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85/122

85.第七王子は平和の神となる(定期)



 俺、ノア・カーター!


 愛しのロウリィにフラれたショックで闇落ちしたけど、勘違いに気づいたよ!


 これで二人はラブラブチュッチュだと思いきや!


 なんと闇落ちした俺ことノアール率いる大ダーク帝国は、この世界の9割9分を支配していた!


 残りはカーター領だけ。

 今まさに、闇の賢者率いる大ダーク帝国VS俺率いるカーター領の大戦の火蓋が切って落とされようとしていた!


「って! どっちも俺だよぉおおおおおおおおおおお!」


 カーター領、領主の館。


 俺はひとり、ベッドの上で転がっていた。


「うわぁああん! なんか知らぬ間にやばいことになってるよぉおおおお!」


 世界大戦、勃発してるしぃ!


『まー、どんまいっすわ』


 可愛い白猫がベッドの上でぐでーんとのびをしている。


「元はといえばてめえのせいだろうがよぉ!」


『いや、アホみたいな勘違いをした、貴様が悪いぞ、ノア様』


 ベッドの陰から、にゅっ、と黒犬ナベリウスが顔を出す。


『そーだそーだ、ノア様のあほ~』

『いやロウリィ、貴様も大概あほだが……お似合いあほカップルめ』


「『いやぁ、それほどでも~♡』」


『一切褒めてない……ったく……』


 ペットどもを含めて、俺はこれからの作戦を立てる。


『んで、どーするんすか、この大騒ぎ』


「記憶リセットかな」


 前にやった、全世界の人の意識を改変する魔法。

 

 あれを使おうと思う。


『やめておいたほうがいい』

「あんでだよ?」


 ナベリウスが言う。


『敵側のリスタには、ノア様のことを絶対忘れないスキルを持っている』


 そー言えばそんなもんもってたような……。


『さらに鑑定魔法を使ってわかったが、やつには【狂人】スキルが備わっている』


『なんすかそのやばめなスキル……』


『思想を周囲に伝達するスキル……まあ洗脳だな。つまりノア様への崇拝する気持ちを、他者に植え付ける力を持つ』


「がち狂人じゃねえか!」

『やべーやべーって思ってたっすけど、ついに一線越えた感ありますね……』


 つまりリスタをどうにかしないと、記憶リセットが通じないってことか……。


『殺すしかないのでは?』

「ばかやろう。できるかよ」


『なぜだ?』


 ……なぜと言われても、困る。

 俺がやりたくないからだとしか言えない。


 女子供に、刃を振るえるかってんだ。


「……やりたくないもんやりたくない」


『ふふ……ノアッチは優しいっすね』

『甘いんだよまったく……』


 ナベリウスはあきれつつも、どこか優しい声音で言う。


 洗脳リセットは通じないと……。


「もう……方法は一つしか無いな」


 にやり、と俺は笑う。


『『待て、ちょっと待て』』


 ペットどもが俺を止めようとする。


「サラ! サラはどこだ!」

「ノア様! お呼びでしょうか!」


 1秒で俺の部屋に、サラが入ってくる。

 え、外で待機でもしてたの? こわ……。


「これより作戦を伝える。領民どもを集めろ!」


「もう集まってます!」


 え、俺が言うまで待機してたの? こわ……。


「そ、そうか。では参る!」


 俺は部屋の窓を開けて、外へジャンプ。


 浮遊魔法を使って、下の奴らを見下ろす。


「うおお! ノア様だぁ!」「今回もノア様の天才的作戦が炸裂するぞぉ!」


 ひょっこり、とロウリィが俺の肩に乗っかっている。


『今までノア様が天才的作戦だったことって一度もないっすよね』

 

『ほんと、それ』


 俺の隣に、翼をはやした黒犬が飛んでいる。

 ええい、やかましいペットどもめ。


『ノア様、だめっすよ?』

『わかってるからな、貴様がこれからまた無能ムーヴしようとしてるの!』


 な、なんだペットどもはわかっていたのか……。


 くくく! このノア・カーターの、天才的な作戦を。


『『やめろってばマジで!』』


「よく聞け貴様ら……! これより我らカーター領は……」


 すぅ……と息を吸い込む。


「大ダーク帝国に、降伏を、するー!」


『こ、降伏……?』

『負けを認めるということか……?』


 ぽかんとするペット+カーター領民ども。


「そ、そんな!」


 振り返ると、窓からサラが顔をのぞかせていた。


「邪知暴虐のノアールを、このまま放置するというのですか!」


『その邪知暴虐の人が婚約者だって気づいてないんすかねこの人……』


『基本的にみんな盲目だからほら……』


 俺はフッ、と笑って言う。


「俺を信じてくれ、サラ。俺はいつだって……おまえ達カーターの民を愛してる」


『『う、うそくせえ……』』


 はい、嘘です!


「……わかりましたわ。皆さん、ノア様の言うとおりにしましょう」


 こうして、俺はカーター領民どもをつれて、大ダーク帝国に降伏しにいくことになった……


 と、思っているようだが、実はちがーう!


 このノア・カーターによる、無能ムーヴ、とくとご覧じろ!


    ★


 俺はカーター領民どもをつれて、クロヨン(ダークノワール以下略)の本拠地へと乗り込む。


 大聖堂の入り口の前には、武装した聖騎士ども。


 大ダーク帝国は母体を神聖皇国の天道騎士団としているからな。


 聖騎士の群れの中に、教皇エルレイン、リスタ、そして……闇の賢者ノアールが居る。


『くそ……ノア様。こんな恥ずかしい格好させやがって……! 覚えてろよぉ!』


 影武者として、ノアール役にはナベリウスに任せている。


 あいつは影を使って姿を変えられるからな。

「してノア・カーター。貴様ーなにをしにきたー」


 ナベリウスに、俺が念話テレパシーでしゃべる内容を教えている。


 ちょっと棒読み過ぎるぞ!


「偉大なる闇の賢者様よ……どうかこの哀れなる領主の願いを聞いてくれ……!」


『哀れな領主って点においてもっともすぎるっすね』


 ふぎゅっ、とロウリィを右手でにぎりつぶす。


「な、なんだー。ねがいをいってみろー」


 俺は一歩前に出て……頭を下げる。


「降伏する。おまえの仲間に入れてくれ」


 ここまでは、シナリオ通り。


『それは、貴様らカーター領民を、わが大ダーク帝国……ぶふっ、入れてほしいってことか?』


 おいナベてめえ笑いやがったな!

 大ダーク帝国、かっこいいやろ名前!?


 さて、俺の返答は……こうだ!


「いいえ!」

「『は……?』」


 ナベも、ロウリィも、目を丸くしている。


 俺はくるりと反転させて、言う。


「この俺だけをお助けください、ノアール様ぁあああああああああ!」


『「えーーーーーーーーーーー!?」』


 げはは! これこそが無能ムーヴ!

 名付けて!


【敵軍の将の俺、愚かなる領民どもを手土産に、自分だけが寝返ってしまう】作戦!


『最低!』「最低!」『「マジで最低ーーー!」』


 ペットどもが最低を連呼してるがいいのだ!


 そう、こうすれば……。


「そ、そんな……ノア様……」


 サラディアスが、ほら、青い顔をしている。


 くくく! カーター領民どもも、同じ絶望フェイス!


 そうだよなぁ! 頼りになる領主様が、自分たちを売ったんだからなぁ!


「の、ノア貴様! 最低だぞ! 領主として恥ずかしくないのか!」


『ナベちゃん演技演技。本音もれてるっす』


「げへへへ~。ノアール様ぁ。俺は自分さえ助かればそれでいいんですぅ」


 俺はノアールのもとへかけより、へこへこ頭を下げながら、ごまをするように手をこする。


「さぁさぁ! 悪魔の民を捕らえてくださいよぉ! ノアール様ぁ!」


 こうすることで、カーター領民たちからは、嫌われる!


 さらに、大ダーク帝国のやつらからも、見方を売った最低の領主ってことで、嫌われる!


 あとはノアール役にナベをおいてけば、ほら! 最大級の戦犯として、歴史に名を残す無能領主になれるって寸法よぉ! しゃーっしゃっしゃ!


『ノア様すごい! 最低! そこにしびれるぅ! まったくこれっぽっちも憧れ無いっすけど!』


 ふっ……よせやいロウリィ。照れるぜ。


「ノア様……!!」「我らを見捨てたのですか!」


 くくく……効果抜群よぉ。


 勝った! 無能王子……これにて、完!


 と、思ったそのときだった。


 ドスッ!


「『え?』」


 ノアールの胸に、長剣が突き刺さっていた。

 後ろを見ると……。


「り、リスタぁあああああああああ!?」


 リスタが、剣を構えて、ノアールを串刺しにしたのだ。


「滅っせよ、悪魔! 【ターン・アンデッド】!」


「ふぎゃぁああああああああああああああああああああああああ!」


 リスタの使った神聖魔法が、ノアール(ナベリウス)の体を消し飛ばす!


「『な、ナベぇええええええ!』」


 跡形もなく消し飛んだ、ノアール(ナベリウス)……


「ノア様……すべて、計画通りですね!」


「『ふぁ……!?』」


 え、なに?

 計画って……え、なに?


「リスタ様、これはいったい、どういうことですの……?」


 呆然とするだいかんしゅうの中、サラが尋ねる。


「これはすべて、ノア様の遠大な計画だったのです!」


「「「んなっ!? なんだってー!?」」」


 サラも、観衆も、そして俺でさえも驚く。


 なんだよ遠大な計画って! 初耳だよ!


「すべてはノア様の、計画でした。世界に争いが無くならないのはなぜか……そう! それは全人類がノア様の素晴らしさを知らないからです!」


『とんでも理論っすね!』


「そこで一計を案じたノア様は、自らノアールという悪役を演じたのです。人類共通の敵とあえてなることで、人民を一致団結させようと!」


『敵っつーか世界の9割9分が闇に染まってましたけど!? それにノア様のやってたのって善行でしたよ全部!?』


「そして計画は最終段階……ノア様という悪役をもとに、全人類が一致団結したとき……自ら命を絶ち、世界を平和にする! それこそが! ノア様の計画だったのです!」


「「「なんだってぇええええええええええ!?」」」


『いや本人が驚いてる時点で勘違いにきづけっすよぉ!』


 こいつ何をどう解釈したらそうなるんだよぉ!


 しかもそれ俺が死ぬことになってるし!


「そしてノア様の見事な計略により! 世界は一つにまとまったのです! ノア様があえて悪人を演じることによって!」


「「「おおぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!」」」


 その場にいた全員が涙を流す。


 いやいやいやいや!


「お見事です……ノアールとしてクロヨンを率いて、世界の9割9分をまとめあげ。そして最後にあえてカーター領の人たちを裏切るようなまねをすることで、100%……完全なる悪となり、死ぬ……なんと見事な手際! さすがです!」


「いや俺生きてますけど!?」

『犠牲となったのナベちゃんっすけど!?』


『い、生きてるぞぉ~……』


 あ、俺の影の中でナベの声がする。

 多分身の危険を感じて、分身を残していたのだろう。用心深いやつめ。


「これぞノア様の計画……【黒の鎮魂歌(ノア・レクイエム)】!」


「! 【黒の鎮魂歌(ノア・レクイエム)】……! それは……!」


 エルレインが声を震わせる。

 リスタがうなずいて、懐から……一冊の本を取り出す!


「そ、それは!」

「闇の賢者ノアール様が書き記した福音書のなかに……この計画は書いてありました!」


「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!」


『ノア様しっかり!』


 過去に書いた、俺の黒歴史ノートが!


 リスタのやろう、読んでやがったのかぁ……!


「ノア様がノアール様と名前とお姿を偽って活動したとき、私、ピンと来たんです。ノア様はこれを実行なさろうとしてると!」


 リスタは敬虔なる教徒のごとく、黒歴史ノートを後生大事に抱いて、感じ入ったような声で言う。


「ノア様は……はるかな昔から、世界が平和になるようにと、計画を立ててらっしゃったのです……」


「「「す、すげぇえええええええええええええええ!」」」


 わぁあああ……! とその場にいた全員が大歓声をあげる。


 みんな……ああ、みんな……同じ顔してるよぉ……。


「はじめはノア様の計画、違うのかなって思ったんです。あえて悪役になるの。でも今日、ノア様が悪役を演じて、カーター領の皆さんを裏切ったことで確信を得たのです! これは一分の隙も無いくらい、完璧に作り上げられた計画なのだと!」


『あーあー……結局、原因はノア様の無駄な無能ムーヴなんすねぇ……その結果、大観衆の前で、有能っぷりをさらしてしまったと……』


 もはや、諦めたような表情の、ロウリィ。


 俺は頭を抱えて……そう、いつも通り、こう叫ぶのだ。


「どうしてこうなったぁああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!?」

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― 新着の感想 ―
[一言] ノアールはゼロだった!? (黒の騎士団・・・!)
[一言] あぁぁぁあぁぁあ!ノアのハーレム第3号のナベが!死んだ〜!(泣) 個人的に結構気に入ってたのに〜
2021/11/25 04:15 退会済み
管理
[良い点] (あかん) [気になる点] (アカン) [一言] \(●)/
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