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88/122

88.第七王子は黒歴史と対峙する



 俺の部屋に、1通の手紙が送られてきた。


『ノア様、なんすかこの手紙?』


 机の上に、白猫ロウリィが座っている。

 赤い紙を折って作られた手紙を、前足でちょんちょんとつつく。


「今朝方俺宛に、フクロウが運んできた」

『なんであけないんすか?』


「ロウリィくん、読んでみたまえ」

『? いいっすけど』


 ロウリィが手紙に触れた瞬間……。


『ふぎゃぁあああああああああ!』


 手紙が変形して、人間の口みたいになった。

 手紙がガブリッ、とロウリィの尻を噛んだのである。


『噛んだ! 手紙が噛んだ! なんすかこれぇ!?』


「吠えーるメールって魔法の手紙だ。紙に意思をもたせ、遠く離れた相手に声を届けられる」


『ふぎゃああああああ! ノア様へるぷみーーーーーーーーー!』


 俺はロウリィのケツにくいついた、吠えーるメールを引き剥がす。


『わかってたなら、言えや!』

「え、やだよ。俺触りたくないし」


『人にやられて嫌なことやっちゃだめって、習わなかったの!?』


「習ってないぜ★」


『無能王子がぁあああああああああ!』


 なんか久しぶりに聞いたな、そのフレーズ……。


 懐かしいぜ、親父がよくいってたっけか……。


『で、そのメール誰からなんすか?』


 メールが空中に漂う。

 そして……声を発する。


【くくく、久しぶりだなぁ。ノア・カーター。わたしが誰かわかるかなぁ?】


『声を魔法で変えてるっすね。なるほど、犯人が特定できないようにっていう工夫っすか。相手はなかなかの知能犯っすよ』


 ロウリィがなんか解説っぽいことを言う。


「え、親父からのメールだろ、これ」

『え、なんでわかるんすか?』


「? 込められた魔力から、個人特定出来るよね普通?」


『しまったあんたそういう無自覚にすげえ人だった!』


 しかしなんで、親父が吠えーるメールを送ってきたんだ?


【わたしは……貴様に強い恨みを抱いているもの、とだけ言っておこう】


「いや親父なの知ってるから」

『親父さん不憫っすね……相手はわかってないって思ってるのに……』


 まあおとなしく要件を聞いてやるか。


【わたしの目的はただひとつ、ノア! 貴様をこの世から葬り去ることだけだぁ!】


「? なんで親父ってこんな怒ってるの?」


『そりゃ息子に、自分の王国を潰されて、しかも王になられたら怒りますよ、普通』


 はーん、そういうもんかね?


【貴様に復讐するべく……わたしはそちらに刺客を送り込んだ!】


「なっ!? 刺客だとぉ!?」


【しかも歴代最強の英霊を現世に呼び出した! くははは! どうだぁ! ノアぁ! おそろしかろぉ!】


「ありがとう!」


 なんだよ親父ぃ!

 結構息子思いじゃんかー!


【貴様の震える姿が目に浮かぶぞ……くははははっ!】


『なんか、ほんと可哀想っすね国王さん……』


 いやはは! しかし親父も粋なことをしてくれるう!


 反逆こそ、俺が求めていたもの!


 そう、俺は反逆者に討たれた暗君として、歴史に名を残したいのだぁ!


「いや親父ってこんな息子の欲しいものピンポイントで贈る、いい親父だったなんてなぁ。もうちょっと親孝行しておけばよかったかな?」


『自分の子供の命を奪おうとしてる時点で良い親父じゃないっすよ……まったく……』


 吠えーるメールはまだ続いていた。


【まもなく2体の最強の英霊が、貴様を討ち滅ぼすべく、カーター領に到着するだろう。そのときまで震えて、その首を洗って待ってるんだなぁノアぁ! しゃーっしゃっしゃっしゃーーーーーーー!】


 吠えーるメールは、まるで炎にくべたように、ボロボロの灰になって消えた。


「いやぁ、待ち遠しいなぁ!」


 俺は椅子にふんぞり返って座る。


『どーすんすか、相手は最強の英霊、しかも2体もっていうし』


「別に、俺はココでその英霊とやらを待ち受けるだけよ。適当に戦って、やられるふりする。これにて反逆終了! 悪の大ダーク帝国は滅びたのだった!」


 くくく……! 笑いが止まらない……!


「まさかこんなに早く反乱が起きるとはなぁ! 今回ばかりは天が味方してくれてるとしか思えんなぁ!」


『いやいつもいつも天が味方しまくって、なんだったらてんこ盛りで幸運を運んできてるじゃないっすか』


「よぉうし、英霊ぃ! さっさとかかってこんかーい! このノア・カーターが! 華麗にやられて見せようぞぉ!」


 くははははは!


『まーでも、ノア様は本当に死ぬつもりはないんすよね?』


「ったりめえだろ。やられたふり。だいたい俺がそんじょそこらの英霊程度にやられるわけねーだろ」


『そりゃそっすね! ノア様を殺せるやつなんて、この世にいないっすもんね!』


「だろぉ~?」


 と、そのときだった。


「ノア様!」

「おお、サラ」


 ちょうどいい……くくく! ここで俺の命が狙われてることを公言しておこう。


 理由を適当にでっちあげて……余計な邪魔を入れないようにしないとな。


「聞け。サラ、どうやらここに刺客が送り込まれたようだ」


「はい! 存じてます!」


「そこで………………え? 知ってるの?」


 うそだろ?

 まだメールが来たばかりだぞ?


「そ、そうか……まあなら話は早い。そいつらと俺が戦うから、貴様らは退去……」


「もう捕まえました!」


 ……。

 …………。

 ………………ん? んん!?


「え、つ、つ、捕まえた!?」

『ど、どうやって!?』


 驚愕する俺とロウリィ。

 サラは得意げに胸を張る。


「我らカーターの民をなめないでください! 大ダーク帝国の帝王の臣下ですよ? それにふさわしい力を持ってないといけないと、日々精進していたのです!」


 コソ練してたってこと!?


『あとノア様からもらった恩恵ギフトの力とかがあるし。それに天道教会とかやべえ強い奴らおおいじゃないっすか、今』


 くそ! 知らぬ間に強くなってやがって!


 ま、まあいい……。


「生け捕りにしたんだろうなぁ?」

「もちろん! 相手が油断してる隙に、みなさまで捕らえました!」


 あ、なるほど、油断してたのね。

 くくく、間抜けな英霊もいたもんだなぁ!


「くく……ならいい。このノア・カーターが直々に裁いてくれる!」


 相手が生け捕りなら、ちょうどいい。

 邪魔者を排除して、見えないところでやられたってことにすれば!


「して、その英霊とやらどこに?」


「はい! 連れて参りました……ここ!」


「おう……って、えええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええ!?」


 そこにいたのは……。


 賢者、ノアール。

 そして、剣聖ホワイトノア。


「俺じゃねええええええええかぁああああああああああああああああ!」

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― 新着の感想 ―
[一言] つーか、この二人をまとめて捕縛できるってことは、カーター領のひとって、剣聖、賢者より強いってことだよね? どーやって鍛えた?(笑) ノアっちよかったね?あなたを倒せそうな逸材一杯いるよ?…
[一言] 遠回しに褒められているノア様! 過去の自分が英雄だと親に認められて良かった!
[一言] 最後のオチにワラたw
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