表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

86/122

86.和解と、神への新たな挑戦者



 世界が俺の手によって、統一されてしまった……!


 その日の夜。

 カーター領にて。


「どうしてこうなるんだよぉおおん!」


 領主の部屋にて、俺は頭を抱えている。


 テーブルの上には白猫姿のロウリィがいて、溜息をつく。


『まさか、大ダーク帝国が、世界征服完了するとは思ってなかったすね……。悪の帝国って、普通は滅ぼされるのがセオリーなのに』


「まったくだよぉ……!」


 俺……というか、闇の賢者ノアールを首魁として設立された、大ダーク帝国。


 リスタの絶妙なお節介もあって、ついに100%の支持率の元、帝国は成立した。


『世界は厨二病患者をトップとして、まとまるのでした……めでたしめでたし』


「めでたくねぇええええええええええええ!」


 はぁ……と俺は吐息をついて、深々と椅子に座る。


 机の上でロウリィが、人間の姿へと変化。


「まーでもほら、逆に考えるんすよ。これでもめ事は起きないじゃないっすか」


「そうかなぁ……?」


「そうっすよ。だって世界は統一されたんすよ? 妙な対抗勢力が出てこなくなったんすから、やっかいごとは減った……と考えたホーがいいっす」


「そのかわり、1億倍くらい面倒ごとが増えたけどね……!」


 世界を征服した組織のトップだぞ!?

 どんだけ仕事が増えたと思ってるんだよ!?

 

 ああもう……!


「せっかく恋人とイチャイチャパラダイスできると思ったのになぁ」


「ふ、ふーん……」


 ロウリィがそっぽを向いて、頬をかく。


「い、いちゃいちゃ……したいんすか?」

「おう、当たり前だろ」


「ふーん……」


 ロウリィは机の上から降りて、俺の膝の上に乗っかる。


 ふにっ、と柔らかな太ももの感触が。


「こーしたいってこと?」

「ああ、まあな……つーか、重い。降りろ」


「いやっす」

「あ、そ……」


 俺らはしばし無言で、やがて、俺の方から口を開く。


「悪かったな。いろいろ、勘違いしてよ」

「こっちこそ、ごめんなさいっす。こっちの不注意で、いろいろめんどうなことになって」


 まあ元はといえばこの女が、勘違いさせるような発言をした。


 そのせいで俺は闇落ちして、大ダーク帝国(笑)なんて作る羽目になったのだが……。


「ま、気にすんな」


 ぽんぽん、とロウリィの白髪をなでる。


「ナベの貴い犠牲もあって、俺たちはついに恋人になれたんだからよ」


「ナベちゃん……草葉の陰で、きっと喜んでるっす。見守っててね……」


 俺たちは天井を見上げる。

 大きな、ナベの笑っている姿が、映る……。

『人を殺すなバカップルが』


「「ナベたん!」」


 机の下の影から、のそりと体を出す。


「おまえ生きてたのか?」

「てっきりリスタに殺されたのかと思ってたっす!」


『ああ。死ぬ前に、分身体を影のなかに残してなかったら、やばかったがな』


 ロウリィは俺の膝から降りて、黒犬ナベのことをぎゅっと抱きしめる。


「ナベちゃん、ありがとっす。いろいろと、根回ししてくれて。おかげで念願叶ったっす」


『ふん。まあオレ様には関係ないが、まあ……良かったんじゃないか』


「うぃっす♡ あざっす!」


 ぎゅーっ、とロウリィがナベの首を抱きしめる。


 そっぽを向くナベだが、目元がどこか柔らかかった。


「おいおい悪魔は意地悪なんじゃなかったのか? キューピッドにでも転向したら?」


ごみの使いっぱしりになるくらいなら、のあさまのぱしりでいるほうがましだよ』


「ちがいないっすね!」


 ロウリィがクスクスと笑う。

 ナベもまた、フッ……と静かに笑う。


 俺もまあ、なんだかんだうれしくて笑ってた。


「ま、これでもう、俺の邪魔するやつもいないだろうし、絶対この先、何も悪いことは起きないだろうなぁ」


「『おいやめろ』」


 ロウリィとナベリウスが、止める。


「あん? なんだよ?」

「不穏なこと言わないでほしいっすよ」


『まったくだ、縁起でも無い。まるで隠れていた敵が、出てくるようなフラグにしか聞こえなかったぞ?』


 ペットどもが不安そうな顔を向ける。


「はんっ! おかげさまで大ダーク帝国は世界統一が完了してるんだ。敵? おいおい、どこにいるんだこの世に?」


「でも……国がまとまったとはいえ、国のなかにはノア様を快く思ってない人もいるかもっすよ?」


『そうだぞ。例えば貴様の……』


「あーあーもう今日は疲れた! 寝ます!」


 俺はペットどもをおいて、部屋を出る。

 もういろいろ考えるのは、明日にしよう!


「おやすみ!」


    ★


 ノア・カーターが世界を統一した、一方その頃……。


 かつて、ノアがいた王城にて。


「くそ! ノアめ! 調子に乗るな、あの愚息めえ!」


 城の地下には、一人の男が怒りの表情を浮かべていた。


 彼は……ノアの父。

 ゲータ・ニィガ王国の、【元】国王だ。


 そう、大ダーク帝国が、ゲータ・ニィガ王国を取り込んだことで、王座を追われてしまったのだ。


 出来の悪いはずの、息子が。

 父親の地位を、奪ったのである。


「許さん! わしは、絶対にやつを許さんぞぉ!」


 国王がいるのは、地下の書庫。

 

「【あやつ】からもらった、この【聖なる遺物】があれば!」


 国王の手には、1本の聖剣……。


 それは、ノアがかつて使っていた聖剣。

 第三聖剣ファルシオンの姉となる。


 第二聖剣【グラディオン】。


 そして、片方の手には……。


【福音書】。

 それは、闇の賢者ノアールが、かつて書き記した書物。


「【あの男】の言うとおりなら、これら遺物を使って召喚ができるはずだ……」


 召喚。

 遠くの地より、従魔サーヴァントを呼び出す魔法の一つ。


 国王の足下には魔法陣が引かれている。


 水銀で作られた魔法陣の上に、聖剣と福音書を置く。


「我が呼び声に答えよ! 偉大なる英雄達よ!」


 国王は、教えてもらったとおりの呪文を唱える。


 水銀がうごめき、輝き出す。


 膨大な魔力が、遺物のなかから吹き出す。


 ごぉ……! と光の柱が天をつく。


 そして……光が収まると同時に……。


 二人の、【英雄】が立っていた。


「おお! 召喚は成功だ! 英雄を、呼び出すことに成功したぞ!」


 英雄。それは、強大な力を持って、偉業を成し遂げた男の名前……。


 国王は、聖剣と福音書を使って、それらに関連する英雄を、過去から呼び出したのだ。


「く……くくく! 誰だ……このおれを呼んだのは?」


 まず、そこにいたのは、銀髪の男。


 体中に銀のアクセサリーを身につけている。

 黒いコートに、指ぬきの革手袋。


「うむ! ここはどこだ!? 誰だ! 誰かがおれを呼んでいるぅうう!」


 その隣に居るのは、金髪の青年。


 真っ白な服に、真っ白なマント。

 その腰には三本の聖なる剣を携えている。


「成功だ! 闇の賢者と、光の剣聖を、呼び出すことに成功したぞぉ!」


 ……そこにいたのは、闇の賢者ノアール。

 そして、光の剣聖と名高い、ホワイトノア。


「ノアール、そしてホワイトノア! 歴史上、最も強いとされた、二人の英雄をわしは呼び出したのだぁ!」


 ノアールとホワイトノアは、召喚主である国王を見下ろす。


「ふっ……おれを悠久の眠りより覚ますとは……それほどまでに、お困りの様子かな?」


「なにー! 困りごとだと! それは大変だ! おれが対処する! 何に困ってる!? 敵か! 敵だな! うぉおおおお! みなぎってきたぁああああああああああ!」


 ノアールとホワイトノアに、国王は言う。


「貴様らには、一人の男を倒してもらいたい」


「ほぅ……」「そいつは誰だっ!?」


 国王は懐から1枚の写真を取り出す。


 赤いマントに、死んだ目つきの男……。


「ノア・カーター。この世界を統一した、悪の親玉だ。こいつを貴様らの手で、葬り去っていくれ」


 ……かくして。

 世界を巻き込んだ、マッチポンプ戦が終わったと思ったら。


 今度は、黒歴史×2との戦いの火蓋が……切って落とされようとしていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] 黒歴史との戦い...誰もが避けては通れない道、この勝負に勝って黒歴史と決別をする聖戦
2021/11/29 04:49 退会済み
管理
[良い点] やっと、世界を手にして、めでたしめでたし…と思ったら、まさかのノアッチダブルがw 今のノアッチが一番強そう?仲間もいるし。ノアッチ、初め暑苦し…熱血で次は中二病…大人しく、最後は無気力!人…
[一言] え!? 完結、最終話間近だと思って油断してた^^;
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ