82.闇の賢者は更にこじらせる
俺、ノア・カーターは闇に落ちた……!
この世から一組残らず、カップルを駆逐してやるぅ!
その日、俺はとある村を訪れていた。
「ノアール様。闇の大賢者様、どうか我らの悩みをお聞きください」
村長、以下村人達が、俺の前に土下座している。
「うむ、良かろう。聞いてやる」
村長が畑へと連れて行く……。
「日照りが続き、村の畑が干からびて困っているのです。どうか、お助けください……」
「はんっ! なんだその程度のことで嘆いていたのか……!」
おおっ! と村人達が沸き立つ。
俺は地面に手を置いて魔法を発動。
その瞬間……。
大地が、黒い沃野に。
そして頭上から、雨が降り注ぐ。
そして村の近くに川が引かれる。
これらすべて、俺が魔法で行ったこと。
「素晴らしい! 奇跡だ!」「まさに神の奇跡だっ!」
ふっ……愚かなる村人どもは、俺の所業が神のそれだと思っているらしい。
だが……計画通り!
「見ましたでしょうか、みなさん!」
金髪の美少女、リスタが目を輝かせながら言う。
「これが神の奇跡です!」
「「「かーみ! かーみ! かーみ!」」」
リスタには人をその気にさせる不思議な力が備わっているらしい。
「さぁ! 神をあがめましょう!」
「「「ノアール! ノアール! ノアール!」」」
ふっ……ちょろいもんだ。
「貴様ら、今日から我の舎弟な」
「「「はいっ!」」」
「我の仲間になる以上、会則には従ってもらうぞ……!」
「「「もちろんですっ!」」」
よっしぃ! これでまた、世界から悲しみ(カップル)が消えたぜぇ!
ひゃっはー!
「さすがですノアール様!」
一緒についてきた者の中には、白装束の教皇がいた。
「おお、エルレイン」
元・教皇エルレイン。
かつての俺の弟子だった、らしい。
「やはりノアール様は昔も今も、変わらず、弱者達に救いの手を差し伸べておりますね! 素晴らしいです!」
昔も……?
あれ、俺って昔もこんなことしてたっけ?
あの頃は魔法の修行だっつって、各地で魔法の訓練をしていたが……。
あれ以外に、別に何かした覚えはないぞ?
ま、いっか!
「エルレイン。信者どもの管理は貴様に一任する」
「わかりましたわ!」
「決して! 恋愛などにうつつを抜かすような輩が出ないよう! 徹底するんだぞ!」
「もちろんです!」
「後は任せる。俺は帰る」
ぱちんっ、と俺は指を鳴らす。
俺が帰ってきたのは、神聖皇国内にある、大聖堂。
かつてエルレインたち、天道教会たちが使っていた大聖堂を、俺たち【ダークノワール・ブラックシュバルツ団】の拠点として使っている。
いずれ世界を統一し、大ダーク帝国を作るのだ……!
「さて……」
俺はあてがわれた私室へと戻る……
そして……。
「うわぁああああああああん! ロウリィのばかばかばかーーーーーーーー!」
俺はベッドにダイブ!
そして枕をロウリィに……あのにっくき白猫に見立てて、ポスポスと殴る。
「俺のことあんだけ好き好きオーラだしといて! 別の男に告白するとか! ふざけんなふざけんなよぉおおおおおおおおおおん!」
ああもう! 思い出したら腹立ってきたぁ!
くそぉ! 寝取られものって俺嫌いなのにー! ちくしょー!
「はああんロウリィ! ああロウリィ!」
と、そのときだった。
『ここにいたのか、ノア様』
ベッドの下から、にゅっ、と黒い犬が顔を出す。
「てめえナベぇえええええええええええ!」
俺の仇敵、ナベリウスがベッドから這い出てきた。
「貴様、どうしてここが!?」
『影の眷属を、世界中にばらまいて貴様を捜し当てたのだ……』
「くっ……! よくぞここを探し当てたな……まずは褒めてやろう」
俺はベッドに腰掛けて、取り繕う。
え、さっきの悶えてたシーン、見られてないよね? 見られてないよね?
『今更取り繕っても遅いぞ。バッチリ見てたからな。ロウリィにフラれて傷心なところ』
「うがぁああああああああああああ!」
見られてたぁああああああああああ!
しかもよりにもよって、俺から女を横取りしたやつにぃ!
『ノア様。落ち着いて聞いてくれ』
「ええい! 聞く耳など持たん! 貴様……俺の城に土足で踏み入れておいて、生きて帰れるとでも思ったか!」
俺は右手に黒い炎を出現する。
「闇の魔法、【黒炎灰燼帰】! 一度受けたら最後! 相手が死ぬまで燃え尽きぬ炎!」
『ちょっ……!? ノア様落ち着いて!』
「落ち着けるか死ねぇええええええええええええええええええええええ!」
俺は炎を投げつける。
ナベの体にぶつかると。
『うぎゃぁあああああああああああああ!』
「はっはっは! 悪魔すらももやしつく最強の炎だぁ! 一度受けたら最後! 魂までも燃やし尽くしてやるぅ!」
ははっ! 苦しめ苦しめぇ!
俺を苦しめた分だけぇ……!
『うぐ……の、ノア様……』
…………。
……………………。
………………………………ちっ。
ぱちんっ。
ふっ……と黒い炎が消える。
『……どうして?』
「ちっ……なんか、やなんだよ。弱い者いじめみたいでよ」
黒犬がよろよろと立ち上がる。
体のダメージを、魔力で治してやる。
「それにてめえ、なぜ抵抗しない? 術者を殺せば魔法は解除される。わかってるだろ?」
『……殺すわけないだろ。貴様のことを』
「ちっ……」
だから、殺したくなかったんだよ。
抵抗しようと思えば、できたんだからな。
「んで、なんだよナベ。言い訳か? 俺から女を取って、俺をあざ笑いに来たのかっ?」
『いや……だから違うし。それになノア様、貴様は一つ大きな勘違いをしてる』
「はぁああああああああん? 間男の言い訳なんて聞きたくありまっせーーーーーん!」
ナベリウスは溜息をついて、言う。
『オレ様は……………………女だ』
「………………………………はい?」
今、なんつった?
「え、ナベタン。なんて?」
『オレ様は女。メス。フィーメイル』
「……………………えーーーー!?」
なんてこった!
ナベリウスは女だったのぁ!?
「う、嘘つくなよ! だっておまえ、自分のことオレ様って!」
『オレ様をオレ様って呼び、なぜ性別が男と断定する。俺っこなるものがこの世にはあるのではなかった?』
た、確かに……!
『それに貴様、飲み会のたびに、オレ様は女の獣人っぽいみためをしていたではないか』
「た、たしかにー!」
『……そこで、なぜオレ様が女だと気づかない』
「女になるのが趣味なアッチ系の人かと」
『バカか、貴様。いや……バカだったな……』
はぁ~~~~~~~~…………とナベリウスが溜息をつく。
「え……? じゃ、じゃあ……俺……勘違いしてたの?」
『ああ、そうだ。ノア様、貴様は勘違いしてたんだよ』
そっか……そっかぁ……。
「そういうことか」
『ああ、そういうことだ』
ふっ……と俺たちは笑い合う。
「エルレイぃいいいいいいいいいいいいいいいいいン! リスタぁあああああああああああああああああああ!」
「「お呼びでしょうか!」」
『どっから出てきた!?』
俺たちの前には、いつの間にか狂信者1と2が現れる。
「伝令! 今から会則を増やすぞ!」
「「はっ……!」」
『会則を、増やす?』
俺はリスタ達に、言う。
「俺の組織内では、恋愛禁止だ! そして、【女の子同士の恋愛】も、禁ずる!」
「「了解です……!」」
エルレインとリスタが消える。
『待て待て待て! ノア様! 何を勘違いしてるんだ!』
ナベのやろうがあわてて、弁明をしようとしてくる。
「ナベ、てめえは女、そしてロウリィも女! つまり! 百合カップルってことだろう!?」
『ちっげぇえええええええええええよ!』
ああくそっ!
そういうことかっ!
ロウリィのやろう! 女もいけるなんて!
「俺は決めたぜ。男女だけでなく、女女のカップルも、この世から一組残らず駆逐してやる!」
『だから! ノア様! 勘違いだから!』
俺は立ち上がって、マントを翻す。
「さぁ! いくぞ! 今日も弱者どもを救い、世界を征服してやる! そんで! カップルは、男女だろうと女同士だろうと、ぜーーーーーーんぶ俺がぶっ潰してやるぅうううううううううううううう!」
俺は、俄然、世界征服への意欲を燃やすのだった!
『どうしてこうなったぁあああああああああああああああああ!?』




