95.第七王子は悪魔を作り出す
あけましておめでとうございます。
本年もよろしくお願いします。
書籍版は1月17日に発売予定です!
俺、ノア・カーター!
いつの間にか悪の帝王になっていたよ!
悪魔達が俺を殺す……つもりだったのだが……。
「くそ! 想定外だ! 悪魔がこんなに弱すぎるなんてぇえええええ!」
場所はカーター領。
領主の館。
俺は一人悶えていた。
『つーか、ノア様が強すぎるんすよ……っと、王手』
『そのとおり。悪魔は弱くない。ノア様が異常。はい逆王手』
『お、やるねえナベちゃん』
ペットどもはのんきにボードゲームに興じてやがる……!
「主人のピンチに何を遊んでやがる……!」
いよいよもって俺を倒せるやつがいなくなってきがやった……!
くそ……どうすれば……!
『いないなら作れば良い、なーんて……』
「それだぁあああああああああ! ろりえもん! ナイス、あいでぃーあ!」
『うぇ!? 冗談だったんすけど……』
「そうだよ、俺を倒せるやつがいないなら、俺が倒せるやつを作ればいいんじゃないかー!」
なんてこった、天才の発想……!
『具体的にどーすんすか? また英霊でも召喚するんす?』
「いいや、違う。悪魔を作ろうと思う」
『はー? 悪魔って作れるんすか、ナベタン?』
黒犬はこくん、とうなずく。
『まあ、不可能ではない。いくつか方法はある』
「確か、①強い恐怖の感情を集める、②イケニエを捧げる、③そのほか……だったか」
こくん、とナベがうなずく。
はて、とロウリィが首をかしげる。
『ナベタンが知ってるのは、まあ悪魔だからって理由が立ちますけど、ノア様が何でしってるの?』
「前に悪魔に攻められたときに禁書庫で調べといたんだよ」
『ノア様……すげえ!』
ふっ、よせやいロウリィ。
褒めても何も出ないぜ。
『ノア様って馬鹿なのに、勉強してるっす!』
ロウリィのほっぺを俺がつねる。
「③上位の悪魔が封印されてる魔本ってやつもあるんだろ?」
『ああ。しかしおそらくはソロモンしか所有していないぞ』
「んじゃ①と②の方法を使って悪魔を作ってやろうじゃあないのよ」
俺はロウリィをぽいっと捨てる。
『強い負の感情って、どうやって集めるんすか?』
「ふっ、この領地のやつらを使って、作ってやるよぉ……くくく!」
『『あ、これ絶対失敗するやつだ』』
かくして俺の悪魔作りがスタートするのだった!
★
俺はまず、強い負の感情を集めることにした。
俺たちがいるのは、カーター領内にあるアインの村の上空だ。
『どーすんすかノア様』
白竜姿のロウリィが俺に問うてくる。
ナベが頭の上に乗っている。
「やつらに負の感情を抱かせるのだ!」
『アインの村のやべーやつらからすれば、負の感情から対極にあると思うんすけどね』
『怒り、悲しみに、憎しみ……そんな感情とは無縁の異常者どもだからな』
言われてみると確かにそうかも知れない。
「しかーし! 俺が作りたいのは強い悪魔だ。異常者すら恐怖させることができたらなら、それは強い悪魔を生み出せるってことだろう!」
俺はまず前回の魔法を使う。
「くらえ! 絶望のオーラ……レベルMAX!」
俺の背後から闇のオーラが出現する。
このオーラを見た物に強制的に恐怖を抱かせる。
「レベル1でパワーアップした悪魔どもを恐怖し殺すほどの威力だぁ! 最大レベルのこの魔法を受けたら、いくらアインの村のやつらが異常者だろうとイチコロよぉ!」
『毎度ながらノア様悪人ムーヴしてるっすね』
『やってることは悪人でも中身が馬鹿だからな』
村を覆い尽くすほどの闇のオーラ!
さぁ恐怖しろ領民どもぉ!
「あ、のあさまだー!」「ノア様ー!」「今日もかっこいですぅー!」
「なにぃいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいい!?」
領民どもが俺……と、レベルMAXの絶望のオーラを見ても、平然としてやがる!
「黒いオーラがいかしてますぅ!」「かっこいー!」「さすがノア様ー!」
まさかの領民どもから大好評!?
「そ、そんな馬鹿な!? あり得ない! どんな精神してやがるんだ!」
『ノア様はあいつらの異常っぷりなめすぎっすよ』
『で、どうするんだノア様。絶望のオーラが効かない場合は? もう終わりか?』
く、くくく……!
「この程度で諦める帝王ノアではなぁい!」
『ノア様また闇が見えてるっすよ』
『やはり人間そうそう変われないのだな』
俺は両手を天高く突き上げる。
「受けてみるがいい! 我が極大魔法を……!」
極大魔法。
それは最大威力の魔法のこと。
俺は6属性すべての極大魔法を、アインの村めがけてぶっ放す。
「ふっとべぇえええええええええええええええええええええええええええ!」
ちゅどどどどどどおぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおん!
「くはははぁ! 見ろぉ! 極大魔法の直撃を受けて! 街が木っ端みじんにふっとんじまったぜぇ!」
『たまに思うけどノア様って正義の主人公じゃないっすよね』
『周りが異常者と馬鹿でなきゃ悪役もやれると思うぞ』
くくく! 大事な大事な街を吹っ飛ばしたらよぉ!
さすがの領民どもも恐怖するだろう、怒り狂うだろう!
「「「さすがです、ノア様!」」」
「なにぃいいいいいいいいいいいい!?」
吹っ飛ばした街が、元通りに!?
「ば、ばかなぁ!? あり得ない! いったい何がどうなってるぅうううう!?」
『ノア様、発言がまた敵側っすよ』
街の中央部分で、リスタがキラキラした目を俺に向ける。
「さすがノア様です! 街の耐久テストを自ら買って出てくださってるなんて!」
「耐久テストだぁ!?」
こくん、とリスタがうなずく。
その隣に、婚約者のサラディアスがいた。
「この町をはじめとして、大ダーク帝国の街は、商人サブリーナ様主導の下、超高度な魔術結界を施された、無敵の城塞都市となっているのですわ」
「そんな馬鹿な!? 何でそんなことになってるんだよ!」
「ノア様がおっしゃられたのです、我が帝国を未来永劫、紡いでいくのだ……と!」
リスタがキラキラした目を俺に向けて言う。
『ノア様いつそんなこと言ったのだ?』
「わたしの心の中のノア様がおっしゃられました!」
心の中の俺って何!?
『すげえこのひと、ついに発言を自分ででっちあげて、自分で感心してるっすよ』
怖い、怖いよぉ……。
「ノア様のために作った防御システム、ノア様自らが試してくださるなんて! さすが一国の主! 尊敬です!」
「さノですわ!」
国民にまで浸透してる、【さノ】が!
「く、くそ! 第二作戦に移る……!」
俺たちはアインの村に着地する。
リスタ、サラをはじめとした、村人達にあっという間に囲まれる。
『第二作戦ってなんすかね?』
白竜から白猫へと戻ったロウリィがナベリウスに問う。
『悪魔の作り方その2。イケニエを捧げること』
イケニエ。つまり人間の命だ。
命を対価に悪魔を呼び出す……!
「おい貴様らよく聞け!」
「「「はいっ……!」」」
村人達が俺の前に並ぶ。
「貴様らは俺のなんだ!」
「「「身も心もノア様の所有物です!」」」
「『『ひぇ……!』』」
俺、ロウリィ、ナベがドン引きする。
いや怖すぎるわ……!
「お、おう……と、ということは、俺の言うことは絶対ってことだな!」
「「「もちろんです!」」」
「なら死ねって言ったら全員死ぬ覚悟は……」
ざしゅっ……!
「『『なにぃいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいい!?』』」
俺、ロウリィ、ナベがドン引き……通り越してる!
え、ちょっ!?
『死んだぁああああああああああ!?』
『全員刃物とか、持ってるものを使って自害しやがったぞ!』
「ば、馬鹿やろぉおおおおおおおおおお! まだ何も言ってねえだろうがよぉおおおおおおお!」
俺は大慌てで治癒魔法を施す。
一瞬で全滅した村の奴らが、復活する。
「ぜえ……はぁ……て、てめえら……異常者だって思ってたがここまでとは……」
『全員が寸分の迷いもなく自害するとはな』
『やべーっすよ化け物っすよこいつら』
全くその通りだよ!
と、そのときである。
『ノア様! 見ろ! 上空に黒い靄が!』
『不思議な魔力の反応……これは、悪魔っすね』
俺たちの頭上に出現した黒い靄は、やがて一つの形をとる。
巨大な青い山羊の悪魔だ。
人間的なフォルムだが、頭と下半身が山羊。
『ナベタン、なんすかこいつ?』
『【バフォメット】。上級悪魔の一体だ。魔導書もなく召喚してみせるなんて……無駄に凄い』
バフォメットは俺の前に着地する。
なかなか強そうじゃない?
「よぅし、バフォメットぉ! 俺を殺せぇ!」
しーん……。
「なんでじゃー!」
『パパ』
「『『パパぁ~?』』」
バフォメットが巨体をゆらしながら、俺の元へやってくる。
俺を鷲掴みにする。
「よ、よーし! そのまま俺を握りつぶせぇ!」
『パパ。オデ。ソンナコト。出来ナイ』
「どういうこと!?」
ナベリウスが真面目くさった顔で考察する。
『そうかわかった……ノア様。このバフォメット、村人をイケニエにしてできた悪魔じゃない』
「なんだって!? じゃ、じゃあどうやって?」
『ノア様の、異常者を恐れる感情から生み出された悪魔だ!』
なんだってぇえええええええ!?
『確かにカーター領民どもやべえっすから、恐怖するのはわかるっすけど、こんな大悪魔召喚するほどなんて……』
『ノア様の感情を元にして作られた悪魔ということは、つまり、子供のような物ということ』
だからパパとか言ってたのか!?
『パパ。オデ。パパ。好キ。殺ス。無理』
「「「おお! 美しき親子愛!」」」
きらきらした目を、領民どもが俺に向けてくる……!
「やはりノア様は慈悲深い! 悪魔の存在すら己の身内にしてしまうなんて!」
「しかも、傷ついた我らを一瞬で治癒してみせた……ノア様は本当にお優しい、素晴らしいおかたですわ!」
ああしまったぁあああああああ!
またやっちまった、やっちまったよぉ!
『パパ。スゴイ。パパ』
『まーたこの人、未婚の状態で子供作ってるっすよ』
あああもうどぉおおうしてこうなるのぉおおおおおおおおおおおおおおお!?
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