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79.第七王子は闇堕ちする



 第七王子ノアへ、告白することを決めた、魔神ロウリィ。


 ある夜のこと。


 ロウリィは人間の姿に変化し、ノアの部屋の前にいた。


「すぅー……はぁー……すぅー……」


 ロウリィは手鏡を取り出して、自分の姿を確認する。


 まごう事なき、美少女だ。


 ショートカットな白い髪。

 ぴんっ、ととがった猫耳と尻尾。


 顔は恐ろしく整っており、ブルーの瞳はサファイアのよう。


 胸元がぱっくりあいた、黒いドレス。

 そして目を見張るほどの、巨乳。


 男が喜ぶような体つきの……17,8くらいの美少女だ。


「だいじょうぶ……だいじょうぶっす……わたしたちは、両思いなんすから」


 おでんを食べに行ったあの日、ノアの本心は聞いている。


 ノアは好きと言ってくれた。

 ロウリィもまた、彼のことを愛してる。


 素直に、好きと言えば、それだけでいい。


「大丈夫、絶対、100パーセント、成功するっす。失敗するわけが、ないっす……よし、よし、よしっ!」


 ロウリィは気合いを入れて、部屋の中に入る。


 ノアは【珍しいこと】に、【夜中まで】仕事をしていた。


 サボり魔なかれにしては、珍しい。


「ロウリィ……?」

「ちょっと、いいっすか」


「え? おまえ……まさか……告るのか?」


 かぁ……とロウリィは顔を赤らめる。


「ば、バレバレだったんすね!」


 あわあわ、と慌てるが、いや、大丈夫。


 ノアは最初からロウリィの心の中なんてわかってるといっていたから。


 向こうからしたら、ロウリィの告白は、想定内なのだろう。


「いや、待て。ロウリィ。おまえは勘違いを起こしてる」


「いいえ、勘違いじゃないっす……」


【なぜか】慌てるノアが、珍しい。


 ロウリィは真面目な顔で言う。


「わたしは、あなたが好きっす……!」


 言えた……ちゃんと言えた。


 良かったと安堵する一方で、ノアからの返事が気になる。


 ノアは……【なぜか汗をかいていた】。


「あ、ああ……それはわかってる。わかってるが、落ち着け……」


「落ち着いてるっす! だから返事を聞かせてっ!」


 ロウリィが机に手をついて、ノアをのぞき込む。


 普段は死んだ魚の目をしているが……。


 今日はなんだか、【目つきが違う】。


「ロウリィ、おまえは一つ重要な間違いを犯してる」


「間違い!? この思いが、間違いだっていうんすか!?」


 ノアが、はぐらかそうとしている。

 そうはいくか、とロウリィは声を張り上げる。


「わたしは、あなたが好きなんすよ! 愛してるんす!」


「い、いや……だから……」


 と、そのときだった。


「えぇーーーーーーーーーーーー!?」


 ……窓から、誰かの声がした。


 声のする方を見ると……。


「の、ノア様ぁあああああああああ!?」


 なんと、窓枠に、もう一人のノアがいたのだ。


「え!? なんで!? ノア様が……ふ、二人!? どうして!?」


 そう……それはなぜかというと……。


「オレ様だ、ロウリィ」


 たった今、ロウリィが告白した方のノアが……ため息をつく。


「オレ様……? その声……ま、ま、まさかー!」


 ロウリィは、間違いに気づく。


 そう、今告白したのは……。


 ぽんっ、と音を立てると、目の前には……。

「な、ナベちゃん!?」


 黒犬ナベリウスが、椅子の上にお座りしていた。


「なんで!? ナベちゃんなんで!?」


「ノア様が仕事ほっぽって外に行ったから、影武者として仕事してたんだよ……」


 ナベリウスは影を使う悪魔だ。

 

 自分の影を変えることで、姿を他人にまねることができる。


 ようするに……。


「え? わたし……ノア様に変身した、ナベちゃんに……告ったことになってる……?」


 ナベリウスが、気まずそうにうなずく。


 一方で……。


「はわわ、はわわわわわっ」


 サボり先からちょうど帰ってきたであろう、ノアが、動揺しまくっていた。


 まずい!


「の、ノア様! 違うの! 誤解なんすよぉ!」


 自分が好きなのは、ノアである。


 だが……ノアはというと。


「あ、ああ……うん。誤解ね。うん、そうね、誤解だったのね……」


 目に涙を浮かべて、ぷるぷる……とノアが体を震わせる。


「お、俺さぁ……け、結構ロウリィのこと、好きだったんだけどなぁ……」


 ……どうやらナベリウスに告白したロウリィを、バッチリ見ていたみたいだ。


「そ、そっかぁー……ロウリィが好きだったのは、ナベだったんだなぁ……」


「ちっげぇええええええええええええええええええええええ!」


 やはり、盛大な勘違いを起こしていた!


 ノア視点で見ると、自分に気があると思っていた女が、実は知り合いの別の男の事が好きだった。


 となる。


「お、俺さぁ……へへっ……ば、ばかだったなぁ……ロウリィが……俺のこと、すきって……誤解しててさぁ……」


「いや誤解じゃないっすよ! そこは誤解じゃないんすよぉ!」


 ロウリィが弁解しようとすると……。


「う、」

「う?」


「うぇえええええええええええええええええええええええん! ロウリィのアホぉおおおおおおおおおおおお!」


 ノアは子供の様に泣きわめくと、窓枠に足をかける。


「ああ、ノア様! どこへ……!」


「知らない知らないもう知らない! ぼくもうおうちにかえりゅーーーーー!」


 ノアは窓から飛び降りると、どこかへと消えてしまった。


 ぺたん……とロウリィがその場にしゃがみ込む。


 ナベリウスが、気まずそうに近づいてきた。

『す、すまん……』


 ロウリィは頭を抱えてもだえる。


「やっちまった! やっちまったすぅうううううううううう!」


 ころころ、とロウリィがその場に転がる。


「なんでナベちゃんっ、早くいってくれないんすか!」


『いや、言っただろ。おまえが間違ってるって……』


 確かにそうだった。

 考えてみれば、ノアが夜中まで仕事をしている時点でおかしかった。


 ナベリウスは何度も止めようとしていた。


 だがその言葉を無視して、告白したのは、ほかでもないロウリィである。


「どうしよう! ナベちゃん、どうしよー!」


 黒犬の体に抱きついて、涙を流しながら尋ねる。


 ナベリウスはため息をつく。


『とりあえず、落ち着け。時間をおいて、少し冷静になったときに、誤解を解こう』


「うん……そうっすね……」


 ロウリィもノア同様、今はまともな精神状態じゃない。


 ここで追いかけて、言葉を重ねても、さらなる誤解を生むだけだ。


「そうっすよね……ノア様も、馬鹿じゃないですし。時間をおいてちゃんと話せば、わかってくれ……る……す?」


 ナベリウスも、ロウリィも、首をかしげる。

「だ、大丈夫かな……?」


『た、たぶん……』


 ふたりとも、ノアのアホさ加減を、よくよく知っていた。


「な、何かやらかしたり……しないっすかね?」


『な、何かって……なんだよ……?』


「さ、さぁ……ショックで何をするかわからないっすから……」


 ふたりの表情は晴れない。


『まあ……今更仕方ない。待っていれば、いずれ帰ってくるだろう。そのときにちゃんと話せば良い』


「そっすね……何事も、起こらないといいんすけど……」


    ★


 後日。


「た、大変ですわっ、ロウリィ様、ナベリウス様……!」


 ノアの婚約者、サラディアスが、血相を変えて、ロウリィ達のいる部屋へと入ってきた。


 領主の仕事は、ロウリィとナベリウス、そしてサラがやっているため、なんとかなっていた。


 サラはテーブルの上に、一枚の羊皮紙を置く。


「今朝……国中にこのビラが!」


『こ、これは……!』


 ロウリィは、驚愕する。


 そこには……。


【ダークノワール・ブラックシュバルツ団、団員募集】


『こ、これは……クロヨン!?』


 クロヨン。つまり、ノアがかつて闇の賢者だったときに、作った福音書(妄想日記)をもとに設立された……。


 闇の教団(笑)のことである。


『あいつら! ノア様がつぶしたのに、また復活したんすか! 性懲りもなく!』


『いや待て、ロウリィ……これをよく見ろ……』


 ビラには、魔法陣が描かれていた。


 魔法陣に触れると……そこから光が発生する。


『映像を再生する魔法みたいだな……』

『って!? これはぁ……!』


 魔法陣から放たれる光……。


 そこに映し出されたのは……。


【我は闇の大賢者! ノアールである!】


『『の、ノア様ぁあああああああ!?』』


 そう……。


 あろうことか、潰したはずのクロヨンに、ノアがいたのだ。


『に、偽物……? 偽物っすよね。だって普段と、見た目が全然違うし……』



 黒髪に赤マントの普段着とは、違っていた。


 今のノアは、白髪に染めて、黒いマントを身にまとっている。


 黒い穴あきの手袋をして、銀のアクセサリーをあちこちにみにつけていた。



『いや……この魔力……ノア様本人だ……』


 ビラに込められている魔力の残滓から、ナベリウスは、ノアがこの魔法を施したのだと気づく。


『じゃ、じゃあ……本人? なんで? ノア様、なんでクロヨンに……?』


 すると、呼応するように、映像の中のノアが答える。


【この我は、現世に転生した。まっとうな人間として生きていた……しかし! 気づかされたのだ、世界の無情、悲劇……この世からは決して、なくならないのだと……】


 ばっ……! とノアが手を広げる。


【この闇の大賢者ノアールは宣言する! ここに、大ダーク帝国の設立を宣言し! 世界を征服すると!】


『『せ、世界征服ぅうううううう!?』』


 何を言い出すのだ、このノアは……!?


 とふたりが動揺する。


【素晴らしいお考えです、ノアール様!】


『り、リスタっす!』


 ノアールの隣に、リスタが現れる。


『どうやら傷心のノアに余計なことを、この女が吹き込んだみたいだな……』


『なんてことを……!』


 ナベリウスがあきれ、サラが手で口を覆う。


 馬鹿ノア狂信者リスタが加わったのなら、とんでもない事態になっていても、おかしくない。


【我は宣言する。世界を征服した暁には……】


 くわっ、とノアが目を見開く。


【この世から、カップルを、一人残らず駆逐してやるぅううううううううううう!】


 ……その瞬間、ロウリィとナベリウスは気づく。


 なぜ、ノアがこんなアホなことをしているのか……。


『ま、まさかノア様……失恋のショックで、闇墜ちしたんすか……?』


『オレ様に、ロウリィを取られたショックで……』


 ナベリウスと、ロウリィが顔を見合わせる。

 そして……こう言うのだ。


 いつも通り……。


『『どうしてこうなったぁあああああああああああああああああああ!?』』

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― 新着の感想 ―
[良い点] ノアタンじゃなかった、ノアッチのドアホ~!!!ナベッチじゃなかった、ナベタンがノアッチに変身してるんだから、ろりえもんがどういうつもりで告白したのか分かれ~!!!本当にドアホで大馬鹿で鈍い…
[一言] なぜ新連載を作者が発表する前に読み始めてしまうんだ...
2021/11/10 02:56 退会済み
管理
[一言] ・・・しっと団じゃねえか
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