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96/122

96.第七王子は敵に塩(悪魔)を送る

【★お知らせ】


無能王子、書籍版が1月17日に発売されます!


挿絵(By みてみん)


めっちゃ頑張って書きました!

ぜひお手にとってくださると嬉しいです!


【特設サイト】

https://dengekibunko.jp/product/322110000027.html



 俺が悪魔を召喚した翌日。

 カーター領、領主の館、その庭にて。


「どうしてこうもうまくいかんのだ!」


 俺は一人頭を抱える。

 目の前には見上げるほどの巨大な悪魔がいる。


 名前はバフォメット。

 ヤギの頭を持つ上級悪魔だ。


 俺のストレスからうみだされた悪魔である。


『パパ。パァパ』


 こんなでかくてゴツくて怖いなりのくせに、中身が赤ん坊っていうね。

 ずっとパパと連呼してくる。


『バブちゃん、こうしてみるとかわいいっすね』


 白猫ロウリィが、バフォメットを見上げて言う。


「バブちゃんってなんだよ?」

『この子のあだ名っすよ。赤ちゃんのバフォメット、略してバブちゃん』

「くそどうでもいい……」


 じっ……とバブがロウリィを見下ろす。


『な、なんすかバブちゃん?』

『ママぁ~』


 バブがロウリィを握り締めて持ち上げる。


『ふぎゃー! わたしはお母さんじゃないっすよぉ!』

『ママ! まぁまぁ~』

『こんなでっかい赤ん坊はノーサンキューっすぅ!』


 魔神と悪魔がじゃれついている一方で、黒犬ナベリウスがため息交じりに聞いてくる。


『どうするんだノア様、これから?』


 悪魔を生み出したのは、俺を殺させるためだ。

 だがバブは俺から発した、俺を殺せと言う命令には従わなかった。


「予定通り計画を進める。バブを使っての暗殺だ」

『おまえまだそれやるの……?』


「当然だろぉがよぉ! なんのために悪魔を生み出したと思ってるの!?」

『体を張った一発ギャグ?』


「ちっげーよ! 俺が帝王ムーヴしてかっこよくやられるためだろ!」

『やめとけってまじで……』


 ナベのやつが呆れたようにため息をつく。


「ばっきゃろう! やめるもんかよ! 苦労して悪魔まで作ったんだ、利用しない手はない!」

『馬鹿に馬鹿って言われんのすごい不服なんだが』


「馬鹿じゃないですぅ、シングルタスクなだけですぅ!」


 さて、まあちょっと予定は狂ったが、計画を発表しよう。


「よく聞けペットども! くく……俺の華麗なる計画を発表する!」

『『…………』』


「聞けや!」


 しぶしぶ、といったかんじで、白猫と黒犬、そして青山羊(バフォメット)が座る。


「今回のプランは、ずばり【敵に悪魔(しお)を送る作戦】! どういう作戦かというと」

『ソロモンにバブちゃんを送るんすね』

『ソロモンを使ってバブを動かし、ノア様を殺す作戦だろ?』


 な、なぜばれたし!?


 いや、まあ話が早くていい。


「バブは俺の命令じゃ俺を殺さない。発想を変える。おいバブ」

『ナァニ、パパ?』


「お使いだ。ソロモンってやつのとこへ行け。そんで、ソロモンの命令を聞くんだ。これは命令だ」

『了解、パパ』


 悪魔にとって命令は絶対だ。

 でも召喚主である俺を、悪魔は殺せない。


 そこで、ソロモンの命令を聞けと命令する。

 ソロモンは俺のことをにくく思ってるだろうから、バブを使って、俺を殺しに来るだろう。


『なるほどっす。ノア様の命令でノア様を殺せないなら、別のやつに命令させるってことなんすね』


『悪魔が拒否するのは、召還主を殺す命令であって、殺すこと自体じゃないからな』


 天才すぎる……!


「つーわけで、今からバブをソロモンのとこへ向かわせる」

『でもうまく敵は作戦に乗ってくるっすかね』


「大丈夫、お手紙書いたから」

『お手紙?』


 俺は懐から手紙を取り出し、バブに差し向ける。


「これ、ソロモンとこいったら、渡せ。いいな?」

『ワカッタ、パパぁ。ソシタラ、褒メテクレル?』


「はいはい、ちゃんと作戦が完了したなら」

『ウン! オデ、頑張ル!』


 よしよし、うまくいきそうだぞ!


『なーんかバブちゃんが不憫っすね』

『馬鹿な親を持つと子供は苦労するって聞くぞ』


『赤ちゃんポストに突っ込んでおこうかな』

『こんなでっかい赤ん坊貰っても迷惑千万だろう』


 かくして、俺の華麗なる計画が遂行される運びとなった。

 今度こそ、成功だ!



    ★


 ノア・カーターからソロモンに、手紙が届いた。

 しかも、上級悪魔のおまけつきだ。


「くそ! 何を考えてるのだノア・カーター!」


 ソロモンがいるのはとある洞窟の中。


 唐突に山羊頭の悪魔が出現し、ノアのもとからやってきたと告げてきた。


「あやつのことだ、わしを殺しにきたのだろう! え? そうだろう貴様ぁ!」


 バフォメットはぽかんとしている。

 この悪魔はソロモンの命令を聞くよう、命じられている。


 命令が下されていない以上、何もすることも応えることもできない。


 だが、ひとつ思い出したことがあった。


 ぬぅ、とバフォメットはソロモンの前に手を伸ばす。


「ひぃ! な、なんだぁ!?」

『オ手紙。渡セ。パパカラ言ワレテル』


「て、手紙だぁ?」


 なぜ敵であるノア・カーターは自分に悪魔を、そして手紙を送ってきたのだろうか。

 どう考えても罠にしか思えない……。


「き、貴様やはりわしを殺すつもりだろ!」

『ンモー! 手紙! 早ク! 読メェエエエエエエ!』


 野獣のように吠えるバフォメット。

 この悪魔がなぜ怒っているのか、ソロモンには理解できない。


 まさか、命令を達成すれば、親であるノアに褒めてもらえる。

 早く褒めてもらいたいから、ソロモンを急がせている……。


 などと、微塵も想像できないだろう。


「く、くそ……忌々しい。しかし、なんだ、手紙とは」


 ソロモンは恐る恐るバフォメットから手紙を受け取る。


『パパ。オマエ。命令。聞ケ。言ッテタ。上手ク。ヤレッテ』

「わ、わしの命令? この大悪魔の使用権を、わしに渡したというのか? 一体なぜ……」


 わからないことだらけだ。

 が、この手紙に答えが書いているだろう。


 ソロモンは手紙を開く。

 そこには、こんなことが書いてあった。


=================

お世話になってます。ノアだ。お

まえの計画などお見通しだ。おま

えにプレゼントを贈る。その悪魔

を上手く使って計画を進めるのだ。

こんどこそ、絶対に俺を殺してみ

ろ。何卒よろしくお願いいたしま


=================


「なんだこの妙な文面は……?」


 計画が見抜かれている? つまりノアへの復讐がばれているということだろうか。


 それは仕方ない。

 裏切り者のナベリウスがノアに情報を漏らしたのだろう。


 現に悪魔の大群はノアによって倒されてしまった。


「やはり悪魔をプレゼントとか書いてる。これをつかってノアを殺せ? どういうことだ? 訳が分からない……は!?」


 そこで、ソロモンは恐るべき事実に気付いた。


「こ、この手紙……まさか! 縦で読むと!」


=================

お 世話になってます。ノアだ。お

ま えの計画などお見通しだ。おま

え にプレゼントを贈る。その悪魔

を 上手く使って計画を進めるのだ。

こ んどこそ、絶対に俺を殺してみ

ろ 。何卒よろしくお願いいたしま


=================


 おまえをころす。

 お前を殺す。


「うひぃいいいいいいいいいいいいいい! 脅迫文だぁあああああああああああああああああああ!」


 やはりそうだったのだ。

 文面もどこか挑発するような内容だったから。


 ノアは悪魔を送り込んで、ソロモンを殺すつもりなのだ!


 一方で、バフォメットはいらだっていた。

 いつまでたってもソロモンが命令をくれない。


 これでは、父に褒めてもらえないじゃないか。

 ついに、我慢の限界が来た。


『ンモオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!』


 バフォメットは唸り声をあげて、大暴れし出した。


 洞窟内で暴れまわり、めちゃくちゃに、周囲を破壊し出す。


「悪魔が本性を現しやがったぁ!」

『早クパパ、褒メテェエエエエエエエエエエエエエエエ!』


 ただの赤ん坊の癇癪だった。

 しかしソロモンは、敵の攻撃と理解した。


 バフォメットの腕が天井に当たる。


「落石! うぎゃぁあああああああああああああ!」


 ……悪魔の大暴れによって、ソロモンのアジトは壊滅。

 その知らせはまたたくまに、カーター領へと伝わる。

「さすがですノア様! 敵を見事あざむき、アジトを壊滅させるなんて!」

「「「さノ!」」」

『パパぁ、さノさノ』


「どうしてこうなったぁあああああああああああああああああ!?」

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― 新着の感想 ―
[一言] 縦読みでおまえをころすってなった瞬間、脳裏にデデン!って某bgmが浮かんだ…あれ失敗フラグなんだけどなぁ…
[一言] 奇跡のような縦読み分ですねw
2022/01/07 21:32 退会済み
管理
[良い点] 相変わらずの、さノ!いつも通りのさノ!!そんなつもりじゃなかったのに、さノwww 横書きの文章が縦書きで違うメッセージって、凄いです。ノアッチ、いつも通り変に作戦たてて失敗w 初めのイラス…
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