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62/122

62.第七王子は娘と決闘する



 ある日のカーター領。


 俺の部屋には、金髪の女がいる。


 どことなくリスタに面影を残す、そいつは……。


『ノア様とリスタとの、娘? ノア様は、いつの間に、こんな大きな女をこさえたんだ?』


 黒犬ナベリウスが、首をかしげる。

 その隣に座っているのは、白猫ロウリィ。

『どうやら2巡目……別の世界線のリスタが、思い込みで妊娠出産したようっす』


『この領地化け物しか居ないな……』


 ペットどもが雑談する一方で、俺は考えていた。


「リスコス……おまえ、何しにここへ来たんだ?」


 リスコス。

 自称、俺の娘。


 年齢は15歳……つまり同年齢タメだろう。


 リスタと違って、短い金髪。

 そして黒い瞳は……俺の面影を感じさせる。


「もちろんっ、パパを連れ戻しにきたんだよっ!」


 2巡目の世界線において、俺はリスタとなぜか結婚していた。


 そんな恐ろしい未来を回避した結果、世界線が二つに分岐したらしい。


「俺はそっちに行く気はサラサラない。自分とこに帰れ」


「でも……でもでもっ! ボク……パパにやっとあえて! 嬉しいんだ!」


 リスコスが俺の体に抱きついて、いやいやと首を振る。


『ぴぴー! 禁止! 浮気禁止ー!』


 ロウリィが俺を、非難するような目で見てくる。


「あ? おまえ何言ってるの? 浮気も何も、俺誰とも付き合ってねえし、こいつ娘だし」

 

『とーにーかーくー! わたしの目が黒いうちは、浮気は許さないっすよ!』


 しゃー! とロウリィが牙を剥く。


 リスコスがしゃがみ込んで、白猫を見やる。


「じ~~~~~~~~~~」

『な、なんすか……やんのか? お? ケンカっすか?』


 しゅっしゅ、とロウリィがシャドウボクシングする。


「か、」

『か?』

「かわぃいいい~~~~~~~~~~♡」


 リスコスはロウリィをぎゅーっと抱きしめる。


『ふんぎゃぁあああああああああ!』

「可愛いちょーかわいい! この白猫すんごいかわいよ~~~~~~♡」


 めき……めきめきめき……!


『ノア様! やばい! こいつちょーパワーある! 魔神のわたしの体に、ダメージがっ!』


 俺とナベリウスはその様子を見やる。


『なるほど、ノア様の遺伝子を継いでいるから、彼女は強いのか。魔神を傷つけるほどに』


「いや想像妊娠だから。遺伝子ついでないから」


『なにも精子だけが遺伝子情報じゃないだろ。たとえば髪の毛とか』


「髪の毛から俺の子を人体錬成したのか……やべえな2巡目リスタ」


『おぃいいいいいい! 無視すんなぁあああああ! 助けるっすよぉおおおお!』


 リスコスが万力のごとき力でロウリィを、雑巾絞りしている。


「リスコス。離してやれ。雑巾になる」


「あ、ごめんよっ! かわいくってつい……」


 ぱっ、とリスコスが手を離すと、ロウリィが脱兎のごとく逃げ出す。


『ノア様~……たすかったすぅ~……』


 白猫がおいおい泣きながら、俺の足下にやってくる。


「おお、ロウリィ。絞られた雑巾みたいになってるな」


『うえーん……ノア様~……あいつわたしのこといじめたー……ぶっころして~』


『物騒なこと言うなおまえ……』


 ナベリウスが呆れたようにため息をつく。

 しかし……ふぅむ。なるほど。


「よかろう、ロウリィ。俺が敵を取ってやるぜぇ」


 にやりと俺が笑う。


『のあしゃま……ちゅき……♡』

『おい目が♡になってるぞ。おまえ、そんなキャラだったか?』


『うっせーなナベちゃん! わたしだってなぁ、恋する乙女なんだよぉ!』

『誇り高き魔神じゃなかったのか?』


 ペットどもがじゃれ合ってるが無視する。

 くく……娘がなんだ。

 こいつもまた、利用してやるまでよぉ……!


「リスコス。おまえ、俺に、2巡目の世界にきて欲しいんだったな」


「うん! え、パパ、戻ってきてくれるの!」


「ああ、良かろう……ただし!」


 俺は娘に指を指して言う。


「俺と勝負して、勝ったらな!」


    ★


 俺がやってきたのは、おなじみカーター領の隣にある奈落の森アビス・ウッド


「なんだなんだ?」

「ノア様が集まれって」


 領民たちが俺の前に集まっている。


「あー諸君。傾聴。今日から新メンバーが加わります。リスコス、みんなに挨拶しなさい」


「はいよー、パパぁ!」


 天真爛漫な表情で、手を上げて言う。


「ボクはリスコス! パパの……ノア・カーターの娘さ!」


 リスコスが馬鹿正直に自己紹介する。


 ナベリウスはそれを見て、半笑いで言う。


『いや……さすがにそれを信じるわけ……』


「「「はじめまして、リスコスちゃん!」」」


『『なんで受け入れてるんだよ!』』


 ペットどもがツッコミを入れる。


「だってノア様の娘だもんね」

「ノア様が娘って認めてるなら、ノア様の娘なんだよ」


 領民どもがうんうん、とうなずく。

 一方で、ナベリウスが声を荒らげる。


『いやその理屈だと、ノア様がゴリラを自分の娘だって言ったら、おまえらゴリラを娘だと信じるのか?』


「「「え、もちろん」」」


『頭おかしいんじゃないのか!?』

『あれ、ナベちゃん今まで気づいてなかったんすか?』


『いや知ってたけれども!』


 くくく……領民達は馬鹿だから、リスコスが俺の娘だとすぐに信じるだろう。


 そして……!


「実はリスコスは、俺を実家に連れて帰ろうとしてるんだ」


「「「な、なんだってー!」」」


 驚愕する領民達。


「つ、つまりノア様は……ここを出て行ってしまうと言うこと!?」


「そんな! 嫌です!」


 よしよし、これで準備オッケーと。


 こそっ、とロウリィが近づいてくる。


『いず、でぃす、無能ムーヴ?』

「いえす、無能ムーヴ」

『おー……。ゆーあー……すてゅーぴっと』


「ロウリィ、すてゅーぴっとって?」

『最強天才ノア様まじすげえって意味っす』


 なるほど!

 俺に相応しい言葉だな!


「さぁ、リスコス。俺を実家に連れて帰りたくば、力尽くで連れ帰るんだな! 悪いが……俺は手を抜かんぞ」


 ぱきぱき……と俺は指を鳴らす。


「もちろん! 勝つのはボクだ! 来て、【おばーちゃん】!」


「『おばーちゃん?』」


 その瞬間、上空に穴が開く。

 雷鳴と供に現れたのは……。


「ファルシオンじゃねえか」

『リスコス! おばあちゃんですぞぉー!』


 リスコスの手の中に、聖剣が収まる。


『どーやらあの聖剣、ノア様の母親気取りだから、その娘であるリスコスは、孫的に捉えてるよーっすね』


『もうどっからつっこんでいいのかわからん……』


 ぐったり、とナベリウスが肩を落とす。


「おばーちゃん……力、貸して」

『もちろんです! 愛する孫のためなら!』


 ファルシオンは光り輝くと、粒子へと変化。

 

 それはリスコスの両手にまとわりつくと、手甲ガントレットへと姿を変えた。


『どういうことっすかノア様。聖剣? 変形したっすけど』


「ファルシオンは別名【万剣のファルシオン】。所有者がもっとも扱いやすい武器の形に変化させることができるんだよ」


 リスコスは剣よりも、拳の方が得意とみた。


 ファルシオンはガントレットへと変わったのだろう。


「いっとくけどボク……強いよ?」


 ごぉ……! と彼女の体から、黄金のオーラが噴出する。


『ほげぁえあああああああああ! すごぎるぅううううううううう!』


 暴風はロウリィを吹っ飛ばそうとする。


 俺は白猫の尻尾を掴んで止める。


「ナベは影の中にすっこんでろ。消えるぞ」


『ノア様……お別れです……』


『ナベちゃんが消えかけてるっす!』


「リスコスのは神聖なる闘気……悪魔には毒だからな」


 俺はナベの尻尾を掴んで、影の中に収納する。



「こいよ、リスコス。俺は意地でもここを動かんぞ」


「でりゃぁああああああああああ!」


 彼女が思い切り、拳を振るう。


 パァアアアアアアアン……!


 と渇いた炸裂音とともに……。


「ろ、ロウリィぃいいいい!」


 魔神が、一撃で……消し飛んだ。


 あいつ……いいやつだったのに……。


「ま、いっか」

『よくねええええええええええええ!』


 真の姿である白竜の体で、上空に、ロウリィが居た。


「あ、生きてた」

『死ぬかと思ったわ! 細胞のひとかけらを、瞬時に再生しなかったら、死んでたっすよぉ!』


 まあ生きてるならそれでいい。


『でも……リスコス、やばすぎる。魔神を殺すほどの力があるなんて……』


「ふっ……上等! こい!」

「いくよぉ! パパァ……!」


 ちゅどーん!

 どがぁあああああああん!


 ずどどどどどどどっ!

 ちゅいーんちゅーん!


 どががががががががががが!


『なんて迫力ある大バトル!』


『おいやめろ! 地形が! この星の形が変わっちまう!』


 ばごぉおおおおおおおおん!


 どぎゃぁああああああああん!


 どっごぉおおおおおおおおおおん!


『やめてぇえええええこわれるぅうううううううううううう!』


    ★


「俺の勝ちだな、リスコス」


 俺の足下に、大汗をかいたリスコスが倒れている。


「ぜえ……ぜえ……ぜぇ……」


 虫の息の彼女を、領民達が遠巻きに見ている。


 くくく……成功だ。


『結局今回は、どーゆー無能ムーヴだったんすか?』


「娘に暴力を振るう姿を見せつけて、領民達をドン引きさせる作戦よぉ……」


『わーさいてーだー』


 しかもこの作戦、リスコスをボコボコして追いかえす効果も望める。


 領民達からは、娘をいじめる酷い父親と思われて、リスコスはボコられてショックを受ける。


 一挙両得の素晴らしい作戦……!


「「「さすがです、ノア(パパ)様!」」」


「ふぁ……!?」


 倒れ臥すリスコス、そして、領民達が、俺にキラキラした目を向ける。


「我らのために、ここまで死力を尽くしてくださるなんて!」


「え? どゆこと?」


「カーター領を出て行く気はないから、戦ったんですよね?」


「しかもあんな強敵を……凄い力ではねのけるなんて……! よほど我らを残して、この地を去りたくないってことですよね!?」


「この地に留まりたいから、自分の娘が相手だろうと、心を鬼にして戦ったということですよね!?」


 いやなんでそうなるんだよ!


「パパは、すごいや! やっぱりボクのパパは最強だったんだ! すごーい!」


『父親が凄い人だってわかって、こっちはこっちでノア様への好感度爆上げっすね』


 つ、つまり……。

 俺が決闘なんて挑んだから、領民からも娘(仮)からも、好感度があがっちまったってこと!?


『わざわざ領民の前で決闘なんかせずに、追いかえせばよかったのに……』


『余計なことするからこうなるんだ』


「くっそどうしてこうなるんだよぉおおおおお!」

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― 新着の感想 ―
[良い点] 相変わらずノアッチはドアホで大馬鹿さんですねw 最後までドアホで大馬鹿で有能でいてほしいですv 聖剣さん出て来て嬉しいですv そして、いつものオチ! [気になる点] ノアッチは向こうの世界…
[一言] リスコスww 貴女ってゴリラですか?wwwww あww ゴリラ扱いされたwwwwwww お腹痛いwwwwwwww
[一言] いや、連れ戻すも何も向こうの世界のノアがいるだろう 
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