84.闇の賢者は策謀を巡らせる
俺ことノア・カーターは、一度は闇落ちしたものの、ロウリィの愛の力で正気を取り戻した!
だが……同時に世界大戦という、やべえ事態に巻き込まれようとしていた!
「どうしてこうなった……」
場所は神聖皇国内にある、大聖堂にて。
俺たちダークノワール以下略団は、ココを拠点としている。
『ノア様ぁ~……どうするんすかぁ、この事態』
俺の膝の上には白猫が座っている。
ロウリィ、俺の愛すべき可愛い猫だ。
「うーむ……とりあえず現状をまとめてみよう」
現状、俺たちダーク以下略団は、世界の6割を手中に収めている。
『全世界の6割の土地と人を手中に収めるって、冷静に考えてやばいっすね……』
「世の中バカばっかりだな」
『ほんとそれ』
「『ねー』」
そこへ……ずぉっ、と俺の影から、黒犬が顔を出す。
「おお、ナベ」
『ナベちゃん! ありがとーっす!』
ぴょんっ、とロウリィが俺の膝から降りて、ナベリウスの頭の上に乗っかる。
『ナベタンのおかげで仲直りできたっす! せんきゅー!』
ちゅっ、と感謝のキスをする。
「あっ! て、てめえロウリィ! 早速浮気かよ! ふざけんなふざけんな!」
するとロウリィがやれやれ、と溜息をつく。
『相手は犬っすよ~。んも~♡ 犬ごときに嫉妬するなんて、ノア様はおかわいいひとっすね~』
「ば、ばか……からかうんじゃねえよ!」
俺はロウリィをとりあげて、ちゅっちゅ、とキスをする。
『仲直りできて良かったなバカども』
「『えへへ~♡』」
ふぅ、と息をつくナベリウス。
「さて、どーっすかな。残りの4割はダーク以下略団と戦う構えだろうし」
『降伏勧告でもすればいいのでは?』
そっか。
そうだよな、別に戦う必要は無い。
だって俺はロウリィと結ばれたわけだし?
もう用済みだしな、この団!
「よし、解散しよう。エルレイン! エルレインはどこだ!」
俺が呼ぶと、神聖皇国の元・教皇……少女、エルレインがやってくる。
こいつは俺の元弟子であもある。
「およびですか、ノアール様」
常に目を閉じた小柄な女。
にこにこしながら、俺に問うてくる。
「ああ、ダークノワール・ブラックシュバルツ団だけどよ。解散……!」
「へ………………? かいさん、ですの?」
「おう。解散だ」
ぽかん……とするエルレイン。
だが……。
「かしこまりました!」
笑顔で、エルレインがうなずく。
「では、そのように団員達に伝えておきます!」
「おう、よろしく!」
バタン……。
「なーんだ結構あっさり解決したじゃーん」
『ううむ……本当にそうかな……?』
ナベリウスが首をかしげる。
「あん? ナベは引っかかってるのか?」
『ああ。あっさり身を引いたのがおかしすぎる。またノア様の言葉を勝手に解釈して、暴走する前振りにしか思えん』
ナベリウスの言う通りかもしれん。
どうにも俺の行動は、すべて裏目裏目に出ることが多いからな。
「様子見てくるか」
俺は黒犬と白猫を連れて、エルレインの元へ向かう……。
そこは、大聖堂の、祈りの間だ。
俺の教団員達が集まって、エルレインの言葉を聞いてる。
「皆様! 偉大なるノアール様から、お言葉を賜りました!」
ざわ……ざわ……。
「ノア様はこうおっしゃりました……解散、と」
「「「なっ……!? 解散ぅうう!?」」」
驚き、そして困惑する団員達。
『なんだ、ちゃんと解散してくれたっすよ。ナベタン、気にしすぎじゃないっすか。そんな気にしすぎてたらハゲるっすよ将来』
『やかましい』
しゃー、とナベが牙をむく。
『あーん、ノアたま~。ナベタンがいじめる~。滅却して~』
「ったく、しかたねえなぁ。ナベ、吹き飛ばすけどいい?」
『良くないバカどもが……』
俺たちがじゃれついてる間に、団員達の騒ぎが収まる。
「皆様、どうか冷静に。ノア様のお言葉を、きちんと理解しましょう」
『『あ、これあかん流れだ……』』
ペットたちと、俺は同じ嫌な予感を覚える。
「解散……それはつまり、散開し、各個撃破を狙う作戦!」
「「「おお! そうか!」」」
「『『ちげええええええええええよ!』』」
何言ってるのあいつ!?
「真正面から敵にぶつかるのではなく、敵陣にスパイを送り込み、一人ずつ信者にしていくのです! 戦いとは、戦う前に準備をよりした方が勝つ! とノア様はおっしゃりたいのです!」
「ちょっとまてやぁああああああああああああああああああ!」
俺はエルレインの前へと向かう。
「ノアール様!」
信者どもが俺に注目する。
「いつ俺がそんなこと言った!? ねえ!? エルレインさんよぉ!」
エルレインは自信たっぷりにうなずく。
「もちろん、先ほど。わたくしを呼び出して。あなた様の言葉、ちゃんと届いております」
「みじんも理解してねえだろ!」
ったく、油断も隙もあったもんじゃねえ!
俺が直接言うしかないようだな。
「いいかてめえら! よーーーーく聞きやがれぇ!」
びしっ、と俺は信者どもに指を突きつける。
「今日をもって! このダークノワール以下略団は、解散! 終わり! 終了! これ以上の何もしない! 活動停止! オッケー!?」
ぽかん……と信者たちが目を丸くする。
だが……。
「「「オッケー! オッケー!」」」
信者達が笑顔でうなずく。
あ、あれ……? またあっさり……。
いや! さっきと同じに決まってる!
「いいかてめえら! 絶対だぞ? ぜったい解散するんだからな、わかったな!?」
『の、ノア様そこまで念を押さなくていいのでは……?』
ナベがなべごちゃごちゃ言ってるが、駄目なんだよ!
ちゃんと言っとかないと!
「俺たちはもうおしまいDeath★ って、周りにも伝えるんだ!」
「「「! やはり!」」」
『やはりってなんすか、怖いんすけど……』
まあー、こんだけ念を押しときゃ、大丈夫だろうな。うん!
「つーわけで、はい、以上です!」
「「「お疲れ様です、ノアール様!」」」
こうして、ダークノワール以下略こと、クロヨンは滅亡した。
★
俺はカーター領へと戻ってきた。
「ノア様!」
「サラ」
たたっ、とかけてきて、俺の胸にサラが飛び込む。
「ノア様! 生きてる! 生きてらっしゃるのですね!」
「おう。心配かけたな」
なんか悪いことしちまった。
死んだ扱いになってたんだっけ。
「生きていればそれで……」
『の~あ~さ~ま~?』
白猫がじとーっ、と俺を見てくる。
ロウリィ、あいつ嫉妬してるんだな。
へへ……可愛いとこあんじゃねえか……。
「あとでちゅーしてやるからよぉ」
『やん♡ ばかーん♡ 人前で~♡ てれちゃう~♡』
やれやれ、とナベが溜息をつく。
『サラディアス。何があった? オレ様達が居ない間』
「そう! 大変ですの! クロヨンたちに動きあり、ですわ!」
「『『え……?』』」
クロヨンとは、ダーク以下略団の略称だ。
「クロヨン達の首魁、闇の賢者ノアールの謀略による、攻撃を受けたのです!」
「はぁあああああああああああああ!?」
こ、攻撃ぃ!?
嘘だろ!
『解散したんじゃなかったんすか!?』
「ええ、クロヨン達はお触れを出しました。彼らは解散したと……しかし! それこそが、闇の賢者の巧みな罠だったのです!?」
「『『罠!?』』」
うなずいて、サラが言う。
「クロヨンたちが解散した。それをしった周辺国家達は、気を緩めました。だが! その隙を突いて、クロヨンのメンバー達が敵国に侵入し、各個撃破してきたのです!」
「『『なんだってぇええええええ!?』』」
諦めてなかったのかよぉ!
「恐ろしい策略です……闇の賢者……自らを賢い者と名乗るくらいの、知恵の者!」
『単に敵も味方もバカなだけじゃないっすか?』
『ほんと、それな』
ペットたちが吐息をつく。
「これで世界の9割9分が、敵の手に落ちました。残っているのは……カーター領のみ」
「お、おう……まじか……」
あいつら世界征服しちゃうんじゃね、これ……?
「正直、かなり劣勢です。クロヨンはノアールを中心に、まとまっている。それに神聖皇国の騎士達もいます。……ですが! まだ我らは負けたわけではありませんわ!」
がしっ、とサラが俺の手を握る。
「ノア様が帰ってきてくれた! これなら、闇の勢力にも立ち向かえます!」
サラが領主の館の窓を開ける。
「「「うぉおおおおおおおおおお! ノア様ぁああああああああああああああ!」」」
魔王達四バカをはじめとした、カーター領民達が、歓声をあげている。
「みな、ノア様の登場で、士気向上しております! 相手は強敵、だが我らにはノア様がおります!」
あわわわ……はわわわわ……。
「我ら自らの命を! ノア様に捧げます! ノア様が必ずや、世界に平和をもたらすと! 信じているからです!」
「「「うぉおおおおお! ノア様ぁああああああああああ! おれら喜んで死にますぅうううううううううううう!」」」
『ノア様平和どころか大混乱巻き起こしてるっすけど!?』
や、やべええ……。
解散なんて余計なことしたから!
飛び火しちゃってる!?
『ノア様……おまえ、念を押さずに、黙って消えれば……もしくは、死んだふりしてればよかったのに……余計なことするから……』
「お、俺は悪くねえ! 俺は悪くねえんだ!」
サラが笑顔でうなずき、肩をたたく。
「ええ! ノア様は悪くない! 悪いのは世界! さぁ戦いましょう! 我らカーターの民を率いて! 悪の大ダーク帝国を打ち破るのです!」
俺は頭を押さえて……そして、いつも通り言う。
「どうしてこうなったぁあああああああああああああああああ!?」




