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28/122

28.第七王子は皇帝陛下と謁見する



 ある日のカーター領。


 俺の部屋には、ガルシア皇子とその妻メイシェン姉上がいた。


「えー、っと……姉上。俺の聞き間違いかな。今……なんて言った?」


「皇帝陛下がノアに会いたがっているのです」


「おとうさま、のあさまに会いに、ぜひここにきたいそーですっ!」


 ……俺は眉間を抑える。

 またか、ま〜〜〜〜〜〜た厄介ごとか!


『皇帝陛下はどうしてこんなのに会いに来るんすかね……あ、やめて、尻尾ひっぱらないでっ』


「そーだよ、俺なんもしてないだろ」


 メイシェン姉上が笑顔で首を振る。


「ご謙遜なさらないでノア。あなたは皇帝の息子……つまりガルシア殿下のご病気を治したではありませんか」


『なるほど……そーいや医者もガルシア皇子の病気がわからんって、さじを投げてたんでしたね。そこにきて病気を治したノア様。親としては、お礼のひとつでもするってもんっすよね』


「いらねぇええええええ! 来んなよ!」


 またこれ皇帝に頭下げられてるノア様すげーって領民が感心するパターンだろ!


 俺知ってる!


『ノア様も学習するんすね……ぐぇええ』


「いや俺別にたいしたことしてないし、わざわざ皇帝陛下にこんなとこまで足を運んでもらうなんて……」


「おとうさま、ぜひ会いたいって、言ってました!」


「……ここだけの話ですが、現皇帝はガルシア殿下をそれはもう溺愛なさっているのです。だから助けたノアは救世主的な扱いになっているのですよ」


 いいよそんなの……。

 さてどうやって断ろうか……。


 いや、待てよ……。


『ノア様、丁重にお断りする感じっすか』


「いや、待て。ガルシア皇子、皇帝陛下に、是非とも俺も会いたいと伝えてくれ」


「ほんとですかー! やったー!」


 皇子がぴょんぴょんと飛び回る。

 ふっ……無邪気なヤツめ。

 利用されてるとは知らずに……くくく。


 俺の肩の上で、白猫ロウリィが思念で話してくる。


『ノア様〜。まーたですか?』

『ああ、これを使って、無能ムーヴだ』


『ああ……やっぱり……で、今回はどういう作戦なんすか?』


『【皇帝おやから迷惑料がっぽりせしめちゃう悪徳領主まじさいてー】作戦だ!』


『最低なのはいつも通りでは……あ、やめて、尻尾そんなふうにしちゃらめえええ』


 無邪気に飛び跳ねるガルシア皇子と、微笑む姉上。


 俺はあらましをロウリィに説明する。


『今回皇帝陛下の大事な息子を、俺が助けたわけだ。当然の権利として、褒美をせしめても問題ないだろ?』


『まあ……いちおう恩人っすからね。何か褒美でもって流れにはなると思うっすよ。人の親としては』


『そこで俺が、ものすっごい高い金を要求する訳よ! 鉱山の権利でもいいな。確か帝国はきんがよく出るって聞くしよ』


『うわぁ……あんた相手は皇帝陛下っすよ? そんな欲張ったら逆に失礼なんじゃ……』


『失礼と思われたらそれはそれで駄目領主感がでてオッケー。向こうが素直に鉱山の権利を寄越してきたら、なんて強欲な悪い領主なんだサイテー、と思われるから、どっちにしても俺にとっては利がある』


『その悪知恵を領地の平和のために使いましょうよ……』


 何はともあれ、作戦決行だ。

 さぁ来い皇帝陛下。


    ★


 数日後。

 カーター領に皇帝陛下がやってきた。


 応接室にて。


 俺の前には白髪交じりの偉そうなおっさんが座っている。


『この人が現皇帝?』

『そ。マデューカス皇帝陛下。御年60歳。マデューカス帝国を治めるナイスミドル』


『確かに威厳ありそうな見た目っすね。どこぞのバカ王子とちがって……ぐぇええ』


 無礼な白猫をにぎりつぶしながら、俺は笑顔で言う。


「ようこそ皇帝陛下。こんなへんぴな場所まで遠路はるばる」


「構わん。今日はおぬしに息子の治療の礼をしにまいったのだ。余が自ら出向くのは当然の礼儀だろう」


『わー、器もでっかい。ほんとノア様や駄馬兄さん、バカ国王とは違うっすね』


 うっさい白猫は椅子の下で踏み潰す。


 さて……交渉を始めよう。


「余はおぬしに大変感謝している。そこで……おぬしには何か褒美をと考えている。何が欲しい、申してみよ」


「では陛下……遠慮なく」


 俺はテーブルの上に足を乗っけて、偉そうにふんぞり返って言う。


きんだ。あんたんとこの金鉱脈……金竜鉱山をよこしな」


 ふふ……どうよこの態度!

 クソ領主感でてるっしょ!


『普段から結構そんな感じあるっすよ……』


「なに……金竜鉱山……だと……?」


 マデューカス皇帝は目を剥いて言う。


『わー、怒ってる。ノア様やばいっすよ。その態度で、いきなり金を寄越せなんて言えば、無礼千万で打ち首もありえるっすよ』


『大事な大事な息子さんの、命を救ってやった恩人だぜ俺は? 殺せるわけないっつーの。しかも帝国外で不祥事おこせるわけない』


『無駄に知恵が回りますねノア様さいてー』


『語尾に最低をつけるなバカ魔神』


 しばしの沈黙の後。

 絞り出すように、皇帝が言う。


「おぬしは……本当に金竜鉱山が欲しい、と申すか?」


「ああ。それ以外は受け取る気ないね。どうする? ま、別に無理強いはしないけど~?」


 と、そのときだ。


 ポロ……と皇帝陛下が涙を流したのだ。


『ちょっ!? この人どうしたんすか、いきなり泣き出して!』


『わ、わからん……どうしたんだろうか……』


 マデューカス皇帝はハンカチで目元を拭う。


「ノア……いや、ノア殿よ。やはり貴殿は、素晴らしい人物だな」


「『ふぁっ!?』」


 皇帝が……わらっていた。

 そして、その目には俺に対する、確かなリスペクトを感じる。


「ど、どうしたんだよ急に……」

「金竜鉱山の窮状を知って、あえてそこをほしがるなんて……」


『窮状? え、なんかヤバいことになってるすかね、その鉱山』


「我がマデューカス帝国にある金竜鉱山は……現在、ドラゴンに占拠されておるのだ」


「『ドラゴンに、占拠!?』」


 何それ聞いてない!


「非常に強力なドラゴンだ。我が帝国の精鋭が軍を率いて挑んでもかなわなかった……我が国にとって最大の懸案事項とも言える。そこをあえてほしがる……つまりは、そこの問題を解決してくださる、というおつもりなのだろう?」


 いやいやいやいや!

 何それ知らない! 初耳!


「さすが、ウワサに名高い魔の森の盟主。我が国の至宝ガルシアの命を救うだけでなく、国をも救ってくださるとは……」


「のあさま、すごいです!」


 黙って後ろで聞いてたガルシア皇子が、俺に尊敬のまなざしを向けてくる。


「やっぱりのあさまは、さいこーの領主さまで、いだいなる、だいえいゆーです!」


「うむ。ガルシアの言うとおりだ。やはり貴殿は素晴らしい……」


 あああ皇帝親子の好感度ガンガン上がってるぅううううう!


 そんな気さらさらなかったのにー!


『こりゃもう引くに引けないっすね。がんばれノア様、今度はドラゴン退治っすよ』


 どうしてこうなったぁああああああああああああ!

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― 新着の感想 ―
[一言] ポイントなんか入れないでって無能ムーブすれば、皆ポイントいれてくれないんじゃないですかね?(白目)
[気になる点] 息子に~くださるって違和感すごい。
[一言] アニメ化されたロウリィを是非みたい。 握りつぶされたり、踏んづけられたり、しっぽ引っ張られたり
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