69.ノア様ファンミーティングinカーター領
わたくしはサラディアス=フォン=グラハム。
偉大なるノア様の、婚約者です。
ノア様の将来妻になれるという、なんと幸せな立場でしょうか……。
ある日のこと。
ノア様が神聖皇国とやらに連行されてしまいました!
わたくしは夜も眠れず……ひたすらノア様の帰りを、神に捧げていました……。
「うぉーい、かえったぞー……」
「そのお声は!」
わたくしは屋敷を出て外へ向かいます。
あそこには……ああ! なんということでしょう!
「ノア様ぁ!」
愛しい君、わたくしの愛するノア様が……!
五体満足でいらしたのです!
おお、神様! あなたに感謝いたします!
わたくしは涙を流しながら、ノア様の体に抱きつきます。
「さ、サラ……苦しい……」
「はっ! も、申し訳ございません……つい……うれしくて……」
ああ、生きています。
ノア様が生きてる……なんと素晴らしい……。
ノア様は生きてるだけで最高なのです。
わたくし達領民は、このお方を見るだけで嬉しくなり、生きてるだけで毎日ハッピーなのです。
「ナベリウス様!」
ノア様の隣にいる、黒いお犬様に抱きつきます。
「ありがとう! ノア様を、お救いになられてくださったのですね!」
『い、いや……オレ様は特になにも』
「ということは! やはりノア様が自力で! ああ、やはりノア様はさすがですわ!」
げんなりしたように、ノア様とナベリウス様がうつむきます。
アンニュイな顔も素敵です!
「すぐに領民達に知らせてまいります」
「ああ、良いって……ちょっと疲れたから寝る……」
ぱんぱんっ!
「「「お呼びですか、サラ様!」」」
「どっからでてきやがったぁああああああああああああ!?」
領主の館に、四天王を初めとした、領民達が全員集合しています!
「わたくしの第2の恩恵【領民召喚】です! わたくしがノア様のおそばに居るときに限り、領民を好きなタイミングで召喚できるのです!」
「んもぉおおおお! 余計な能力ばっかり目覚めやがってぇええええええ!」
ああ! ノア様が!
わたくしが示した恩恵の力に対して、喜んでくださっている!
「お褒めいただき、光栄です!」
「褒めてねぇええええええええ!」
ノア様は今日もお元気です!
いついかなる時もノア様は元気いっぱいで、わたくしや領民達に笑顔をくださいます。
なんと素晴らしい……。
やはり素敵……おや?
「ノア様? そちらの方々は、いったい……?」
領主の館の前には、たくさんの人たちが集まっています。
わたくしたち領民以外の方達です……。
いったい、誰でしょう……?
「なんか、ついてきた……」
「まあ、お客さんですか? すぐにお茶の用意を」
「あーあー、そういうのいいから……ったく、来るなっつたのに……」
すると白い服を着た方々のなかから、美しい女騎士さまがやってまいります。
亜麻色の髪に、顔には仮面をつけた、白い鎧の騎士様です。
「申し訳ございません! 我らは【元】神聖皇国の聖騎士にして、今はゴッド・ノア様の近衛騎士隊隊長、クィナと申します!」
「まぁ! まぁまぁ!」
なんということでしょう……!
「あのな、サラ。こいつらの戯言は聞かなくて……」
「ノア様の価値を理解する、新しい領民の方々ですのね!」
「こいつも大概バカだった、くそー!」
『ノアッチどんまーい』
ロウリィ様が、ぺんぺん、とノア様の肩を叩きます。
「近衛騎士……ノア様に仕える騎士様、と解釈してもよろしいのです?」
クィナ様にわたくしは声をかけます。
「いかにも! あなた様は?」
「わたくしはノア様の妻、サラディアス=フォン=グラハムと申します!」
「「「おお……!」」」
ずしゃっ! とクィナ様を初めとした、近衛騎士様たちが跪きます。
まあまあ、どういうことでしょう……?
「神の妻ということは……まさか【聖母】様!」
「違う」とノア様。
「はい!」
「「「おお、やはり……!」」」
まあまあ、母だなんて……。
そんな……まだノア様の赤ちゃんを授かってないのに……そんな……。
でもでもっ、いずれノア様の可愛い赤ん坊を授かる身ですし、母となのっても、いいですわよね!
きゃー♡
『神に聖母って……そんなたいそうなやつらじゃないっすけどね、こいつら』
『しかも聖母ってなんだか色々ごっちゃになってるな……』
ロウリィ様とナベリウス様もご納得いただいております。
「ノア様♡ わたくし……聖母でもよろしいでしょうか?」
「もう勝手にしてくれ……」
ノア様が、オッケーをくださりました。
クィナ様は近衛様たちを見て言います。
「神の了解がでたぞ! これより我々聖騎士は近衛騎士団と名を変え、ゴッド・ノア様と聖母サラディアス様に、その身と剣を捧げるのだ!」
「「「応……!」」」
こうして、わたくし達の領地に、新しい仲間が増えたのですわ。
★
新しい仲間が増えたことで、わたくしはパーティを開くことにしました。
リスタ様、リスコス様、セバス様、そのほか領民達の皆さまにご協力いただき、領主の館の庭でパーティです。
「これは美味い! 聖母様はお料理もお上手なのですなぁ!」
クィナ様が褒めてくださります。
うれしい!
「わたくしだけが作ったのではありません。リスタ様♡」
「はーい!」
金髪の、元気なメイドさんがわたくしのもとへやってきます。
「聖母様、そのお方は?」
「初めまして! わたしはリスタ! 偉大なるノア様の、忠実なるシモベ!」
クィナ様が「おお……!」とのどを震わせます。
「神の僕……つまり、天使さまということでしょうか!」
「そのとおり!」
クィナ様をはじめとした、近衛騎士様達がひざまづきます。
「みな! 天使様の御前であるぞ!」
「くくく……あまい、あまいぞ貴様ら……」
そこへ、魔道士団長のライザ様、そして騎士団長のディーヴァ様が来ます。
腕を組んで、ふたりともなんだかかっこいい……!
「あなた様達は?」
「我は魔導の探求者にして、ノア様の一の部下……ライザ!」
「そして! 私はノア様を守護するノア様の一の部下……ディーヴァである!」
おお……! と近衛騎士様たちから、またも歓声があがります。
「守護天使様達だ!」
「天使様が二人も!」
「「ちょっとまったー!」」
そこへ、今度は魔王ヒルデ様、そして勇者ユリアン様も!
「わらわもノア様を守る天使……ヒルデ!」
「拙者はユリアン! ノア様を守る天使……!」
おおおお……! と地鳴りが起きるレベルの歓声を、近衛騎士様達があげます。
「なんという……聖母様に天使様が、こんなにも!」
「ボクもいるよー!」
リスコス様がわたくしたちのもとへとやってきます。
「サラ様、ご紹介を!」
クィナ様に言われて、わたくしはリスコス様の肩を叩いて言います。
「この方は偉大なるノア様のご令嬢……リスコス様です!」
「「「なにぃいいいいいいい!?」」」
近衛騎士様たちが、驚きまくってますわ。
「か、神の娘……つまり神子様と!」
「ふふーん、そうだよ~。ボクは神子! その証拠に……じゃじゃーん!」
リスコス様の背中に刺している剣を、掲げます。
「あ、あれは聖剣ファルシオン!」
「かつて存在した最強の剣聖の武器が!」
「神子さまに相応しい武器だ!」
「うぉおおお! すげええええ!」
リスタ様、そして四天王の皆さま。
さらに、リスコス様。
彼女たちがドヤぁ……と得意顔で、胸を張ります。
かくいうわたくしも、ちょっぴり得意げです。
「おお! なんということでしょう……ここは、神の国でしたか!」
クィナ様が涙を流しながら、わたくしたちを見ます。
な、なんだか照れますね……えへへ。
「我々もこの神の軍勢に加わることが出来るなんて、光栄の至りでございます!」
うんうん、とわたくしたちはうなずきます。
そんな姿を、あきれたように、ロウリィ様とナベリウス様が見てます。
『ナベちゃん、どう思うこれ?』
『誰も彼もイカレてやがる……』
『ツッコみ不在の恐怖っすね……』
ロウリィ様達は、長旅でお疲れの様子です。
「かくいうこのお二人も、偉大なるノア様の従者様なのですよっ!」
わたくしはお二人に近づいて、背中を押します。
『ちょっ!? サラ様……いいっすよ!』
『そうだ! オレ様達を狂信者のサミットに参加させるな!』
「「「狂信者? だれ?」」」
『『おめえらだっ(っすよ)!』』
わたくしは二人をハグしてつれていきます。
「こちらがロウリィ様。ノア様のお猫さまですわ♡」
『ふしゃー! 猫じゃねえし! 魔神だし!』
「そしてこちらはナベリウス様、ノア様のお犬様です♡」
『ふざけんな! オレ様はほこり高き悪魔だ!』
おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!
と近衛様たちが歓声を上げます。
「魔神に悪魔をも従える! やはり、ノア様は神っ!」
「「「うぉおおおおお! 神ぃいいいいいいいいいいいいい!!」」」
近衛様たちは、大歓声をあげます。
一方で、領民様たちは、得意げな顔で、腕を組み、ふんぞり返ってます。
『ファンミーティングっすね、これ、完全に……』
『古参と新参者の集まりにしか見えないな……ノア様かわいそ』
あら? 肝心のノア様が、いらっしゃいません。
あらあら、どうしたのでしょう……?
わたくしは心配になって、ノア様の寝室へと向かいます。
「ノア様、お加減はどうでしょうか?」
ドアを開けると、ノア様がベッドで悶えていました。
「んもぉおおおおおお! どうしてこうなるんだよぉおおおおおおおおお!」
ああ、良かった……!
ノア様、元気ですっ!




