自得じゃないっすか。余計なことして大惨事起こすし』
「だってだってだってぇ~! うわぁあああああああん! もう辞めたい辞めたい仕事辞ーーーーめーーーたーーーーいーーーーー!」
『ああもう! そんなに辞めたいなら辞めりゃいいじゃないっすか。仕事放り出してさ』
むくり、と俺が体を起こす。
「で、でもぉ~……」
『でも? なんすか』
「だって仕事が辛くて帝王やめる……なんてやったら、どうなるよ?」
『前代未聞っすね。歴史の教科書に載るかも』
「でっしょ~? 俺はかっこ良く引退したいの!」
『厨二病が治らないっすねいつまでもあんた……』
そんな厨二病を病気みたいに言わないで!
「仕事をかっこ良く辞める方法ない?」
『ないっすね。マジで辛いなら逃げるのが得策かと』
「でもなぁ~」
『このまま帝国のイカレタメンツにかこまれながら一生働かされるのと、恥知らずの誹りをうけるけど引退するの、どっちがましっすか?』
リスタ、サラ、四バカ四天王……。
聖騎士、俺の弟子、娘(?)のリスコス……。
そんな奴らと死ぬまで一緒……?
「うん、引退すりゅ!」
『決断早っ! ま、そんなことも、好きっすけどね』
「ば、ばかおまえ……ばかっ、恥ずかしいじゃないか……ばかっ」
急にでれるなんて、この白猫やるな!
「俺、仕事全部放り投げてこの国からでてくけど、ロウリィ、俺と一緒に来てくれ」
『ば、ばか……ノア様……ばかっ、は、恥ずかしいセリフを……ばかっ』
ふっ、さっきのお返しだ。
くくく、うぶよのぉ。
「ま、冗談はさておき。とっととこんなやばい国からずらかろうぜ! あー、最初からそうしときゃ良かった!」
『まったくっすよ。ノア様その結論、99話かけて出す結論じゃないっすけどね!』
「おまえだけ磔にして俺を追い出した犯人をおまえだって書き置きしておくぞ★」
『すみませんしたっ!』
何はともあれ、こんな悪魔の国とはおさらばだっ!
「ろりえもん、タケコプターだして」
『んなもんねーっすわ。変身!』
かっ、とロウリィが光り輝いて、そこには1匹の白い竜がいた。
「おお!」
『ふっ、あまりの美しさに驚いてるんすね』
「誰だおまえ?」
『おぃいいいいいいいいいいいいいいい!』
白い竜が吠える。
『わたしっすよ! ロウリィ!』
「バカな。ろりえもんは白い猫だぞ!」
『魔神! わたしは魔神ロウリィ!』
「あー、確かにそんな設定あったね」
『設定!? 事実! じーじーつー!』
俺は白竜の背中によじ登る。
「なんでもいいや、ほらさっさと飛べ」
『完全にぱしりなんすけどぉ~……』
「ばっか、おまえは俺の恋人だろ」
『ば、ばかぁ~♡ ノア様ってばぁ~……んもぉ~♡ しかたいなぁ~♡ 許してあげる~♡』
「ありがと~♡」
ふっ、バカな猫だぜ。
所詮は畜生。
「よしいけ、ぼくのポケモン! 空を飛ぶんだ!」
『りょーかいっす! じゅわっち!』
ロウリィが勢いよく飛び出した……そのときだ。
「あ、」
『え?』
しゅんっ! と上空に突如、光のドームが出現した。
「緊急離脱!」
『ちょっ!? ノア様! ふぎゃぁああああああああああああああああああ!』
ロウリィだけが壁に激突!
そのまま激しい爆発を起こした!
どがぁあああああああああああん!
「ろ、ろりえもーーーーーーーーーーん!」
凄まじい爆発だった。
ぱらぱら……と黒こげた肉片が地上へと降り注ぐ……。
「まさか……さよならろりえもんするなんて……」
俺は焦げた肉片を手に取る。
「おつかれさんした」
「軽いわぁあああああああああああああ!」
「あ、生きてる」
地上に人間姿となったロウリィがいた。
髪の毛がアフロみたいに爆発してる。
「てめえこの野郎! 自分だけ助かるなんてひでーっすよぉ!」
ロウリィが俺の胸ぐらをつかんでがくんがくんと揺らす。
「まあ無事で良かったよ」
俺はロウリィの髪の毛を手で治す。
なでなで。
「ば、ばかぁ~♡ もう、頭なでたくらいでこの魔神ロウリィの、機嫌を取れるとでもおもってるんすかぁ~♡ んもぉ~♡」
ちょっろ。
「しかしなんすかね、あの壁」
「強力な魔力結界だな」
「まりょくけっかい?」
俺は上空を見上げる。
「相手の魔力を感知して展開される結界だよ。ぶつかる魔力が高ければ高いほど、強固な結界が作られる」
「はぁ? 何でそんな結界を……?」
「さぁ?」
と、そのときだった。
「ノア様ーーーーーーーーーー!」
「うげぇええええええええええええ! リスタぁあああああああああああああ!」
金髪のメイドが手を振りながら、俺の元へとやってくる。
「ひぃいいい! たすけてろりえもーん! リスタ怖いリスタ怖いよぉお!」
「悪魔にもびびらないお人が小娘ごときにびびってんじゃねーっすよ。まあ気持ちはわかるけどさ……」
リスタが目をキラキラさせている!
やばい! いつもの目だ!
「【さノ目】だ!」
「なんすか、さノ目って?」
「さすがですノア様って言うときの目!」
「さすがですノア様!」
「あ、ほんとだ」
キラキラのさノ目をしたリスタが言う。
「帝都の結界を御自ら試してくださるなんて!」
「「ていと? 結界?」」
なんじゃそりゃ……?
謎ワードが二つも?
「帝都ってなんだよ」
「帝都カーターのことです! ロウリィちゃん、お空飛んでくれます?」
リスタがロウリィに言う。
「わたしタクシーじゃねーんすけど」
「え、しょうがないノア様と一緒のなら乗せてくれるの? ありがとうロウリィちゃんは優しいね!」
「ノア様やべえよこの女、話聞かないどころかねつ造してるよ」
「なー、やばいよねー」
俺とロウリィはひそひそと話し合う。
「まあでもろりえもん、従っとけ。後で呪われるかもしれん」
「そーっすね。まじこいつ魑魅魍魎のたぐい……はっ! まさか実はラスボス!?」
はは、ないない。
ない……よね?
ロウリィはリスタに言われて白竜の姿へと変化。
俺たちを乗せて上空へと飛び立つ……。
「『なんじゃこりゃぁあああああああ!?』」
眼下には、それは見事な都市が広がっていた。
3重の壁に包まれた都市。
俺の住居たるカーター領主の館の近くに、見事な城が出来上がってる。
「なんだよこれ!」
『! ノア様! この都市のかたち、よくみるっす! 顔! 顔が!』
……よーく目をこらすと。
た、確かに、デフォルメされた、俺の顔が!
「私の発案で、帝都はノア様の顔に見えるよう、建物や壁の形をデザインしたのです!」
「『やばいよやばいよ……!』」
異常者だよぉ……!
『つーか、いつの間にかカーター領って、帝都に改造されてたんすね』
「はい! ノア様がおわす場所が、いつまでも領地であってはならないと!」
『誰が言ったんすか?』
「もちろんノア様です! 夢の中でそうお告げなさりました!」
ふぇええ……こわいよぉ……。
自分が言ってない発言が、がんがんふえてくよぉ……。
「ロウリィ、こいつだ。リスタがすべての元凶だ。あとで処す」
『ノア様しーっ。計画がばれたらおじゃんっすよ』
後でこの女は滅しておこう。
「ごらんくださいノア様。これが帝都カーター、そしてあちらが帝城ダークシュバルツ城です!」
「『でけええええええええええ!』」
なんかやったらめったらでっけえ城ができているぅううううう!?
「お、俺の城か……?」
「そうです! やはり帝王にふさわしい城が必要かと!」
城の壁は真っ黒で、ところどころトゲトゲがついている。
シルバーの装飾が至る所についており、青い炎のランタンが、城を照らしてる。
『うっわだっさ……ねえ、ノア様。ださいよねぇ?』
「ふ、ふーん? ま、まあ? そこそこ……いいじゃない? ネーミングも含めて?」
『しまったこの人心は厨二病のままだったっす!』
何はともあれ……だ。
「ま、城に住むのも悪くねえな!」
イカす見た目してるしよ!
「まあその……なんだ。イイ城作ったじゃあねえか、リスタ」
発注してねえけども。
ぱぁ……! とリスタが笑顔になる。
そして……そのまま仰向けに倒れる。
「『ちょっ……!?』」
ロウリィの背中から落ちていくリスタ。
「ばかやろぉおおおおおおおおおお!」
俺は重力魔法をリスタにかける。
ふわ……と軟着陸する。
「ロウリィ! 地上へ!」
俺はリスタの元へと向かう。
白猫へと変化したロウリィが、リスタのおっぱいの上に乗っかる。
『ノア様大変っす! 死んでるっすぅ!』
「なにぃいいいいいいいいいいい!?」
なんで!? リスタ何で死んでるん!?
『ノア様がほめたからっすよ!』
「お、俺は悪くねえ! 俺は悪くねえんだ!」
そっこーで蘇生魔法を使う。
「さノです!」
「『起きてそうそう!?』」
リスタはさノ目で俺を見てくる。
「高所から落下しそうになっている帝国の民を、御自らが助けてくださるなんて! 見ました、皆さん!」
気づけば俺の周りには領民……もとい、帝国民たちが集まっていた。
てか、ここ帝城の真ん前じゃねえか!
「やはりノア様は素晴らしい!」
「まるで息をするかのごとく人助けをなさるなんて!」
「さノ!」「さノ!」「さノ!」「さノ!」
『今回も完全にマッチポンプなのに……まーた評価されてるっすよ。自ら命を捧げて、ノア様の見せ場作るなんて。ほんとイカレテルっすわ』
俺はしゃがみ込んで頭を抱える。
「あぁああどうしてこうなるんだよぉおおおおおおおおおおおおおおおおお!?」
★
ノア・カーターに助けてもらった後、リスタは城の中をお掃除する。
「ふふふーん♡ 今日もノア様素敵だったなぁ~♡」
リスタは帝城内の廊下に備え付けてある、大きな鏡を見やる。
「ん? あれ……?」
ごし……とリスタが目をこする。
「なに……これ?」
リスタは鏡に近づいて、ぴたり……と触れる。
その背中からは……2対の白い翼が生えていた。
「翼……? なんで、私の背中に……?」
すると鏡の中に移っているリスタが、ニコッと微笑んだ。
『その調子よ、可愛いリスタ』
鏡の中に移る、もう一人のリスタが、微笑みながら語りかけてきたのだ。
「!? だ、誰!?」
『異な事を言うわね。私は、あなた。あなたは、私よ……【リスタルテ】』
「りす、たるて……私……私は……うっ!」
リスタは頭を抑えてうずくまる。
バサッ……! と現実のリスタの背中にも、2対の翼が生えた。
鏡に映るもう一人のリスタが、微笑みながら彼女を見下ろす。
『まもなく【神々】が動く。リスタ、あなたは、いつも通り私の愛する【男性】のそばにいるのです』
「あ、なたは……だれ? 愛する人……?」
『あなたも大好きな、ノアよ』
くすくす……と鏡に映るもう一人のリスタ……リスタルテが笑う。
『私の可愛いお人形さん。今はすべて忘れて、今まで通りあの子のそばにいなさい。天界にいる私の代わりに、あの子に【幸運】をもたらし続けるのです』
リスタはおぼろげながら思い出す。
かつて自分は、この人から与えられた使命……。
この女の、正体を。
「め、がみ……リスタルテ……私は……その……」
がくん、とリスタが意識を失う。
……目覚めたときには、もう一人のリスタとの会話は、すべて忘れていたのだった。




