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55/122

55.第七王子は闇の組織を成敗する


 ある日のこと、帝国にて。


 俺は帝城にある、大浴場にいた。


「いやぁー楽だわぁ~。ほんと楽だわ~」


 ジャグジーという、泡風呂に浸かる俺。


 昼間から風呂……なんて贅沢なのだろう。


『ノア様~。このジャグジー最高っすねー』

「だなぁ。うちにも導入したいくらいだぜ」


 俺と白猫ロウリィは、ジャグジーに浸かりながら、まったりしている。


 トロピカルドリンクを片手に、ちゅーちゅーと吸う。


『ノア様、自分にも一口一口~』

「ったく、しょうがねえなぁ」


 もう1本ストローを取り出し、俺とロウリィはジュースを啜る。


『熱い風呂に、冷たいジュース。さいこーっすね!』


「ああ、この世の天国だ……なにせ厄介な狂信者リスタも四バカ四天王もいない……最高だ」


 その様子を、離れたところから、じとーっと見ている黒犬ナベリウス。


『みんなが働いているってのに、良いご身分だなノア様』


『ナベちゃん風呂入らないの? きもちーっすよ』


『おまえ……生物学上は女だろうに、よく男といっしょに風呂入れるよな。恥ずかしくないのか?』


 するときょとん、とロウリィが首をかしげる。


『え、ノア様とは出会ってから今日まで、ほぼ毎日、一緒に風呂入ってるっすよ?』


「ああ。今更恥ずかしがるなんてしないよな?」


「『ねー』」


『熟年夫婦かおまえらは……』


 はぁ、とナベリウスがため息をつく。


『しかしノア様よ、いいのか、いつまでもこんなところで油売ってて』


「いーのいーの。俺はこのポジションが一番おいしい」


『今や皇帝のお悩み相談係っすからね、ノア様』


 ロウリィがトロピカルドリンクの添え物パインを、尻尾でつまんで、俺に向けてくる。


 もぐもぐ、うめえ。


「領主として働かなくて良い、てきとーに相談に乗ってるだけで、帝城で優雅な暮らしができる。さいこーだね」


『残された領民達はどうするんだよ?』


「領主代行のサラが上手くやるだろ。はー、いつまでもこの幸せが続けば良いのに~」


『ノア様ー、それフラグっすよー』


 と、そのときだった。


『ノア様、客人がお前の部屋に来ている』


「おっと、皇帝陛下が何か問題を持ってきたな」


 ざばっ、と俺は浴室から出る。


 ぱちんっ、と指を鳴らすと、濡れたからだから水分が飛び、さらにいつもの服装にチェンジ。


 さて、最低限の仕事でもしますかい。


    ★


闇の組織ダーク・ユニオンを、討伐して欲しい……?」


 俺にあてがわれている部屋にて。


 皇帝が神妙な顔つきで言う。


「ああ。先日のガルシア拉致未遂、メイシェンの誘拐と成り代わり事件。帝国の深いところにまで入り込んでいる……闇の組織が」


『闇の組織って、あれだろ? ノア様がガルシア皇子誘拐の際に、自演するときにでっち上げた架空の組織』


『あ、でも襲撃者の魔族は一応いたっすよね。メイシェンさんをさらって、成り代わってたのも魔族だったし』


 ……そう。

 闇の組織は、全くの架空の組織って訳じゃないのだ。


「ノア殿、2件続けて闇の組織による被害が起きている。放置すればまた同様の、下手したら今以上の被害が起きるやもしれぬ。そうなる前に闇の組織を倒して欲しい」


『どうするんすか、闇の組織のリーダーさん?』


 思念でロウリィが語りかけてくる。


『あとで雑巾絞りの刑に処す』


『バカ言ってないで、どうするんだ。引き受けるのだろう? 倒すことなど容易いのだろうし』


 ガルシア皇子襲撃の際に、相手の戦力はわかっている。


 一度全員ボコったからな。


『くくく……! ひらめいたぞ!』


『あ、ノア様がまた趣味の無能ムーヴしようとしてるっす』


『よくもまあ懲りずにやるものだ。逆に感心する』


 ペットどもをダブル雑巾絞りの刑に処す(魔法で)。


「皇帝陛下……任せておけ! このノア・カーターが、鮮やかに、速やかに、解決して見せよう!」


「おお、頼んだぞ、ノア殿!」


 俺はペットどもを引き連れて、帝城をあとにする。


『ノア様! どうしてくれるんすか! 尻尾がねじれちゃったよほらどうすんの!?』


「うるせえなぁ。尻尾くらいいいじゃねえか」


『よくないっす! ああ、自慢の尻尾がっ』


『おまえもう完全に猫だろ……。で、ノア様、無能ムーヴするにしても、これから何するのだ?』


 俺は黒犬を見下ろしながら言う。


「名付けて、【ノア様VS闇の組織、意外と相手は手強いぞ、倒すのに苦労したぞ】作戦だ!」


『『ふーん……』』


「もっと食いつけよ!」


『つまり、お得意の八百長ってことっすね。どうしてそんなことするんすか?』


「簡単よ。帝国に一秒でも長く留まっていたいからだ!」


『最低の理由どうもありがとうございました』


「よーするに、闇の組織との戦いを長引かせることで、俺は帝国に長く滞在できる。さらに、なかなか敵を倒せないでいることで、いつまでも倒せない俺への評価が下がるって寸法よ」


『いつも思うのだが、よくも次から次へと無能ムーヴを思いつくものだ……』


『でもノア様~。闇の組織との戦いを長引かせるっていっても、ノア様なら楽勝で倒せるじゃないっすか。相手が弱すぎたら、さすがに手を抜いてるってバレるんじゃないっすか?』


「その通り。だから……」


『『だから?』』


「俺が闇の組織を……鍛える!」


    ★


 ほどなくして、俺は闇の組織のアジトに居た。


「よーし、全員正座な」


「「「はい……」」」


 とある洞窟にて、俺の前には、かなりの数の魔族達が居た。


『ノア様はどうやって、こいつらの居場所を突き止めたんだ、ロウリィよ?』


『前にこいつらと会ったときに、魔力の波長を覚えてたんすよ。この人、一度会ったことのある魔力の波長なら、全員覚えてるらしいんで、どこにいても感知できるんすよ』


『本当に無駄な力もってるな……』


 俺は魔族どもを見回す。


「いいかてめえら……! これからこのノア・カーターが、直々にてめえらの腐った根性を鍛えてやる!」


 俺は手に持った竹刀しないを、ぱしーん! と地面にたたきつける。


「あ、あのぉ~」


 魔族の一人が、手を上げる。


「なぜ我々を鍛えるのでしょう……? あなたは敵側の……帝国側の人間ですよね?」


『『もっともな疑問過ぎる!』』


「ああ、その通りだ。だが気にするな。次意見したら体爆発させるからな」


『『理不尽すぎる……!』』


 ガタガタ……と魔族たちが震えている。


「てめえらよぉ、魔族なんだろ? 強大な魔法の力を持っている。魔王が生きていた時代、一時期この大陸の覇者だった一族がよぉ。誘拐なんてみみっちいことしてて、恥ずかしくないのかね? ん?」


 ぐっ……と魔族達が歯がみする。


「こんな洞窟にコソコソと隠れて、人間達に見つからないように逃げて隠れる日々……まったく、こんな姿を魔王が見たらどう思うだろうなぁ。さぞ落胆することだろうよ!」


「我らとて……わかっている!」


 にやり。

 よーし、食いついてきたぞぉ。


「我らだって強くなりたい!」

「よーし、なら俺の指導を受けろ。てめえら全員、強くしてやるぜ」


 魔族達は俺に懐疑的なまなざしを向ける。

 だが、ガルシア皇子誘拐未遂事件のときに、参加していた魔族が言う。


「この人は、堅牢で有名な帝城の城壁を、一瞬で消して見せた。その魔法力は本物だ」


 全員が、俺の前に跪く。


「我らをお導きください、闇の支配者ダーク・ロードさま……!」


「「「お願いします、闇の支配者ダーク・ロードさま!」」」


 だ、ダーク・ロードか。

 ふ、ふーん……ちょっとカッコいいじゃない?


『ノア様、出てる、闇の大賢者でてるっすよ』


 ハッ……! いかん、俺はそういうの卒業したんだ!


「お願いします、マイ・ロード!」

「我らに闇の神髄を!」

「闇の力を是非!」


「くくく……貴様らに、この俺が直々に力を授けよう……!」


「「「ハッ……!」」」


『おい、闇の支配者の役にどっぷりはまってないか、こいつ?』


『厨二病ってなかなか治らないらしいっすからね……』


 俺は魔族どもを見回す。


「ついてこい、闇の眷属ども! このおれが貴様らを導いてやろう!」


 こうして俺の、闇の特訓が開始したのだった!


    ★


 それから数日後。


「さすがだな、ノア殿!」


「ふぁ……!?」


 今日は、闇の特訓を終えて、久しぶりに皇帝の元へ顔を出しに来たところだ。


 これから闇の軍勢と、長い戦いになる……そう報告しようと思っていたのだが……。


「え、え、なんだよ皇帝さんよ?」


 皇帝は何度もうなずきながら言う。


「見事だノア殿、まさか、あの恐ろしい闇の組織ダーク・ユニオンすら、手懐けてしまうとは……!」


「は……? 手懐けるだぁ!?」


 すると、音もなく俺の周りに、魔族達が現れる。


「て、てめえら……! どうしてここに!」


「我ら一同、ノア様に忠誠を誓う【影】。ノア様が仕える王を守ることもまた、我らの仕事」


『な、なんすかこれ……どーゆー状況?』


『おそらく……あの闇の組織の魔族達は、闇の特訓(笑)をするうちに、改心したのだろうな』


『あー……人間にあだなすんじゃなくて、人間のあさまに仕える喜びを覚えた的な?』


『そうだ。さらにノア様は自分の作戦(笑)を部下に伝えてなかったからな。よもや、八百長試合をするために、魔族達を鍛えていたなんて思っても居なかっただろうよ』


 いちいち(笑)つけるんじゃあないよ……!


 魔族の一人が、前にでて、皇帝の前にひざまずく。


「我ら魔族、偉大なる指導者、ノア様のもとで修行し、心を入れ替えました! 陛下……これまでのご無礼、お許しいただけるのなら、ノア様とともに、この国をお守りする所存であります!」


 魔族に感化されたのか、皇帝は涙を流しながら、その肩を叩く。


「貴殿らの忠誠心、立派だ! 我ら帝国の庇護下に貴殿らを置こう!」


「陛下……! ありがとうございます、ノア様! 我らに居場所を与えてくださって!」


「見事だノア殿! 闇の組織を改心させただけでなく、我ら帝国の軍事力を強化してくださるなんて!」


 俺は……その場にしゃがみ込んだ。


 せっかく……戦いを長引かせて、帝国で安穏と過ごすつもりが……!


 数日で解決しちまったじゃねえか!


『はいノア様、大勝利ー』

『ここまで来ると呪われてるな、完全に』


「くっそぉおおおおおおお! どうしてこうなるんだよぉおおおおおお!」

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― 新着の感想 ―
[良い点] ノアさんさすが(笑)いつも通り(笑)サスノア(笑)オチが予想通り(笑) ノアさんには、ロウリィとサラさん、二人も奥さんが居て素敵ですね(笑)サラさんはまだ婚約者だけどv
[一言] 中二病は不治の病(笑)
[一言] もう、水戸黄門か暴れん坊将軍か、はたまた大岡越前かくらいの鮮やかな無能ムーヴっぷり。 毎度お付き合いする「ペットたち」もお疲れ様です。
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