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89/122

89.第七王子は英雄たちを束ねる



 俺の下に、謎の人物(親父)から刺客が送られてきた。

 最強の英霊だというその2人は……かつての俺だった。


「くそ! どうしてこうなった!」


 カーター領の領主の館にて。


 俺、ロウリィの前には、二人の男が立っている。


「くく……このおれとしたことが、油断してしまった」


 銀髪に、黒いコート。

 やたらと銀のアクセサリーを身に付けたこいつは、闇の賢者ノアール。

 かつての、俺だ。


「うむ! まさか一般人だと思っていたら、戦闘員だったとは! 見抜けなかったおれの落ち度! 穴があったら入りたい! よもやよもやだ!」


 やたらと声のでかい、金髪の大男。

 光の剣聖ホワイトノア。

 かつての、俺だ。


「すげえ、阿呆(のあさま)が三人も集結してる」


 人間姿のロウリィが、戦慄の表情を浮かべていた。


「あほって書いてノアって読むなよ、失礼だろ」


 そう、この場において、ノア・カーターが3人も集結しているのだ!

 なんだこの会合は!



 さて、と。


「まさかおまえらが英霊として召喚されるなんてな……」


「英霊の基準ってどうなってるんすかね。馬鹿がよばれたわけっすけど……ぐぇえ!」


 ロウリィを重力魔法で押しつぶす。


「くく……その魔法。なかなかい魔法ではないか……」


 ノアールが俺の魔法を見て、にやりと笑う。

おれにはわかる……貴様、おれと同レベルの、魔法の使い手だな……!」


「同レベルっつーか本人っすけどね」


 ばっ! んばばばっ! とノアールがポーズを取る!


 うぎゃぁ! やめてぇえ!


「このおれと手を組み、世界に破滅をもたらさないか……you……!」


「ぶっ……! ぶひゃひゃひゃ! YOU! YOU! ぶひゃひゃひゃ!」


「うぎゃぁああああああ! やめてぇえええええええええええ!」


 ロウリィが腹を抱えて笑う一方で、俺は顔を隠して悶える。


 これが俺の前世!? 俺こんなキチ●イだったのぉ!?


「まちたまえ! 君!」


 ホワイトノアの野郎が、ノアールに剣を突きつける。


「あーん、なんだてめえ……?」


「おれはホワイトノア! 女神に召喚され、この世界の悪鬼を滅するためにつかわされた、聖なる剣士だ!」


「やめろぉおおおおお! 聖なる剣士とか素で言うんじゃあないぃいいいいいいい!」


 俺はまたゴロゴロと転がる。


「くく……なにが聖なる剣士だ。おれのほうが凄い……おれは……闇だぞ?」


「だからなんだ! おれは正義のために刃を振るう男! おれのほうがすごい!」


「あ? んだとこら?」


「なんだ! 勝負か! いいぞ勝負にのっても!」


 俺がゴロゴロと悶えている一方で、2馬鹿が馬鹿やってる!


「ノア様……」

「ロウリィ……」


 ロウリィがしゃがみ込み、そして……。


「ぶふぅーーーーーーーーー! おもしれぇーーーーーーーーーー!」


 ゲラゲラと腹を抱えて笑い出すロウリィのやつ!


「全員同じやつってのがまた笑いを誘うっすわ! 三馬鹿王子トリプルノアッチっすなぁ!」


「ぎゃぁあああああああ! あいつらと俺を同列にするなぁあああああああ!」


 ほどなくして。


「んで、てめえらのこれからについてだが」


 とりあえずノアールとホワイトノアはボコって魔法で縛って言うことを聞かせる。


「くくく……! 見事な拘束魔法じゃあないか。このおれと同じレベルの使い手……おれとともにこの世界を闇に染めようぞ!」


 アホ賢者が何かのたまってる……。


「馬鹿を言うな! 彼の闘気! 至高の領域に達している! おそらくは長い修練を積んだ強き剣士だろう! おれと一緒に世界を救おう!」


 バカ剣聖もまた張り合ってる……。


「わー、バカとアホが、ノア様とりあってるっす。全員同一人物なのにね」


 ほんとそれな。


 しかしどうしたもんか……。

 このバカどもをどう処理するか……。


「ノアはおれのものだ! ともに闇の魔道を進むのだ! 失せろ光の剣士!」


「断る! 彼は光の剣士道をすすむのだ! 闇の賢者はされ!」


「あーあー、ケンカしてるっすよ。仲悪いっすね、中身一緒なのに」


 ん? 仲が悪い……ケンカ……。


 くく! それだぁ!


「ノア様? だめっすよ」

「まだ何もしてないでしょうが!」


 ロウリィがあきれたように溜息をつく。


「あんたまた馬鹿やろうとしてません?」


「バカって言うな。悪の皇帝ムーヴだ」


「あ、うん。やっぱこのバカ二人と同じ魂の持ち主っすわ、あんた」


 はぁ……とロウリィが溜息をつく。


 くく……このバカどもを利用して、今度こそ! 俺の野望を達成しよう!


    ★


 ホワイトノアとノアールの拘束を解く。


 そして、彼らに【とあること】を吹き込んだ……。


 するとホワイトノアとノアールが、カーター領の隣、奈落の森へと移動した。


「ちょ、ノア様。あいつら逃がしていいんすか?」


 俺とロウリィは、茂みに隠れて、やつらの顛末を見守る。


「いいんだよ。やつらは俺の手のひらの上で踊ってもらうんだからなぁ、これから……くくくく!」


「ノア様ってまともそうに見えて、チラチラ厨二病の影がちらつくときあるよね」


 重力魔法でロウリィを押しつぶす。


 一方で、ノアールとホワイトノアが対峙している。


「悪いな光の剣士! 今から貴様は……おれ【ら】が倒す……!」


「あまいぞ闇の賢者! 君には消えてもらおう! 世界のために……! おれ【たち】の剣のさびにしてくれる」


 その様子を見ているロウリィが、はて、と首をかしげる。


「ら、とか、たち、とか。他に誰かいるんすか? てかあいつら何するの?」


 俺はにやりと笑って、ロウリィに教えてやる。


「俺はやつらに、それぞれこう吹き込んだのだ。【闇の賢者を倒そう】、そして【光の剣聖を倒そう】って」


「それって……ノアールの味方して、ホワイトノアを倒そうとして、ホワイトノアの味方して、ノアール倒そうって言ったってこと?」


「そーゆーこと」


「え、嘘じゃんそれ」


「ああ、そうだよ? それが俺の狙いだからなぁ」


 ? とロウリィが首をかしげる。


 まあ見てろって。


「ゆくぞ! 闇の賢者! はぁあああああああああああ! おれの刃が真っ赤に燃える!」


 ホワイトノアは腰に差した3本の聖剣を、装着。


 両手、そして、口に三本目の聖剣をくわえる。


「ねーねー、ノアッチ~。三本目の剣っているんすか?」


「うるっっさい!」


「三本目の剣って攻撃に関与しないよね? なんでもってるんすか?」


「剣が三本あった方がかっこいいし強いでしょ! 黙ってみてなさい!」


 くそ! 歩く黒歴史どもめ!


 生きてるだけで俺を辱めやがって……!


「ぬぅううううううううううううん!」


 尋常じゃないスピードで剣聖ホワイトノアが、闇の賢者に接近。


 そのまま斜めに切り払う。


「早すぎ……これ、普通の魔法使いじゃ、よけれないっすよ」


「だろうな。いかに闇の賢者だろうと、物理防御力が弱いからな」


「え、じゃあ終わりじゃん」


 にやり、と俺が笑う……と同時に、闇の賢者もにやりと笑う。


「そ、そんなばかな! おれの聖剣撃をもろにうけて、無傷だとぉ!」


 ホワイトノアが驚いている。

 そう、攻撃が完璧に入ったはず。


 だがノアールはノーダメージだ。


 なぜなら……。


おれには、協力者がいるからな!」


 そう、俺がノアールと組んで、やつに防御魔法および、治癒魔法を施したのだ。


 その結果、ホワイトノアの物理攻撃は無効化された次第。


「くっ! どうしてだノア! おれと一緒に世界を救おうって! 幼き頃に! 約束したじゃないか!」


「え、ノア様幼い頃に約束なんてしたの?」


 あああああ何勝手に約束したことにしてるんだよぉおおおおおおお!


 ノアールも大概だが、ホワイトノアもやばいな!


 勝手に存在しない記憶を作ってやがる!


「くははは! 悪いな! ノアはおれの協力者なのだ! 死ね、光の剣聖よ!」


 ノアールがゼロ距離で、ノータイム極大魔法をぶっ放す。


「ちょっ、いかに剣聖だろうと、賢者の極大魔法を直撃したら死ぬんじゃ……!?」


「ああ、だろうな。だが……だいじょうぶだ」


 爆煙がはれると同時に、ホワイトノアが闇の賢者に斬りかかる!


「そんな! 魔法無効障壁に! 治癒魔法だと!?」


 驚くノアールに、ホワイトノアが追撃しながら言う。


「そうだ! ノアがおれに魔法をかけてくれたのだ!」


「なっ、なんだと!? ノアはおれの協力者だぞ!」


 ふたりが力の限り戦い会っている。


 くくく……いいぞぉ、つぶし合えぇ!


「で、ノア様。これは一体どういう狙いがあるんすか?」


 無知なる白猫に教えてやろう。

 今回の計画を……!


「俺が狙っているのは、ノアールとホワイトノア、ふたりを仲良くさせる狙いがある」


「はぁ? どゆこと?」


 いいか、と俺は説明する。


「現状、あのバカどもより俺のほうが強い。それはなぜか? ノアールと違って、俺は剣聖の技を持っている。ホワイトノアとは違って、俺には賢者の魔法がある」


「あ、なるほど。一方の技術は同格でも、ノアールの場合は物理攻撃で、ホワイトノアの場合は魔法攻撃で、上回れるからっすね」


 そう、俺は二つの前世と力を引き継いで、自在に操れる。


 だが、やつらは片方しか、うまく仕えない。


「現状は理解したっすけど、だから?」

「俺を倒すためには、ノアールとホワイトノアが力を合わせなきゃいけない。だから、奴らの間にあるわだかまりを解消する必要があったのだ……!」


 同族嫌悪ってやつだろうか、ノアールとホワイトノアはいがみ合っていた。


 このままではやつらは協力して、おれを倒さないだろう。


 そこで……!


「俺があえて戦わせる……!」

「同士討ちさせるってこと?」


「違う。奴らを思う存分ケンカさせるのだ。戦い合えば、お互いに力を認め合い、やがて仲良くなるだろう」


「なるほど……ケンカしたら仲良くなる不良みたいな理論っすね?」


 そーゆーことだ。


「そこにくわえて、俺はやつらにわかりやすいように裏切り行為をした。つまりやつらの戦いが終わり、仲が良くなれば、次は……」


「裏切り者のノア様を、二人して倒そうとするってこと?」


 どがん! という激しい音とともに、ノアールとホワイトノアがぶつかり合う。


 だが俺の防御魔法のおかげで、お互いノーダメ!


「俺はやつらに防御と治癒を施している……! さぁ思う存分拳で語り合え! そして仲良く俺を倒すのだ!」


「ねー……ノア様ぁ。まーた余計な事してないっすか?」


 しゃらっぷロウリィ!


「俺が正しい……! 俺が法!」


「あ、うん。やっぱこの人、馬鹿ノアール阿呆ホワイトノアと同じひとだわ」


    ★


 ほどなくして、体力がキレた二人は、互いに大の字になって倒れる。


「やべえっすわ。戦いの痕……」


 台風でも通り過ぎたかのように、周りはめちゃくちゃになってる……!


「ぜえはあぁ……やるな……ホワイトノア……」


「はぁ……はぁ……きみこそ、ノアール。ナイスファイトだ!」


 よーし! 狙い通りやつらは仲良くなってるぞぉ!


 さぁて、本番のスタートだ!


「くくく……! 愚かだなぁ賢者、そして剣聖よぉ!」


 悪の帝王こと、俺、参上……!


「貴様は俺の手のひらの上で、踊らされていたというのになぁ……!」


 すると二人が……こういう。


「「やはりか……! さすがだな!」」


「ふぁ……!?」


 あ、あれぇ?

 なんか……俺の思ってたリアクションと、違うぞぉ?


「くく……さすがだなおれよ。まさか、我ら【三人】を仲良くするために、一芝居打つとは。たいしたものだ」


「ん? んんー? ノアールくん? いま、三人っておっしゃりました~?」


 がしっ、とホワイトノアが俺と肩を組んで、涙を流す。


「ノアよ! さすがだな! 君はおれたち三人の絆を深めるため! あえて悪役のふりをしていたんだな!」


「んんー!? ほ、ホワイトノアくーん? 今三人って……」


 ノアールが近づいてきて、三人で、肩を組むような体勢になる……!


「ノアはこう言いたかったのだろう。我らが戦っても無意味であると」


「この力は! 力なきもの達を救うために振るうべきもの! 強きもの同士で戦う意味はない! そう教えたかったのだろう!?」


 え、ええー……なにそれぇ~……。


おれは理解したぞ。貴様の……いや、おまえの考えを。我ら三人、力を合わせて、この世界を平和にしようぞ」


「君とノアールくん、そしておれがいれば! 怖いものなしだ……! 一緒に世界を平和にしよう! なっ!」


 あ、あれあれぇ~?


 なぁんでこいつら、俺に好意を向けてるのぉ~?


「そりゃ端から見れば、あんたが二人の仲を取り持ったいい人になるでしょうが」


「マジで!?」


 ああくそ!

 最悪だ!


 共通の敵となるはずだったのに、なぜか共通の友になってるうううううううううううう!


「さすが三馬鹿王子トリプルノアッチ。息ぴったりっすね。全員同じだけあって」


「どうしてこうなったぁあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!?」

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― 新着の感想 ―
[一言] 前世は前前世の記憶なくしてる?
[良い点] トリプルアホッチ!じゃなかったトリプルノアッチ!仲良くなって良かったw 冒頭から「どうしてこうなった!」は確か初めてですねw [気になる点] アホと馬鹿とその複合体(ノアッチ)で、ますます…
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