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78.ロウリィ、ラブコメする


 第七王子ノアが、ロウリィとナベリウスとともに、おでんを食べた……翌日。


 ロウリィはふと、目を覚ます。


『むにゅ……くぁー……!』


 白猫姿のロウリィが大きくあくびをする。


 そして……。


 目の前に、ノアの寝顔があった。


『ふぎゃぁあああああああああああああああああ!』


 大きな声を張り上げ、全身の毛を逆立てる。

『にゃにゃにゃっ! にゃんでにゃんでここにー!?』


 ノアのベッドで一緒に寝ていたのだ。

 これに大パニックを起こすロウリィ。


「んだよ朝から騒々しいなぁ……ったく」


 のそり、とノアが起き出す。


 二日酔いだからか、すごい不機嫌そうだった。


 ……だが、なんだろう。


 いつもは死んだ目をしている彼が、かっこよく……見える!


『なんすか、これ……なんなんすか……』


 どきどき……とロウリィは自分の胸が、高鳴っていることに気づく。


 さっきもそうだ。

 ノアと一緒に寝ることなんて、これまで何度もあった。


 けど今日は、彼と一緒に寝ていたと知ったとき……。


 いつも以上に、恥ずかしかった……。


「おいろりえもん。朝からうっせえぞ」


 ぼりぼり……とノアがバサバサの髪の毛を手でかく。


 ああ……ワイルドな髪の毛も、かっこいい……。


『って! なんすか、かっこいいってぇ!』


「だーもう! うっせえ!」


 そんな風に騒いでると……。


『どちらもうるさいぞ、貴様ら……』


 ベッドの下の影から、にゅっ、とナベリウスが顔をのぞかせる。


「おうナベ、聞いてくれよ。ロウリィってば朝から大騒ぎしやがってよぉ」


『ほぅ……』


 じっ、と黒犬が、白猫を見やる。


『な、なんすか……?』


 赤らんだ頬を見て、にやりと笑う。


『いや、何でも。オレ様はちょっと外へ散歩に行ってくる』


『ちょっ! ナベちゃん待って!』


 ぴょんっ、とロウリィがベッドから降りて、ナベリウスの背中にしゃがみつく。


『……二人きりにしないでっ!』


 ひそひそ声で、ノアに聞こえないように、ロウリィが言う。


『……ほぅ、どうしてだ?』

『……だっ、そ、っれは……その……』


 なぜと聞かれても、恥ずかしいから以外に答えられない。


 どうして恥ずかしいのかといえば……。


『……昨晩のノア様の告白を、聞いてたんだろ?』


『……に゛ゃ! し、しってたの……?』


 ノアが昨日、帰り道。

 ロウリィのことについて言及していたとき、彼女は起きていたのだ。


 ばっちりと、聞いてしまったのだ。

 ノアの優しさを、ノアが……自分のことを、好きだと言うことを……。


『……好きなやつが、自分のこと好きって聞いて、照れてるんだな』


『……うう~。この原初の魔神、ロウリィが、そんな中学生みたいなリアクションとるなんてぇ~』


 ナベリウスはあきれたようにため息をつく。

『……気持ちの整理はしておけよ。毎日こんな大騒ぎじゃ、たまったもんじゃない』


 かぷっ、とナベリウスがロウリィの首根っこを口でつまんで下ろす。


『……じ、自分は、どうすればいいっすかね?』


『さぁな。ただ、人に聞かれて答えが出る問題じゃないだろ。自分で考えるんだな』


『……いじわる』


 するとナベリウスは、にやっと笑う。


『知らなかったのか、オレ様は悪魔。いじわるで当然なんだぜ?』


    ★


 午前中。


 ノアの部屋にて。


「…………」

『…………』


 かりかり、とノアが珍しく書類仕事をしている。


 椅子に深く腰掛け、実にだるそうに、領主としての仕事を一応こなしてる。


 一方でロウリィはというと……。


「おいろりえもん」

『な、なんしゅか……?』


 噛んだ。噛んでしまった……。


「おまえなんでそんな、距離とってるんだよ」


 ロウリィがいるのは、部屋の入り口の、隅っこだ。


「いつもなら机の上とか、膝の上とかに、平然と乗ってくるだろうに」


 恥ずかしいから、なんていえない!


『ね、猫は隅っこがおちつくんすよっ!』

「おまえ自分で猫って言ってて恥ずかしくないの、魔神ロウリィ?」


『うっせー!』


 乙女心ひとのきもちも知らないでっ。


 はぁ……とロウリィがため息をつく。


 昨日の告白を聞いて……ロウリィはまともにノアの顔が見れない。


 頬がずっと赤い。

 顔を押さえて、見えないようにしても……ノアを目で追ってしまう。


 視界にノアが入ると心が躍り、彼がこちらを見ると、ドキドキして目をそらしてしまう。

(なんすかこれっ、なんすかこれぇえええええええええ!)


 ロウリィがコロコロと地面を転がる。


 一方でノアは、ロウリィがどういう心理状態にあるのか気づいていない。


 今日も馬鹿だなーと思いながら、のんきに仕事をしていた。


 ……そんな姿が、なんだかロウリィには、むかついた。


(人がこんなに心を乱されてるのにっ、どうしてこいつは、なーんとも思ってないんすか! ずりぃっすよ!)


 すでにその思考が、恋する乙女モードになっているのだが……。


 ロウリィは、認めたくなかった。

 自分が、心から、この男に惚れてしまっていると言うことに……。


(よ、よしっ! ドキドキさせてやるっす!)


 ロウリィはちょこちょこと、ノアの前にやってくる。

 

 机の上に乗ると……。


『う、うっふーん』


 猫状態で、片目を閉じ、しなを作ってみせる。


 ……。

 …………。

 ………………。


「え、なに?」


 ぽかん……とノアが口を開いて、ロウリィの奇行に戸惑う。


 一方でロウリィはというと……。


(ば、ばかなっ! 女子がセクシーポーズしてるのに、心乱されないなんて! チ●コついてねーんすかこいつ!?)


 言うまでもなくロウリィは今、猫の姿だ。


 猫がそんな色っぽいポーズしたところで、ノアが性的興奮を覚えるわけがない。


 そんな正常な思考さえも、恋する乙女モード・ロウリィには、わからなかった。


(くっ! こうなったらもっと大サービスっす!)


 ロウリィはノアを見て……。


 四つん這いになり、ぱちんっ、とウインク。

 片手をあげて……。


『あはーん』


 ……。

 …………。

 ………………。


「邪魔」


 手でロウリィを押しのける。


(こ、こ、こいつぅ~!)


 ロウリィは内心で憤慨する。


(人が! 女豹のポーズをしてるっていうのにー! ぴくりともしないですってぇ!)


 言うまでもなく……。


 ロウリィの姿は、白猫のまま。


 女豹のポーズは確かに、性的興奮を覚えるかもしれない。


 だがそれは、人間の女が、それをするから、ギャップで興奮するのだ。


 猫が四つん這いになっているのなんて、平常運転である。


 ノアがだるそうに書類と格闘してる一方で……。


 ロウリィもまた、ノアと勝手に格闘する。


 その後も『うふーん』だの『あはーん』だの勘違いしたセクシーポーズ(笑)を繰り返したのだが……


 全部、相手にされず……。


『ノア様のあほぉおおおおおおおおお!』


 と、泣いて部屋を出て行ったのだった。


    ★


 裏庭にて。


『ナベちゃん聞いて! ノア様がひどいのっ!』


 ナベリウスは木陰で伏せ状態になっている。

 ロウリィはその前に座って、切々と、自分がノアに対して行ったことを語る。


『こっちがこんなに! アピールしてるのに! ぜーんぜんぴくりともしてくれないのっ! ひどくない!? ねえ、ひどくないっすか!?』


 ふぁー……とナベリウスはあくびをする。


『そうだな……』

『真面目に聞いてます?』


『いや、全然』

『ふしゃー!』


 真顔でさらっと答えるナベリウスに腹が立ち、ロウリィが牙をむいて威嚇する。


『貴様も大概阿呆だな』

『あほってなんすか、あほなのはノア様でしょ!』


『まあ否定せんが』

『でしょー?』


 ロウリィはナベリウスの顔の隣にしゃがみ込む。


 ちら、とナベリウスはロウリィを見上げる。

 白い毛皮に覆われていて、判然としないけれど、頬が赤く目が潤んでいる。


『その姿のままでいるのは、ノアに照れてるのがばれるからか?』


『……そーっすよ』


 ロウリィは手で顔を覆う。


『こんな状態で、人間状態に戻ったら……ノア様にばれちゃう……』


『それはそれでいいんじゃないか?』


『よくねーっすよ! だ、だって……好きってばれたら……』


 ふぅ……とナベリウスがため息をつく。


『ばれてもいいじゃないか。むしろ新しい関係がスタートするのでは?』


『……無理っすよぉ』


 泣きそうな声でロウリィが言う。


『わたし告白なんてしたことないし、どーすりゃいいのか、わっかんないし……』


『天地創造に携わった魔神が、よもや異性と付き合ったことすらないとはな』


『うっさいっす! くらえ猫ぱーんち!』


 ふにっ……。


 ナベリウスの頬に、柔らかな肉球の感触。


『言えばいいだろ、好きです付き合ってくださいって』


『うう……でも……』


『じゃあそのまま一生そうやって、悶々とするだけでいいのか?』


 じろっ、とナベリウスが避難するように、ロウリィをにらむ。


『ノア様は、自分の寿命が貴様と比べて短いことを気にして、遠慮してくれてるんだぞ?』


『…………』


『そうやって悩んでいる間にノア様は死ぬぞ? 魔神と人とでは、持っている時間の量が違うんだからな』


 むくり、とナベリウスが立ち上がる。


『早く結論を出さねば、一生後悔するぞ?』


 すたすた……とナベリウスは立ち去っていく。


 一人になったロウリィは、ぽつりとつぶやくのだ。


『わかってるっすよ……。そんなの……わかってるっすよ……』


 彼女は目を閉じる。

 いろんなものを天秤にかける。


 そして……。


『よしっ』


 ロウリィは人間の姿になると、屋敷に向かって、歩いて行く。


 ノアの元へ、思いをつげに。

 

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― 新着の感想 ―
[一言] ラブコメ回78話目にて遂に始まるのか
2021/11/09 01:25 退会済み
管理
[良い点] ナベタンが優しい。 [一言] ラブコメよりも、いつもの(絶対失敗する)無能ムーヴや闇が漏れ出るノアッチをみたいです。そして、ろりえもんには今まで通りノアッチとイチャイチャしてもらいたいです…
[一言] 猫がネコ科の動物のポーズ取ってもノアじゃなくても誰も気付けないと思う。
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