97.第七王子はソロモンの悪魔を赦す
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俺が悪魔バフォメットを送り込んで、ソロモンのアジトを壊滅させてしまった……!
領主の館、裏庭にて。
『パパ~。褒メテ~』
巨大な山羊頭の悪魔が俺の元へやってくる。
『ほらほらノアタン、愛しのベイビーが襲いかかってくるよ。押し潰れちゃうっすよ』
「ろりえもんバリア!」
白猫ロウリィの首根っこをつかんでバフォメットのバブめがけて投げ飛ばす。
『ふぎゃーーーーーーーーーー!』
すっとんでいくロウリィをバブがつかむ。
『さ、さんきゅーバブちゃん』
『ママ~♡』
『うぎゃぁあああ! ママじゃないっすよぉおおおおおおおお!』
バブに頬ずりされてるロウリィ。
俺はしゃがみ込んで溜息をつく。
「もうおしまいだ……悪魔の親玉は死んじまったし……」
『む? ノア様』
ぴくん、と黒犬ナベリウスが耳をそば立てる。
「んだよナベ」
『悪魔の……気配だ』
神妙な顔つきのナベリウス。
『おかしくないっすか? ソロモンの悪魔は、アジトごと、バブちゃんが壊滅させたんじゃ?』
バブに頬ずりされながら、ロウリィが答える。
ナベが焦りながら首を振る。
『わからん……だが、やばいぞノア様! そうとう巨大な悪魔の気配だ!』
と、そのときだ。
かっ……!
ずどぉおおおおおおおおおおおおおん!
バブの頭上に黒い稲妻が落ちる。
『う、うう……死んだ……って、バブちゃん!?』
バブがロウリィを守るようにして、丸くなっている。
『バブちゃん! どうして……』
『ママ。守ル……ガクン……』
『ば、バブちゃーーーーーん!』
倒れふす山羊頭の悪魔。
ナベは戦慄の表情を浮かべる。
『ノア様が生み出した大悪魔を、一撃で……なにものだ、あいつは!』
頭上を見上げると、そこにいたのは、黒い衣をまとったソロモンがいた。
「ソロモンじゃねえか」
俺はバブに治癒魔法を施す。
『バブちゃん! 良かった生きててぇ~……』
『ソロモン! 貴様死んだはずでは!?』
ナベが吠えると、ソロモンはにやりと笑う。
『くははあ! 否! わしは生まれ変わったのだ、悪魔へとなぁ!』
『なっ!? ソロモンが悪魔に、転生しただと!?』
ナベが驚愕する。
にまぁ……とソロモンは笑うと、俺を見て言う。
『ノア・カーターぁ! 貴様への強い強い恨みが、わしを悪魔へと転生させたのだ! いわば……貴様を殺すためだけに生まれ変わった悪魔といえる!』
「ほーん」
確かに大口たたくだけはあって、なかなかの魔力量を持つようだ。
そもそも大悪魔を一撃で倒してるで、結構な強さだしな。
『貴様を殺しに来てやったぞぉ! ノア・カーターぁ!』
ふ……ふふ……。
「『ふははははははははは!』」
俺とそしてソロモンが笑う。
『ひぃ! なんすかこいつら、そろって笑って』
『キモいな普通に』
じゃかしいぃ!
「そうかそうか! 俺を殺すかソロモンぅ!」
『ああ! 貴様を呪い殺してやるぅ!』
これはなんて好都合!
俺が生み出した悪魔は、俺を殺さないポンコツ悪魔だった。
しかーし!
図らずも俺は、俺を殺す悪魔を生み出したのだ!
『あ、そっか。そもそも目的を達成してるんすねノア様』
『ほんと偶然と幸運の女神に愛されてるよな、ノア様って』
『ねー、溺愛ってレベルじゃないっすよたぶん』
俺は浮遊魔法を使って、悪魔となったソロモンと相対する。
『ノア・カーター! 貴様を殺す!』
「やってみな、ソロモンぅううう!」
俺たちが魔力を高める。
『そこは出来るもんなら、をつけるべきでは?』
『ノア様殺されたがってるからなほら』
『あ、これギャグ回なすね、いつもどおり』
『むしろギャグじゃない回なんてあったか?』
こうして、絶対俺殺すマンVS絶対俺負けるマンのバトルが、スタートする!
勝つのはどっちだ!
★
俺は空中でバチバチソロモンとやりあう。
「せやぁああああああああ!」
『甘い……! ぬぅうううううううん!』
聖剣ファルシオンの一撃を、ソロモンが防御魔法で防ぐ。
「『おお! 聖剣の一撃を受け止めるとは! 素晴らしい!』」
にぃ……と俺たちは笑う。
一方で地上では白猫、黒犬、青山羊が観戦している。
『セリフかぶってね? ナベたん?』
『ソロモンは進化した自分の体に歓喜し、ノア様は自分を殺せる力をもってるソロモンを褒めてるのだろう』
『奇跡のバカコラボレーションっすね』
『パパぁ! ガンバエ~!』
空中では俺とソロモンの攻防が続く。
がきん! きんっ! どがんっ! がきききききんっ!
『「いける! いけるぞ! ノア・カーターの動きに、ついていけてる!」』
俺の一撃を、ソロモンが素手ではじく。
ソロモンは黒い闇をまとっている。
それを自在に動かして俺を追い詰めていた。
『ノア様、どうして魔法使わないんすかね?』
『どうやらそれがソロモンの悪魔の呪いみたいだな』
『どゆこと?』
はて、とロウリィが首をかしげる。
『悪魔達はみな、特別な力……呪いを使えるのだ。オレ様は影を操る呪い、影呪法』
『なるほど、ソロモンはノア様の魔法を封じる呪いがつかえるんすね』
『そういうことだ』
ソロモンが宙を飛び、俺に向かってひっかき攻撃を放つ。
闇の爪が襲いかかる。
がきぃん! と俺は剣の腹ではじきかえす。
「『すごいぞ! ノアが防戦一方じゃないかぁ!!』」
『ちょいちょいセリフかぶるのウケるんすけど』
『ノア様は別に勝ちにこだわってないからな』
そう、俺は負けるために戦っているのだ。
しかし素晴らしいな!
ソロモン! 俺の動きについて行けてる!
空中では俺とソロモンによる激しい攻防が続く!
しかも国中を駆け巡っての戦い!
「ノア様がんばってー!」「負けないでノア様ぁ!」
「くそ! 悪魔が強すぎる!」「ばかっ! ノア様が負けるわけないだろ!」
よーしよしよし!
良い感じにギャラリーが暖まってきてるなぁ!
「『くかかかか! 残念だったな領民どもぉ! ノア・カーターはここで死ぬんだよぉ!』」
俺とソロモン、ご満悦。
ソロモンが強攻撃を放ってくる。
俺も強めの斬撃を放つ。
衝撃で体がぶっとび、ロウリィ達のもとへとすっとんでいった。
どごぉおおおおおおおおおおおん!
『あ、帰ってきたっすね』
『随分と長く遊んでたな』
ババ抜きしてる白猫と黒犬。
『パパぁ……! パパぁ……! 大丈夫ゥ~!』
青山羊だけが焦った表情で言う。
『死ンジャヤダァ……!』
『だーいじょうぶ、バカは死んでも死なないっすから』
『バカは死んでもなおらんがな』
『お、ナベタン言えてる~』
『『げらげらげら!』』
のんきしている白と黒。
焦っている青。あとであの二匹はぶん殴ろう。
すたん、とソロモンが俺の前にやってくる。
「『くくく……ついにノア・カーターの最後か……』」
『ステレオ放送で草っす』
『ほぼ最後までシンクロしてたなセリフが』
『パパぁ……! 逃ゲテぇええええええ!』
倒れ臥す俺を、ソロモンが見下ろしている。
にぃ……とソロモンが邪悪に笑う。
右手の爪を伸ばし、俺の喉元にあてる。
「くだばれぇ! ノア・カーターぁああ!」
『ノア様それ敵のセリフっすよぉ!』
ばきぃいいいいいいいいいいん!
「『『な、なにぃいいいいい!?』』」
俺とロウリィ、そしてナベの三人が、驚愕する。
ソロモンの腕が、バキボキと折れて崩れ落ちたのだ。
「ば、バカな!? 聖剣と互角に渡り合うだけの硬度があったのだぞ!? いったいどうして悪魔の爪がくだけちるのだぁ……!」
『だからノア様、それソロモンのセリフっすから……』
当のソロモンはというと、俺の前で両手をぶらんと下げていた。
『て、敵対する意思がかんじられねーっす……』
『いったいどうしたというのだ、ソロモンは……?』
彼は顔を上げると、俺に静かに言う。
『さすがだな、ノア。わしの負けだ』
「なにぃいいいいいいい!? バカなことを言うな! なぜそこで諦める! あと少しでノア・カーターを殺せるところだったんだぞぉ!」
『ノア様はいったい誰の味方なんすか……』
ふるふる、とソロモンは首を横に振る。
『わしでは勝てぬ。……ノアよ、おまえは手を抜いていたな』
「て、て、てて、手なんてぬ、ぬぬぬ、ぬういてないわい! なな、何を証拠にそんなことぉ!」
『動揺しすぎだろ』
『ノア様って頭脳戦苦手そうっすね』
ふっ……とソロモンが諦めたように笑う。
『敵に対して手を抜く。本来ならばあり得ない行為。だがおまえはそうした。それは、なぜか……』
「ご、ごくり……」
『お、ついにノア様が馬鹿だからってことを、理解する敵が現れるんすかね?』
ソロモンは俺に穏やかな調子で言う。
『敵であるわしに、情けをかけたのだろう』
『『あ、こいつも馬鹿だった』』
え、エエ……!? 情けぇ~?
『そうかわかったぞ』
『何がっすかナベタン?』
黒犬が訳知り顔でうなずく。
『ソロモンの攻撃が弱くなったのは、ノアに対する恨みが薄れたからだ』
『あ、そっか。悪魔は強い恨みの力でパワーアップする。ノア様が慈悲(笑)を相手がかけたって思って、恨みが消えてパワーダウンしたんすね』
ソロモンの体が、ボロボロと崩れていく。
「馬鹿野郎! 消えるんじゃあねええええええええええ!」
俺はソロモンに慌てて回復魔法をかける。
「駄目だ! 逝くなぁ! 逝くなソロモンぅううううううううううううう!」
『なんでノア様必死なん?』
『せっかく自分を追い詰める存在ができたのに、自分で消えようとしてるからだろ』
『端から見ると好敵手が消えるのを悲しむ、正義のヒーローっぽいっすね』
『あくまで外から見ればな』
ふっ、とソロモンが笑う。
『完敗だ、ノア・カーター。わしの……』
「ソロモンぅうううううう! うわぁあああああああああああああああ!」
ちくしょぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!
せっかくあと一歩だったのに! もうあと一歩だったのにぃ!
『ノア様、後ろ後ろ』
「んだよぉろりえもん!」
「「「さすがです! ノア様!」」」
振り返るとそこには、カーター領民どもがいた。
「さノです、ノア様!」
「うぎぇぇああああああ! リスタぁあああああああああああ!」
俺はその場で腰を抜かす。
やばい予感が脳裏をかけるぅ!
『悪魔に会ったときより、リスタに会ったときのほうがおびえてるってなんすかね』
『ノア様にとっての化け物だからだろう』
リスタはキラキラと目を輝かせている。
「ノア様……わたしたち、見ておりました。ノア様が、我らを守るために必死になって戦っていた姿を! そして、敵ですら、情けをかけてあげるその深い慈悲の心をぉ!」
うぎゃぁあああああああ!
最悪だぁあああああああああああ!
『作戦は失敗。領民達の好感度はガン上げっす』
『ものの見事に作戦が裏目に出たな』
『中途半端に手加減なんてするから……』
だってぇ! ギリギリで負けた方がかっこいいじゃーん!
「さノ!」
「「「さノ!」」」
「うぼぁああああああああああ! どうしてこうなったぁあああああああああああああああああああああああ!?」
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