93.復活の、悪魔軍
第七王子ノアが、父親の幼児退行をなおした、一方その頃。
そこはゲータ・ニィガ王国南西にある、小さな小島。
島の地下深くには、天然の岩を削って作った地下城があった。
「く……くくく! ノアぁ~……貴様を葬り去る準備が、完了したぞぉ~……」
黒いフードをかぶった人物が、魔法陣の前で邪悪に笑う。
彼の前には4柱の、大悪魔が召喚されていた。
みな強力な力を放っている。
「こいつがあれば、貴様なんぞイチコロだ……! 待っていろ、ノア・カーターぁあああああああああああ!」
その様子を、部屋の端で見ている姿がひとつ。
「何やつ!?」
『やはり、貴様だったか』
影から這い出てきたのは、黒犬のナベリウス。
壁を操る力持つ。
呪力(魔力のような物)をたどって、ここまでたどり着いたのだ。
『ナベリウス!』『生きていたのか貴様!』
部屋の中には、かつての同胞、71の悪魔達がうごめいている。
みながナベリウスに強い怒りと、憎悪の視線を向けてきた。
『よぉ、ソロモン。それに、同胞諸君。ひさしぶりだな』
ナベリウスの前に立っている男は……ぱさ……とかぶっていたフードを取り払う。
そこにいたのは、かつての上司。
悪魔使いソロモン。
かつて、ノアを滅ぼす計画を企てたもののひとりだ。
72いた悪魔を率いて、殺そうとしたことがあった。
「久しいなナベリウス。よくものこのことここにこれたものだな」
ソロモンがにらんでくる。
彼が恨むのは仕方ないことだ。
「敵について、わしらをだました……裏切り者の分際でなぁ」
……かつてナベリウスを使った作戦が行われたことがある。
あのときは別に、ノア側についたわけじゃなかった。
だが勘違い&誤解の連鎖がおき、悲劇が起きた。
ノアが不調だと勘違いしたナベリウスが、それをソロモンに報告。
ソロモンはノアが不在の中を狙っての総攻撃をしかけてきた……が。
結局ノアは仮病だった。
あっさりと悪魔は全滅させられたのだ。
『あのときは……その、すまない』
純粋に申し訳なかった。
別にだますつもりは毛頭無かったから。
『ふざけるな!』『謝って許されるものか!』『食い殺してやる! 裏切り者ぉ!』
悪魔達からの憎悪を肌で感じながら、ナベリウスは気づく。
(こいつら……前よりも力が強くなっている……!)
悪魔とは、負の感情が凝り固まってできたもの。
前回ノアにこっぴどくまけた、という屈辱がパワーとなって、さらに悪魔達は力をつけたのだ。
ナベリウスがここにいる理由……。
それは、敵情視察だ。
(やれやれ、オレ様も使いっ走りが板についてきたな)
もしもノアを超えた力を、ソロモン達が備えていたら、それをノアに報告するべきだった。
カーター領には、愛すべき友達がいる。
彼らに危害が及ばないように。
だが……。
『ソロモン。裏切って悪かった。代わりに一つ良いこと教えてやるよ』
「なに……?」
ナベリウスは、はっきり言う。
『悪いことは言わん、撤退しろ』
ナベリウスは理解していた。
ノアと、そして新しいソロモンとその悪魔達の力。
両方を比べても……しかしノアと、カーター領に軍配が上がると。
「はんっ! なんだそれは。見てわからぬか、この71の悪魔達のパワーアップした姿! そして、わしが召喚した4柱の大悪魔を!」
『わかってる。わかってるからさ。無駄な戦いはやめろ、と忠告してるんだ』
今やカーター領は、ノアだけじゃない。
他にも強力な奴らがごまんとそろっている……。
正直どちらが化け物なのだというレベルで、カーター領の領民たちは強い。
挑めばやられるだろうと、ナベリウスは素直にそう忠告している。
だが……。
『裏切り者の言葉なんぞ耳を貸すもんか!』
悪魔達が騒ぎ出す。
やれやれ……とナベリウスが溜息をつく。
『本当にやめておけ。無駄死にだ』
『てめぇ!』『この!』『ぶち殺すぞぉ!』
さっ、とソロモンが手を上げる。
悪魔達の間を縫って、ソロモンがナベリウスのもとへとやってくる。
「おまえの言い分はわかった。ご忠告痛み入る」
『そりゃどうも。んで、貴様はどうするんだ?』
「ふんっ! しれたこと……作戦は続行だ! ノアを……殺す!」
悪魔達が喝采をあげるなか、ひとり、ナベリウスは溜息をつく。
『同胞のよしみで、忠告してやってんだけどな……』
はっきり言って勝てる見込みがゼロな戦いなのだ。
ソロモン達はわかってない様子だ。
「貴様こそわかってない。大悪魔の力をな」
『あ、そ。じゃご勝手に』
くる、とナベリウスがきびすを返して去って行こうとする。
だがその瞬間、ナベリウスの体が、石の槍で串刺しになる。
ズタボロになったナベリウスが、どさっ、と倒れる。
「わしが貴様を、生きて返すとでも?」
ソロモンが小馬鹿にしたように鼻を鳴らす。
『いや、思わないさ』
「!? 貴様……どこだ!?」
ナベリウスの声が洞窟内に響き渡る。
だがソロモンが周囲を見渡しても、その姿は見えない。
『不用意に【敵】陣にツッコむ馬鹿がどこにいる』
「貴様ぁ……! やはりノアの味方なのかぁ!」
『味方じゃねえよ』
ナベリウスは、一言言う。
『あいつらの……友達だよ』
気恥ずかしそうにナベリウスが言う。
だが頭に血が上っているソロモンは、顔を真っ赤にして鼻を鳴らす。
「ふんっ! 裏切ったことを後悔するがいいナベリウスぅ! 貴様もろとも、ノアも、あの領地も、滅ぼしてやるからなぁ!」
ぐっ、とソロモンが天井に拳を突きつける。
「ゆくぞ我が悪魔ども! ノア・カーターを呪い殺してやるぞぉ!」
『『『うぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!』』』
ナベリウスはその様子を見て、小馬鹿にしたように言う。
『まったく、愚かな奴らだよ。ノア様に挑むなんて。あいつ今や悪の帝王なんだぜ?』
かくして、悪魔VS悪の帝王による戦いの火蓋が、切って落とされるのだった。
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「黒執事は元ゴブリン令嬢と気ままに旅する~屋敷の全てを一人で完璧にこなす万能執事、濡れ衣で追放されましたが、クールで聖女なお嬢様と相思相愛で幸せです「我々を追い出したくせに今更何の御用です?」」
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