96.第七王子は敵に塩(悪魔)を送る
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俺が悪魔を召喚した翌日。
カーター領、領主の館、その庭にて。
「どうしてこうもうまくいかんのだ!」
俺は一人頭を抱える。
目の前には見上げるほどの巨大な悪魔がいる。
名前はバフォメット。
ヤギの頭を持つ上級悪魔だ。
俺のストレスからうみだされた悪魔である。
『パパ。パァパ』
こんなでかくてゴツくて怖いなりのくせに、中身が赤ん坊っていうね。
ずっとパパと連呼してくる。
『バブちゃん、こうしてみるとかわいいっすね』
白猫ロウリィが、バフォメットを見上げて言う。
「バブちゃんってなんだよ?」
『この子のあだ名っすよ。赤ちゃんのバフォメット、略してバブちゃん』
「くそどうでもいい……」
じっ……とバブがロウリィを見下ろす。
『な、なんすかバブちゃん?』
『ママぁ~』
バブがロウリィを握り締めて持ち上げる。
『ふぎゃー! わたしはお母さんじゃないっすよぉ!』
『ママ! まぁまぁ~』
『こんなでっかい赤ん坊はノーサンキューっすぅ!』
魔神と悪魔がじゃれついている一方で、黒犬ナベリウスがため息交じりに聞いてくる。
『どうするんだノア様、これから?』
悪魔を生み出したのは、俺を殺させるためだ。
だがバブは俺から発した、俺を殺せと言う命令には従わなかった。
「予定通り計画を進める。バブを使っての暗殺だ」
『おまえまだそれやるの……?』
「当然だろぉがよぉ! なんのために悪魔を生み出したと思ってるの!?」
『体を張った一発ギャグ?』
「ちっげーよ! 俺が帝王ムーヴしてかっこよくやられるためだろ!」
『やめとけってまじで……』
ナベのやつが呆れたようにため息をつく。
「ばっきゃろう! やめるもんかよ! 苦労して悪魔まで作ったんだ、利用しない手はない!」
『馬鹿に馬鹿って言われんのすごい不服なんだが』
「馬鹿じゃないですぅ、シングルタスクなだけですぅ!」
さて、まあちょっと予定は狂ったが、計画を発表しよう。
「よく聞けペットども! くく……俺の華麗なる計画を発表する!」
『『…………』』
「聞けや!」
しぶしぶ、といったかんじで、白猫と黒犬、そして青山羊が座る。
「今回のプランは、ずばり【敵に悪魔を送る作戦】! どういう作戦かというと」
『ソロモンにバブちゃんを送るんすね』
『ソロモンを使ってバブを動かし、ノア様を殺す作戦だろ?』
な、なぜばれたし!?
いや、まあ話が早くていい。
「バブは俺の命令じゃ俺を殺さない。発想を変える。おいバブ」
『ナァニ、パパ?』
「お使いだ。ソロモンってやつのとこへ行け。そんで、ソロモンの命令を聞くんだ。これは命令だ」
『了解、パパ』
悪魔にとって命令は絶対だ。
でも召喚主である俺を、悪魔は殺せない。
そこで、ソロモンの命令を聞けと命令する。
ソロモンは俺のことをにくく思ってるだろうから、バブを使って、俺を殺しに来るだろう。
『なるほどっす。ノア様の命令でノア様を殺せないなら、別のやつに命令させるってことなんすね』
『悪魔が拒否するのは、召還主を殺す命令であって、殺すこと自体じゃないからな』
天才すぎる……!
「つーわけで、今からバブをソロモンのとこへ向かわせる」
『でもうまく敵は作戦に乗ってくるっすかね』
「大丈夫、お手紙書いたから」
『お手紙?』
俺は懐から手紙を取り出し、バブに差し向ける。
「これ、ソロモンとこいったら、渡せ。いいな?」
『ワカッタ、パパぁ。ソシタラ、褒メテクレル?』
「はいはい、ちゃんと作戦が完了したなら」
『ウン! オデ、頑張ル!』
よしよし、うまくいきそうだぞ!
『なーんかバブちゃんが不憫っすね』
『馬鹿な親を持つと子供は苦労するって聞くぞ』
『赤ちゃんポストに突っ込んでおこうかな』
『こんなでっかい赤ん坊貰っても迷惑千万だろう』
かくして、俺の華麗なる計画が遂行される運びとなった。
今度こそ、成功だ!
★
ノア・カーターからソロモンに、手紙が届いた。
しかも、上級悪魔のおまけつきだ。
「くそ! 何を考えてるのだノア・カーター!」
ソロモンがいるのはとある洞窟の中。
唐突に山羊頭の悪魔が出現し、ノアのもとからやってきたと告げてきた。
「あやつのことだ、わしを殺しにきたのだろう! え? そうだろう貴様ぁ!」
バフォメットはぽかんとしている。
この悪魔はソロモンの命令を聞くよう、命じられている。
命令が下されていない以上、何もすることも応えることもできない。
だが、ひとつ思い出したことがあった。
ぬぅ、とバフォメットはソロモンの前に手を伸ばす。
「ひぃ! な、なんだぁ!?」
『オ手紙。渡セ。パパカラ言ワレテル』
「て、手紙だぁ?」
なぜ敵であるノア・カーターは自分に悪魔を、そして手紙を送ってきたのだろうか。
どう考えても罠にしか思えない……。
「き、貴様やはりわしを殺すつもりだろ!」
『ンモー! 手紙! 早ク! 読メェエエエエエエ!』
野獣のように吠えるバフォメット。
この悪魔がなぜ怒っているのか、ソロモンには理解できない。
まさか、命令を達成すれば、親であるノアに褒めてもらえる。
早く褒めてもらいたいから、ソロモンを急がせている……。
などと、微塵も想像できないだろう。
「く、くそ……忌々しい。しかし、なんだ、手紙とは」
ソロモンは恐る恐るバフォメットから手紙を受け取る。
『パパ。オマエ。命令。聞ケ。言ッテタ。上手ク。ヤレッテ』
「わ、わしの命令? この大悪魔の使用権を、わしに渡したというのか? 一体なぜ……」
わからないことだらけだ。
が、この手紙に答えが書いているだろう。
ソロモンは手紙を開く。
そこには、こんなことが書いてあった。
=================
お世話になってます。ノアだ。お
まえの計画などお見通しだ。おま
えにプレゼントを贈る。その悪魔
を上手く使って計画を進めるのだ。
こんどこそ、絶対に俺を殺してみ
ろ。何卒よろしくお願いいたしま
す
=================
「なんだこの妙な文面は……?」
計画が見抜かれている? つまりノアへの復讐がばれているということだろうか。
それは仕方ない。
裏切り者のナベリウスがノアに情報を漏らしたのだろう。
現に悪魔の大群はノアによって倒されてしまった。
「やはり悪魔をプレゼントとか書いてる。これをつかってノアを殺せ? どういうことだ? 訳が分からない……は!?」
そこで、ソロモンは恐るべき事実に気付いた。
「こ、この手紙……まさか! 縦で読むと!」
=================
お 世話になってます。ノアだ。お
ま えの計画などお見通しだ。おま
え にプレゼントを贈る。その悪魔
を 上手く使って計画を進めるのだ。
こ んどこそ、絶対に俺を殺してみ
ろ 。何卒よろしくお願いいたしま
す
=================
おまえをころす。
お前を殺す。
「うひぃいいいいいいいいいいいいいい! 脅迫文だぁあああああああああああああああああああ!」
やはりそうだったのだ。
文面もどこか挑発するような内容だったから。
ノアは悪魔を送り込んで、ソロモンを殺すつもりなのだ!
一方で、バフォメットはいらだっていた。
いつまでたってもソロモンが命令をくれない。
これでは、父に褒めてもらえないじゃないか。
ついに、我慢の限界が来た。
『ンモオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!』
バフォメットは唸り声をあげて、大暴れし出した。
洞窟内で暴れまわり、めちゃくちゃに、周囲を破壊し出す。
「悪魔が本性を現しやがったぁ!」
『早クパパ、褒メテェエエエエエエエエエエエエエエエ!』
ただの赤ん坊の癇癪だった。
しかしソロモンは、敵の攻撃と理解した。
バフォメットの腕が天井に当たる。
「落石! うぎゃぁあああああああああああああ!」
……悪魔の大暴れによって、ソロモンのアジトは壊滅。
その知らせはまたたくまに、カーター領へと伝わる。
「さすがですノア様! 敵を見事あざむき、アジトを壊滅させるなんて!」
「「「さノ!」」」
『パパぁ、さノさノ』
「どうしてこうなったぁあああああああああああああああああ!?」




