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98/122

98.第七王子は狂戦士となる

【★お知らせ】


無能王子、書籍版いよいよに発売!


挿絵(By みてみん)


めっちゃ頑張って書きました!

ぜひお手にとってくださると嬉しいです!


【特設サイト】

https://dengekibunko.jp/product/322110000027.html



 ある日の、俺の館にて。


 俺の部屋には婚約者のサラディアスこと、サラがやってきた。


「ノア様。実はご相談が」

「まーた厄介ごとかよぉ~……」


 もうやだなぁ~はぁ~……。


「実はソロモンのすみかを調査していたところ、呪物じゅぶつを発見したのですわ」


「あん? じゅぶつ?」


 サラがうなずく。

 その隣には聖騎士がいて、彼女の前にしゃがみ込む。


 聖騎士の手には木で作られた箱があった。

 ぱかっ、と開けると……。


手甲ガントレットか?」


 真っ黒でギザギザの、ちょーいかすデザインの手甲が納められていた。


 そこから紫色の煙が立ち上っている。


「う、ぐ、ぐうがぁああああああああ!」


 聖騎士が急に叫び出す。


「いけません! 瘴気に当てられてしまって、暴走してしまいますわ!」


 サラが箱を奪い取り蓋をする。

 箱には呪符が巻かれていた。


『聖騎士って悪魔付きとかの訓練してるはずっすよね。それでもとりつかれそうになったってことは……』


 白猫ロウリィが恐る恐る、呪物じゅぶつのしまってある箱を見る。


「ま、そーとー強力な呪いだろうな」


 しかし……呪いのアイテムか。


 そ、そそるぜ……!


『ノア様、また闇がもれてるっすよ』


 おっといかん。

 気を抜くとすぐに、闇の大賢者時代のときの俺が顔をのぞかせる……。


 今の俺はただのノア・カーターなの!


 俺は呪物じゅぶつの入った箱を手に取って椅子に座る。


「ソロモンは呪物じゅぶつ……呪いのアイテムも収集していたようですわ。その【狂戦士の手甲ガントレット】はそのひとつ」


「ほ、ほほぅ……狂戦士ねえ……な、なかなかかっこいいネーミングじゃなーい?」


『ノア様闇ってるよ』


 なんだよ闇ってるって……。


 あれか、闇が漏れてるってか?


「その手甲はかつて偉大なるドワーフの王族が作った最強の防御甲冑……になるはずでしたの」


 サラが調べたらしいことを教えてくれる。

「しかしドワーフ王は志半ばで死に、この手甲だけが残されたのですの」


「はーん。その怨念がしみついてるのな」


「どういたしましょう……呪いのアイテムなんて、破棄してしまいたくても、これを壊せる人なんてノア様くらいしか」


 なるほどね。

 呪物じゅぶつをほっとくと誰かに悪用されるかも知れない。


 かといって残してても困る。


 で、お鉢が回ってきた訳か。


「俺に任せな!」

『ノア様、さっきまでのやる気のなさはどこいったんすか?』


 足下の白猫がじろっと俺をにらみつける。


「だってこれ、めっちゃかっこいいじゃん! 呪いのアイテムとか憧れる~」


『しまったこのひと、厨二病だった……』


 ええ~。かっこいいじゃん……。

 ったく、これだから女は、ロマンがわかってないね。


「んじゃさっそく」


 俺は箱を開けて、黒い手甲を左手につける。


「いけません! ノア様! それは身につけると狂戦士の意思にとりつかれて……」


「う、うぐ、ぐわぁああああああああああああああああああああああ!」


 俺は突如として叫び出す。


「やっぱり! ノア様!」


「近づくんじゃねえサラぁああああああああああああ!」


 びくんっ、とサラが立ち止まる。


「ぐ、うぐうぅ! 静まれ俺の左腕ぇぇええええええええええええ! ぐわぁあああああああああああ!」


 サラと聖騎士が遠巻きに俺を見ている。


「俺のことは……いい。部屋を……出て行け! でないと……自我が保てるか……こ、ころす……ころして、やるぅうううう! うぉおおおおお!」


「ノア様!」

「いけません! ノア様は呪われてしまったのです!」


 聖騎士がサラを止めようとする。


「でも!」

「ここはいったん逃げて体制を整えるのです! でなければ、狂戦士の呪いにかかったノア様に斬り殺されてしまいます!」


「うぐ……! そ、そうだ……今は、俺が抑えておく……! だから……ぐっ! 左腕が……うずくぅ!」


 サラが真っ青な顔をして、決然とうなずく。

「ノア様! 待っててくださいまし! 優秀な呪術師をみつけて、必ずや呪いを解いて見せます!」


 サラがバタン、とドアを閉める。


 と同時に俺は溜息をついて椅子によいしょと座る。


『で、なんすか今の?』


「くくく……よくぞ聞いてくれた!」


『あ、いつもの馬鹿ムーブね』


「最後まで言わせてよぉ!」


 はぁ、とロウリィが溜息をつく。


『んで、その呪物じゅぶつって偽物なんすか? ノア様生きてるし』


「いいや、ちゃんと呪われてたな。身につけたやつが狂戦士化して、死ぬまで暴れ回る強い呪いがかかってる」


『じゃあなんであんた無事なんすか?』


「え、死の呪いくらいじゃ死なないでしょ? 普通」


『久しぶりに聞いたわ、あんたのその【俺何かやっちゃいましたムーヴ】!』


 俺は最強賢者だった。

 魔法や呪いに対する耐性は人一倍強いのである。


「いやぁ、それにしてもこの手甲、ちょーかっけーなぁ~。デザインが素晴らしい。呪われてるのもグッド!」


『うげぇ、ばっちーっすよ。呪いなんて』


「ばっかおまえ、呪われてるからいいんじゃないか。ちょーイカすわ。作ったやつは天才だね」


 身につけたら狂戦士となって狂い死にするアイテムを前に、さて、と俺は言う。


「コレを使って……かっこ良く、【悪の帝王】らしく死ぬぞ!」


『はいはい』


「ねー聞いて! ねーもっと興味もって! くいついてよぉ~!」


 ロウリィが死ぬほど興味なさそう……!


『ノア様も98話も連載して、ちーっとも進歩しないの、さすがに読者にあきれられるっすよ』


 誰だよ読者って。


「聞きたまえロウリィくん。今回の作戦はこうだ。ズバリ【呪われて狂死! あわれ悪の帝王の末路】作戦だ!」


 この狂戦士の手甲を身につけて、最終的に狂い死にするって作戦よ。


「狂って死ぬって、為政者の末路っぽくてよくない?」


『はいはいさノさノ』


 適当すぎる!


「まだ作戦開始すらしてないでしょ!?」


『まーどうせ成功するから、前さノしておこっかなって』


 前借りならぬ前さノ!?


 ま、まあいいさ……!


「見事に狂死してみせるぜぇ!」


『普段から狂ってるようなもんじゃ……あ、やめて、尻尾をそんなふうしちゃらめぇ!』


    ★


「ぐぉおおおおお! 静まれぇええ! 俺の左腕ぇええええええええ!」


 俺の部屋にて。


 サラのやつが呪術師のじいさんをつれてきた。


「どうですの! ノア様の呪いはとけますの!?」


 だが呪術師はふるふる、と首を横にふる。


「無駄ですじゃ。そうとう強い怨念にとりつかれておる。身につけたら最後……狂い死ぬ」


「そんな……!」


 顔を真っ青にするサラ。


 一方で俺は……。


「うぐ……右腕が! うがぁあああああああああああ!」


「ノア様! ああなんてこと! 右腕にも同じデザインの手甲ガントレットが!」


 俺の両腕には黒い手甲が装着されている。


「左手の呪いが進行したのじゃろう。ああして全身に呪いが回って最後には……」


「ノア様! ああ、ノア様ぁああああああああああああ!」


「こうなってはもう無理じゃ。せめてこの部屋に結界を張っておき、彼が出てこれないようにするしかない……」


 呪術師とサラが出て行く。


「ふぃー」


『ノア様、呪いが進行したんすか、それ?』


 ロウリィが俺の右腕を尻尾で指す。


「あ? ちっげーよ。俺が作ったんだよ」


『作った?』


 んふー、と俺が鼻息荒く言う。


「この手甲ちょーかっこいからさ~。逆側の手甲も作っちまった。ほら、呪いっていったら、全身に回る描写がいるだろ? それをこれであらわすの」


 呪いが進行していく、それを鎧にとりつかれるみたいにしたいの。


『ノア様ぁ。だから余計なことしないほうがいいんじゃないすか? 今までそれで何度失敗したんすか? 馬鹿シングルタスクなの? シングルタスクなの?』


 シングルタスクって二回もいいやがった!


「いいじゃあねえか。この鎧かっけーんだもん。完成させたいじゃあないか、完全なる狂戦士の呪物じゅぶつをさ」


 右腕の手甲は、左手のものを参考に、俺が作ったのだ。


『ノア様って鍛冶までできるんすね』


「真の剣士たるもの、自分の武具は自分で作らんとな」


『呪いの武具を自分で作っちまう剣士なんてあんたくらいっすよ……』


「くくく! この調子で呪いのアイテムを作ってやるぜぇ!」


    ★


 こうして俺は狂戦士の呪いのアイテムを自作することになった。


 呪いが進行する描写として、左腕だけだったパーツを、右腕、左足……と全身のパーツを完成させる。


 そして……。


「ああついに! ノア様が、お顔以外の体全身に呪いが回ってしまいましたわ!」


 俺の部屋にサラと呪術師が来ている。


 よよよ……とサラが涙を流してる。


「さ……ら……」


「ノア様!? まだ意識が残ってますの!?」


 てゆーか最初から別に狂ってないけどね。


「信じられん……とても正気を保てるとは思えない。なんという精神力……!」


 あの呪術師のじいさんもてきとーなこといいやがって。


 まあいい。

 ここがクライマックスだ。


 悪の帝王っぽく、かっこよく死ぬぞ!


「さ……ら……愛してた、ぞ……」

「ノア様ぁあああああああああああ!」


 俺はあらかじめ作っておいた、狂戦士の甲冑の、頭部パーツを空間から出す。


 頭にかぽっとかぶる。


 これで、完全に呪いの鎧が完成したわけだ!


「呪いが完成してしまった! ノア様はこれで、もう戦うことしか考えられない化け物になってしまわれたのだ!」


「うう! ノア様!」


 と、そのときだ。


 ぱきーん!


 と、甲冑が体から勝手に、パージされた!


「なにぃいいいいいいいい!?」


 驚く俺と呪術師。


 俺の周りには呪いの甲冑のパーツが、散らばっている。


「信じられぬ! 呪いのアイテムは、1度身につけたら2度と外れぬはず! だのに! なぜ!?」


 しゅうう……とパーツから瘴気が立ち上る。

 煙は集合し、やがて一人のドワーフとなった。


「なんだてめえ!?」

『わしはドワーフ王じゃ』


 ドワーフ王!?

 誰!?


『左腕のパーツを最初に作ったドワーフさんでしょ』


 ロウリィが溜息交じりに言う。

 あ、そっか!

 

『ノア殿……ありがとう。わしの未練を晴らしてくれて』


「み、未練だぁ??」


 こくん、とドワーフ王がうなずく。


『わしの未練。それはこの、世界最高の甲冑を完成させられなかったことだ。道半ばで死んでしまい、悔しいという思いが甲冑を呪いのアイテムに替えてしまった……』


 ぐっ、とドワーフ王が歯がみする。


『わしを馬鹿にされるのは良い。だが、この鎧が永遠に完成しなかったこと、そして、狂戦士の甲冑などという、不名誉な呼ばれかたをされ、忌み嫌われるのが、いやじゃったのだ……』


 しかしと彼が続ける。


『ノア殿。あなたはこの甲冑をほめてくださった。それだけでなく、完成まで導いてくれた。ありがとう……これでもう、思い残すことはない……受け取ってくれ、【世界最高の鎧】とともに、わしの思いを』


 そう言って、ドワーフのじいさんの怨霊は消えていった。


「えっとぉ~……」


「さノですわ!」


 サラが涙を流しながら俺に抱きつく。


「呪いのアイテムを壊すのではなく、とりついた無念を晴らしてしまわれるなんて! なんとお優しいのでしょう!」


 あれぇええええええええ!?

 これ、また俺やっちゃった流れぇ!?


『あーあー。やっちゃった。最初から一発で呪いで死んだってすりゃよかったのに。時間をかけて完成なんてさせるから、こーなるんすよ』


 やれやれ、とロウリィが溜息をつく。


「さノ! さノですわ! やはりノア様は慈悲深く、お強い、最高の男性ですわぁ!」


 ああもぉおおおおおおお!

 引退もできないうえに、まーーーーた好感度あがっちまったじゃねええかぁあああああああああ!


「どうしてこうなるのよもぉおおおおおおおおおおおお!」

【★お知らせ】


書籍版、本日発売!


めっちゃ頑張って書いたんで、買ってくださると嬉しいです!


挿絵(By みてみん)

挿絵(By みてみん)

挿絵(By みてみん)


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― 新着の感想 ―
[一言] ノアとロウリィの掛け合いをいつも楽しんでいます
[良い点] ロリエモンの読者発言…そういうの好きですv いつも通りさノ!でドアホ!シングルタスクw ノアッチの闇の賢者時代はなかなか抜けないですねw 剣聖時代の熱血はすっかり無くなったのにw [気にな…
[一言] 上の挿絵でノアに抱えられてるロウリィって後ろにいるリスタとサラからパンツ見えてるよね。
2022/01/17 08:02 退会済み
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