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68/122

68.第七王子は死の淵より生還し神となる



 前回までのあらすじ。

 なんか、神になってた。


『まったく、心配させやがって……バカ王子が……』


 ここは神聖皇国内にある、大聖堂。


 俺は天道教会という、この世界で最も大きな宗教団体が持つ聖騎士にとらわれ、現在囚人の身であった。


 黒犬ナベリウスがなんだか知らんが、俺を心配して、ここまでやってきた次第。


『ナベちゃん、なんだかんだ言って、ノア様のことスコスコのスコなんすね~』


 白猫ロウリィが、ニヤニヤ笑いながら、ナベリウスの頬を尻尾でつつく。


『はぁ!? べ、別にオレ様は、こんなゴミのこと好きじゃない!』


『んも~。意地張っちゃって~』


 ペットどもがじゃれついてる中、俺は今後の展開を考える。


『ところでノア様、どうするんだこれから? 教会に捕縛され、もうすぐ処刑されるんだろ?』


『もちろん、逃げるっすよね』


「くくく……愚かなペットどもめ」


 にやり、と俺が笑う。


『あ、いつものっすね』

『いつものバカやるつもりだろうな』


「しゃーらっぷ! 黙って俺の凄い作戦を聞きなさい!」


 ぺたん、と俺の前に、猫と犬が座る。


「この機を利用して、俺は、無能ムーヴするぞ!」


『また性懲りもなく……』


『ノア様、学習って言葉、知ってます? ふぎゃぁあああああ!』


 ロウリィを魔法でぐるんぐるんとその場で大車輪の刑に処す。


『無能ムーヴなんてせず、大人しく脱獄すればいいのでは……? ノア様なら余裕だろう?』


『逃げればお望み通り、悪名も高まるっすからね……うぇえ』


 ふっ……わかってないなペットどもは。


「脱獄はあくびするほど簡単だ。しかーし! 逃げたあとで聖騎士に追い掛けられても困る訳よ。そこでノア様は一計を案じるわけだ!」


 俺はペットどもに作戦を話す。


『『また余計なことを……』』


「んだよぉ! 文句あんの!?」


 ペットどもは俺から離れて、ひそひそ話す。


『どーおもうっす?』

『どうせまた大成功からのさすノアだろ』

『だよねー』


 ふんっ。ペットどもは俺の作戦の素晴らしさを理解してないようだ。


 と、そのときである。


「おい! ノア・カーター!」


 牢屋の外には、でっぷりと太った、意地悪そうな顔をしている大司教……【アクダァマ】がいた。


「明日がついに処刑の日だが……くくく! 楽しみだなぁ!」


「ふ……ふふふ! ふはははははっ!」


 俺が高笑いすると、アクダァマ、および近衛騎士たちが、動揺する。


「な、なんだ笑いよって」

「ふっ……人間とは実に愚かだなと思ってな」


「なにぃ!」


 憤るアクダァマ大司教に、俺が言う。


「控えろ。俺は神だぞ?」


 ふっ……これこそが、今回の無能ムーヴだ。


 題して、【神のフリした愚か者だけど、結局処刑されて歴史に大罪人として名を残す羽目になった件(泣)~今更嘆いてももう遅い~】作戦だ!


『どこぞの売れないラノベみたいな作戦名っすね』


『まず読まれないだろうな』


 ペットどもを重力魔法でぺしゃんこにする。


『『ぐぇえええええええ』』


「か、神だと!? あれは部下どもが勝手に言ってるだけじゃなかったのか!?」


 顔を真っ赤にして怒るアクダァマに、俺は芝居掛かった、余裕の態度で言う。


「やれやれ……本質を見極められぬ愚者め。この俺からあふれ出る、神のオーラが見えないのかな?」


 ふっ、と俺が笑う。


『何も見えないぞ?』

『きっとバカにしか見えないオーラなんすよ』


 ペットどもを以下略『『ぐぇえええ』』


 まあちょっと演出しておくか。


 俺は普段制御してる、魔力を、ほんのちょっぴり解放する。


 ごぉっ! と魔力の嵐が発生する。


「クッ……! なんだこの巨大な魔力量は!?」


「ふははは! だから神だと言っただろうが。貴様、神に対してこんな薄汚い場所に入れておく等、無礼千万だぞ!」


『なんかノリノリだなノア様』

『ほら、前世が闇の大賢者(笑)だから、こーゆーの得意なんすよ』


 ペット(以下略)


「ということで、俺は神だ。神を処刑したところで無駄だぞ? 天罰がくだるであろう……くくく!」


 まー、こんだけハッタリかましておけばおっけーかな。


「そ、そこまで言うのなら! 明日の処刑、楽しみにしてるぞ!」


 にやり、と邪悪にアクダァマが笑う。


「神だというのなら、当然、人間の行う処刑ごときでは死なないよなぁ?」


 俺もまた、不敵に笑う。


「当たり前だろ? 俺は……ゴッド・ノアだぜ?」


    ★


 翌日、俺は処刑されることになった。


 俺がいるのは、皇国内にある、大きな渓谷だ。


 俺は手足を拘束され、深い深い谷の前にいる。


「これより! 大罪人ノア・カーターの処刑を執り行う!」


 執行人はアクダァマ。


 周囲には聖騎士達も居る。


「ノア様ぁ!」「やめろアクダァマ!」「ノア様は神だぞ!」「神を処刑するなんて、なんて罰当たりな!」


 聖騎士アホどもは俺を勝手に、神と思っているらしい。


 聖騎士達もまた手足を縛られて、見学させられている。


 そこには聖騎士以外の上層部の連中も、俺が死ぬのを心待ちにしてる様子だった。


「ノア・カーター。貴様は今よりこの【黄泉の谷】に突き落とす」


「黄泉の谷ねぇ……また物騒な名前だな」


「くく……この下はなぁ、冥界の門が存在する。谷底には冥界より出でし化け物どもがうようよしてるのよぉ」


 冥界。たしか、悪人の魂が収容されてるっていう、ヤバいとこだよな。


「しかも黄泉の谷底は全てを食らう、魔力をもだな! つまり谷底では魔法が使えない……くくく、冥界の魔獣どもにその身を食われて死ぬがいい!」


 すでに勝ち誇った笑みを浮かべるアクダァマ。


「何か言い残すことはないかぁ、ノア・カーター? 落ちたら最後、二度と戻ってこれない黄泉への旅路を前に?」


「ふっ……神に不可能はない、とだけ言っておこう」


「クッ……! どこまでも不遜なやつ……! おい! さっさとノアを谷底へ落とせ!」


 近衛騎士たちが槍を持って、俺の元へ近づいてくる。


「あー、別につつかなくても平気だから。自分でいくから」


「ふぁ……!?」


 俺は手足に枷を付けられた状態で、バク宙。


「「「ノア様が落ちたぁああああああああああああああああ!」」」


「ふーーーはっはっは! さらばだノア・カーター!」


 俺は凄まじい勢いで、谷底へと落下。


 確かに魔力を食われているらしい。


 魔法が使えない……。


 飛行魔法が使えない状態、しかも運良く助かったとしても、谷底には冥界の魔獣か。

 なるほど、こりゃ死ぬわな……。


「よいせっと」


 俺は空中でバク宙を決め、体勢を整える。

 黄泉の谷の、谷壁を蹴って、斜め下に落ちる。


「よっ、ほっ、よいしょっと」


 壁キックを繰り返しながら、勢いを殺し、そして谷底へと無傷で到着する。


「ふぃー……良い運動になったわ。さて……おいペットども」


 ずぉ、と俺の影から、ナベリウスとロウリィが出てくる。

 

 ナベリウスは影の悪魔なので、俺の影の中に入り込むことが出来る。


『あいかわらず凄いっすね……』

『手足を拘束された状態で、壁キックで、こんな深い場所まで降りてくるなんて……』


「え、別に普通だろこれくらい。フンッ……!」


 俺は手かせ足かせを破壊する。


『この人魔法使えなくっても、ヤバい人だったすわ。忘れてたけど』


『さすが剣聖の前世を持つ男……身体能力も異常だな』


「さーって、これで落下して死んだってことになってるし、一泊くらいして明日の夜あたりに外出るぞ」


 俺はぐいっ、と伸びをする。


『いや一泊って……ノア様。ここには冥界の魔獣がいるという話ではないか?』


「あん? あいつらか……」


 周囲には、黒い肌を持つ、凶暴そうな動物たちがいた。


『クッ……なんて魔力。オレ様にはわかる。やつらは、悪魔をもしのぐほど、強力な魔獣達……!』


「『ふーん』」


 俺も、そしてロウリィもまた、余裕の笑みを浮かべる。


「野営の場所探すかー」

『ノア様、わたし野宿は嫌っすからねー。これでも女子だもんで』


「なにぃ、贅沢だなぁ。まあいいけど」

『お、おい! 魔獣が襲ってくるぞ!』


 ぐわ……! と大量の魔獣が俺に飛びかかってくる。


「あ゛?」


『『『きゃぅうううううん!』』』


 俺がにらみつけると、魔獣達がその場で……お腹を向けて倒れる。


『い、一体何を!?』

『ノア様から発せられる殺気に当てられ、みんな降伏してるんすよ』


『そ、そんなバカな……』

『ナベちゃんだって仰向けで倒れてるじゃないっすか?』

『なっ!? いつの間に!?』


 悪魔も、魔獣どもも、俺がすこーし殺気を込めてにらんだだけで、びびってやがる。

「おいおいこの程度で怯えるなんて、骨のないやつらだなぁ」


『『『きゃいーんきゃーいん!』』』


 冥界の魔獣ども見回す。


「ロウリィ、今夜は何肉がいい?」

『うーん、牛肉かなー』


「よーし、指ぱっちん」


 ばつんっ! と冥界の魔獣の中にいた、牛の魔獣をズタズタに引き裂く。


『わーい、今夜は焼き肉ぱーちー』

『いやちょっと!? え、冥界の魔獣だぞ!? 今、え、どうやって倒した!?』


「ただの指ぱっちんだが?」


 俺はパチンと指を鳴らすだけで、衝撃波を発生できる。


 それを魔力で増幅してやれば、今みたいな真空の刃となって、相手を切り刻めるのだ。


『もうおまえ神だろ……』

「あ? 俺はふつうの人間だぞ?」

『そーっすよ、一般人っすよ』


 唖然とするナベリウス。そして、冥界の魔獣達は、なんだか知らんが、気を失っていた。


 まあそんな感じで、俺は黄泉の谷で一泊したのだった。


    ★


 次の日の夜。


「さすがに1日経てば、教会のやつらも帰ってるやろー」


『しかしこの深い谷から、どうやって帰還するのだ?』


 俺は手刀を構え、振り下ろす。


 ずぉ……!


 俺の前に、空間の裂け目ができる。


『ここと地上の間との空間を切ってつなげたのか……相変わらずの規格外っぷり……』


「ほら、帰るぞペットどもぉ~」


『『へーい』』


 俺はペット2匹と供に、空間の裂け目を通る。


『ノア様、今回は上手く行ったっすね、珍しく』


「くくく、だろうぉ? 神を名乗って死んだ反逆者って、今頃地上ではノア・カーターはバカ扱いされてるぜぇ」


 俺は地上へと戻ってきた、のだが……。


「『『なんじゃこりゃ!?』』」


 俺とペットどもが、驚愕する。


 そこには……。


 冥界の魔獣どもと、聖騎士達が戦っていた。


「ひぎいぃ!」「うぎゃああ!」「もうだめだぁあ!」


 聖騎士達が剣や盾をつかって、魔獣たちを追いかえそうとしている。


 だが、完全に防戦一方だった。


「! み、見ろ! あれを!」

「あれは! まさか!」


「「「ゴッド・ノア様だあああああああああああ!」」」


 え、ええ……なにこれ?


 聖騎士達が俺を見て、涙を浮かべる。


「ノア様! お帰りになられたのですね! 信じておりました!」


「お、おう……たしかクィナだったな」


 ボロボロのヨレヨレ状態の聖騎士、クィナが、俺を見て涙を流す。


「やはりご無事でしたか……! みなのもの! 我らが神は、健在です!」


「「「うぉおおおおおお! 神いぃいいいいいいいいい!」」」


 聖騎士達は俺の帰還を喜び、雄叫びを上げる。


 魔獣達は俺を見て、その場にひれ伏した。

「見なさい! ノア様が帰ってきた途端、冥界の獣たちがひれ伏しています! これは、相手が神である、何よりの証拠!」


「『『ええー……』』」


 俺、ロウリィ、ナベリウスはドン引きする。


 一方でクィナと聖騎士達は狂喜乱舞してるし……。


「ど、どうしよう……これ……どうなってるの?」


『まあ、落ちたら最後、誰も帰って来れない谷から生還して、冥界の魔獣達を引き連れてたら……そりゃ神扱いされるだろ』


 ナベリウスがため息交じりに言う。

 そ、そんな……!


「ノア・カーター……」


 ふらふら、とアクダァマ大司教が、俺の元へやってくる。


「お、おお! 大司教! 良かった、唯一の味方が……! なあこいつらに言ってやってくれよ! 俺が何者なのか!」


 がしっ!


「我らが神、ゴッド・ノア様をたたえよ!」


「「「たたえよ、ゴッド・ノア様!」」」


「ふぁ……!?」


 アクダァマ大司教の目が……


 目が……信者になってるよぉ~……


『ノアッチやったね、信者が増えたよ』


『まあこれだけ奇跡的なことしたんだ、神と誤認しても仕方あるまいな』


 ペットたちが呆れたように言う。


「そ、そんな! でもでもっ、俺はただの人間なんだもん! 神なんかじゃないもん!」


『子供みたいに駄々こねたって無駄っすよ』


『またノア様……余計なことするから……』


『ねー、最初の捕まった時点で、余計なことせず転移して逃亡すりゃよかったのに……』


 俺の前には、天道教会の聖騎士、上層部の連中、全員揃って土下座してる。


「「「我らが神よ! 愚かな我らをお許しください!」」」


「んもぉおおおおおおお! どうしてこうなるんだよぉおおおおおおおおおおおお!?」


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― 新着の感想 ―
[良い点] ノアッチ改めゴッドノアの辞書に【学習】と【今世の常識】という言葉は無いですねwww 魔法使わなくても最強! そして超絶ドアホーw [気になる点] 次章でもドアホなノアッチでいてほしいですw…
[良い点] ✧ \\ ٩( '神' )و // ✧爆誕!
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