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92/122

92.第七王子は父親の病を治す



 英霊達をぶっ倒してしまった俺。


 その後父親を呼び出したら、なぜか幼児退行してしまった……!


 カーター領の、領主の館。


 俺の部屋にて。


「ほぎゃー! ほぎゃー! ほぎゃー!」


 いい年した大人が、ベッドの上で赤ん坊のように泣いている。


 こいつこそ俺の親父。


 城から追放されて、俺のセカンドライフは幕開けだっけか……。


「んで、ナベちゃん。悪魔の仕業ってほんとっすか?」


 ベッドに腰掛けているのは、白髪の猫耳女ロウリィと、黒髪の犬耳女ナベリウス。


 どちらも人間の女の姿になっている。


 ナベリウスはさっきまで、親父の状態を見ていた。


「ノア様の父親は、悪魔に魂を奪われてしまっている状態だ」


「悪魔に魂うばわれると、おぎゃってしまうんすか?」


「おぎゃ……? まあ魂には記憶が刻まれてるからな。奪われると当然、記憶を喪失することになる」


「おぎゃーおぎゃーおぎゃー! おぎゃぁあああああああああああああ!」


 親父が大泣きしだした。


「おなか空いたんすかね。ノア様、出番っすよ」


「やだよ!  何で俺が!?」


「ノア様のお父さんでしょ~?」


 にやにやと笑いながらロウリィが言う。

 くっそこの女、面倒ごとを俺に押しつけやがって……!


「まっま」

「ほらノア様のことママだって……って、ちょ!? なになになにぃ!?」


 親父がロウリィにのしかかってくる。


「まっま! まっま!」

「ちょっ!? ままじゃねーっすよ! あこら、おっぱいでないから! の、ノア様ぁあああああああああ!」


 親父がロウリィのおっぱいに吸い付こうとしていた。


「ばっきゃろう! それは俺んだ!」


 俺は親父を風魔法でぶっ飛ばす。


 壁に激突し、親父が沈黙する。


「の、ノア様……」


 ぽーっ、と赤い顔をするロウリィ。


「わたしのおっぱい……ノア様のって……」


「お、おう……わ、わるいかよっ」


「え、えへへ~♡ ううん、いいっすよ~♡ ノア様にあげる~♡」


「い、いいのぉ~?」


「もちろーん♡」


「「えへへ~♡」」


 はぁ……とナベリウスが溜息をつく。


「ところ構わずいちゃつくな、バカップルどもが」


 まあ冗談はさておきだ。


「これからどーすんすか?」

「どーするもこーするも、元に戻すよ。うぜえしな」


 しかし……とナベリウスが続ける。


「ノア様。悪魔に奪われた魂は、決して元には戻らないぞ。特にもう食べられたあとだと、仮に奪った悪魔を見つけ出したとしても手遅れだ」


「万事休すじゃないっすか~。どうすんの?」


 うーん……どうすっかなぁ、と思っていたそのときだ。


「ノア! 大きな音がしたがどうしたんだ!?」


「おお、駄馬兄さんじゃないっすか」


 俺の兄貴、ダーヴァが心配して駆けつけてきたのだ。


「最近駄馬兄さん見かけなかったから、死んだかと思ってたっす。生きてたんすね」


「おまえ……悪魔より悪魔っぽいこといってるぞ……」


 悪魔ナベにツッコまれる魔神ロウリィ


「こ、これは……! 親父!」


 倒れ伏す親父を見て、ダーヴァが抱き上げる。


「そうか……そういうことか……!」


 ダーヴァが俺をにらみつける。


「ノア! 見損なったぞ!」


「「「え?」」」


 俺、ロウリィ、そしてナベが、そろって首をかしげる。


「ノア……おまえ、親父を殺そうとしてたんだな!」


 ダーヴァが俺に憎しみの目を向ける……。


「何勘違いしてるんすかねこいつ」

「まあ壁にひびは入ってるし、父親倒れてるしで、勘違いしたんだろうな」


 ペットたちが解説する。


「確かに……確かに親父は! おまえを殺そうと刺客を送り込んだとは聞いた! でも! 親父はおまえの、家族じゃあないのか! それを殺そうとするなんて……! ノア! 見損なったぞ!」


「駄馬兄さん。落ち着いてっす。ノア様は別に……」


「くあっはっはっはー! その通りだぞだーーーーーーう゛ぁああああああ!」


 俺はにやりと笑って言う。


「ちょ、ちょノア様!?」「ノア様もしかして……」


「親父を殺そうとしていたのだ……この悪の帝王、ノア・カーターがな!」


「「またかよ……!」」


 まあ偶然だし殺す気もまったくなかったけど……。


 でも、今は好機!


「ねえナベちゃん。これノア様、帝王ムーヴして嫌われようとしてないっすか?」


「どうみてもそうだろう……おそらくはダーヴァに嫌悪を向けられて、これはチャンスと思ったんじゃないか?」


「今それどころじゃないのに……なんでそんなことを……」


馬鹿シングルタスクだから、新しい情報が入ると、そっちに意識が行っちゃうんだろうな……」


「ああ、馬鹿シングルタスクだから……」


 馬鹿って書いてシングルタスクって読まないでよ!


 しかしちょうどいい!

 くく……俺が何もせずとも、嫌われるチャンスが巡ってきた!


 親父の件は後回しだ!


「消えろ、我が父よ」


 ぱちんっ! と俺は指を鳴らす。


 どがぁあああああああああああああん!


「爆発魔法? 無詠唱の」

「だな。魔法名すら省略して、この威力。しかも怪我を追わないように、攻撃と同時に回復魔法を使ってる」


「無駄に技術力高いっすよね馬鹿だけど」


 そう、この目的は別に、親父を殺すことにあらず!


 自分の父をむごたらしく苦しめ、悦に浸る悪の帝王としてのムーヴを見せること!


「ノア! 貴様父上になんてことを……!」


「ふ、ふーーーはっはっはぁ! なにが父だ。ダーヴァ~……?」


 にやぁ……と俺は笑う。


「こやつは俺のことを城から理不尽に追い出したのだぞ? 恨んで当然だろうが?」


「くっ……それは……確かにそうだが……!」


「それにおまえも、親父からひどい扱いを受けていたのではなかったか? ん? 貴様も恨んでいるのではないのかぁ、ダーヴァぁ~?」


「それ……は……」


 くくく! いいぞぉ、駄馬兄を使っての帝王ムーヴ! 良い感じにはまってる!


「貴様も父親に恨みを抱いてるのなら、どうだ? 俺と一緒に親父を殺さないか?」


「そ、そんなことはできん……! おれは……おれ親父を……愛してる……!」


「はっ! これは傑作だ! 長く虐げられてきたというのに、愛してるだと? 子供を傷つけて何が父だ! 何が家族だ!」


「そ、それでも……おれは……おれはぁああああ!」


 俺たちが熱い兄弟ドラマ(茶番)を繰り広げている一方で……。


「ノア様って時々闇が垣間見えるっすよね」

「厨二病は卒業したとかいってたのにな」


 ペットたちはベッドに腰掛けてのんきに雑談してやがった。


「それでも親父は殺させない!」


「ならばどけダーヴァ。殺戮のショータイムを邪魔するようなら……貴様もそこのぼろぞうきんのようにしてやるぞぉ~?」


 こんだけあおられればさすがの駄馬兄もぶち切れるだろう。


「き、さまぁあああああああああ! ノアぁああああああああ! 親父の敵ぃいいいいいいいいい!」


 駄馬兄がツッコんでくる。


 さぁって、ちょっと強めの魔法を使いますか。


 ぱちんっ!


 どがぁあああああああああああああん!


「ちょ、ノア様殺しちゃだめっすよ!?」


「わかってるって。ちょっと派手に見えるよう調整されてるだけだ」


 爆煙の向こうに、誰かが立っている。


「双方、ケンカをやめよ」

「「お、親父ぃいいいいいいい!?」」


 爆風で上半身が裸だけど、親父だった。

 

 どうやら魔法を受け止めたらしい。


「うそぉ、治ったの!?」

「いや……ありえない。悪魔に魂を奪われた人間が、元に戻るなんて……」


 親父が駄馬兄を見やる。


「親父! 逃げよう!」


 ばしんっ! と親父が兄貴の頬をぶつ。


「お、親父……?」

「兄弟げんかは辞めるのだ。それにダーヴァ、ノアはわしを治そうとしてくれておったのだよ?」


「「な、なにぃいいいいいいい!?」」


 驚く俺、と駄馬兄。


「いや駄馬兄はともかく、なんでノア様も驚いてるんすか」


 だってそんな気さらさらなかったしな!


「そんな……ノア……そうだったのか……?」


「え? いや……ちが……」



「その通りだ、ダーヴァ」


 親父が勝手に答えてしまう!


「どことも知らぬ闇の中で、ノアの声だけが聞こえていた。親父……戻ってきてくれ、親父……と!」


「ノア……おまえ……親父を戻そうと、そんなに必死で……!」


 いやいやいや! なに感動のドラマ作り上げてるの!?


「幻聴っすよね」

「だな。夢と現実をごっちゃにしてるのだろう」


「てかこの駄馬兄さんも親父さんも結構馬鹿?」

「ノア様の家族だぞ? 馬鹿に決まってるだろ」


「ああ……やっぱね……」


 えぐぐす……とダーヴァが涙を流す。


「すまん……ノア……おれが……おれが勘違いしたばかりに……!」


「いやノア様めっちゃノリノリで親父殺そうと演技してたっすよ?」


馬鹿シングルタスクだから、そのあたり忘れてしまってるんだろう?」


「ああ、なるほど、馬鹿シングルタスクだから、感動のドラマによって、都合の悪いことが頭から抜け落ちてるんすか」


 馬鹿って書いてシングルタスクって読まないで!


 俺まで馬鹿みたいじゃん!


「てか頭打って記憶治るとか、壊れたテレビっすか」


「おそらくノア様の治癒魔法がきいたのだろう。攻撃魔法に混じっておいたやつが」


「それで不可能とされた魂の修復までしちゃうなんて、すげえっすわあの人……馬鹿だけど……」


 さて……。


 親父と兄貴が、俺の前で頭を下げる。


「ノア……すまなかった! わしが間違っていた! おまえを認める! おまえが王にふさわしい!」


「ノア! 親父を治してくれてありがとう! ありがとう、我が君よ!」


 え、ええー……なにこれぇ~……。


「はい、自分を嫌ってた親父さんまで信者の仲間入りっす~」


「どうしてこうなったぁあああああああああああああああああああ!?」

書籍版、1月18日発売です!

アマゾンさまとかで予約受付中!


そろそろ書影とか公開してきます!

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― 新着の感想 ―
[良い点] とっても良かった。家族思いの主人公に涙した。 そしてついに、読者までも次々、信者になっていく。 恐るべし。
[良い点] やっぱりwww このお馴染みでいつも通りが大好きですw ノアッチも父親も兄もシングルタスクw ノアッチのお母さんはしっかり者でしたね!また出て来てほしいです。
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