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26/122

26.第七王子は盗賊団に1人果敢に立ち向かう(大成功)



 帝国に嫁いだメイシェン姉上が、夫である皇子ガルシアくん(5歳)を連れて領地にやってきた。


 俺の部屋にて。


「のあさま、のあさま、まほうをおしえてくださいっ」


 ガルシア皇子は机に載りだし、きらきらした目を俺に向けてくる。


『盗賊から助けられて以来、この子すっかりノア様信者っすね』


「うぐうぅ……いらねえんだよこれ以上厄介ごとはッ」


「のあさま、のあさま、ぼくものあ様みたいな、大魔法使いになりたいのですッ」


 はあぁもう……どうして面倒ごとが次から次へと……。


 と、そのときだった。


「ノア様! 大変でございます!」


「お、おおセバス……どうした慌てて」


 最近すっかり心変わりしちゃった老執事セバスチャンが、大汗をかきながら部屋に入ってくる。


「盗賊たちが、領地に押し寄せてきているとの伝令です!」


「と、盗賊ですって!」


 部屋にいたメイシェン姉上が青い顔をして叫ぶ。


「そんな……ノアが盗賊を追い払ってくださったのに……」


「おそらく復讐でしょうな。あやつら、盗賊の大軍勢を率いて、カーター領へ向かってきているとのことです」


 俺が吹っ飛ばした盗賊のリーダーが意趣返しに来てるってことか。


 チッ……!

 消しとけば良かったぜ。


『どうするんすかノア様? 皇子がここに居るなか、盗賊が攻めてくるこの状況で』


「うーむ……うん。よし、決めた!」


 俺は立ち上がる。


「セバス」

「ハッ! 戦の準備ですね! すぐに騎士団長ディーヴァと魔道士団長ライザに招集を……」


「いや、その必要はない」


「なっ!? ひ、必要ないですと!」


「ああ……みんなはここにいろ」


 俺はマントを身につけて、バッ……! と立ち上がる。


「俺が、一人で行く」

「そ、そんな! 無茶です! お一人で行ってもし死んだりしたら……」


 ふっ、と俺は微笑んで言う。


「そのときはセバス……後は任せた」

「の、ノア様ぁ〜〜〜〜〜〜〜〜〜!」


 その場にへたり込んで、セバスがギャン泣きする。


 いい年したおっさんが号泣する姿はちょっとひくわ。


「ガルシア皇子は姉上とここに残ってください。決して、館を出てはなりませんよ」


「わかりましたっ、のあさま……おきをつけて!」


 俺はうなずいて、ひとり館を後にする。


 後ろからとことこと白猫がついてくる。


『で、本音は?』

「盗賊達を利用して無能ムーヴ」


『あんたほんとブレないな!』

「ったりめえだろ! 俺は! 無能って思われたいの! 楽隠居したいのっ!」


 ぴょんっ、と白猫ロウリィが俺の肩に乗っかってくる。


『盗賊を利用って、具体的にどうするんすか?』


「行って、捕まろうかなって」


『なっ!? 捕まる!? ノア様なら盗賊なんて指ぱっちんで全滅させられるっすよね』


「まあな。あんなザコに後れを取ることはない……が、ここで俺がやられたらどうなると思う?」


『まあ……あんだけかっこつけて行って、返り討ちに遭ったんだから……』


「だせえよな。つまりあんだけイキってたのに負けたノアは、駄目領主だったってなるわけよ。領民からの信頼はがた落ち。皇子からも失望されるって寸法」


『うーん……そうなるかなぁ』


「俺のIQ50万の高性能頭脳だとそういう計算になるの」


『ノア様のIQ5がいいとこ……あ、やめて、そこひっぱらないで、らめぇ〜〜〜〜!』


 まあ何はともあれだ。


【領主様、あんだけかっこつけて盗賊にあっさり捕まるなんてだっさーい★】作戦、決行だ!


    ★


 俺がやってきたのは奈落の森アビス・ウッドの中。


 敵の気配は魔力感知でわかっていた。


 空中に漂いながら敵の位置を見定める。


『ノア様これからどーするんすか?』

「とりあえず敵の大将んとこ行って、命乞いだな。領民達あげるからぼくだけたすけてーって」


『ノア様って最低を記録するスポーツでもやってるんです?』


「うっせえ。しっかし盗賊ども、どいつもこいつも魔力量が少なすぎて見分けつかんぞ……お、こいつか?」


 集団の中で、少しだけ魔力量の多いやからがいた。


 俺はそこへ向かって飛んでいく。


「よいしょー」


 ぐしゃっ!


「ぐしゃ……? なんか変な音したな……?」


 そこは森の中、周囲には盗賊の群れがいる。


 よしよし。


「あれ? なんか周り引いてね?」

『ノア様。下、下……』


「下ぁ〜……え?」


 なんか俺の足下に、潰れた肉片があった。


 なんだこりゃ……?

 まあいいや。


「あー、諸君が盗賊団かね? 我が領地を狙うという、不届き者は〜?」


 俺はニヤリ、と笑う。

 駄目領主の演技をしないといけないからな。


 自分の実力がわかってないのに、イキってる系領主だ。


「「「「…………」」」」


「やれやれ……この俺、ノア・カーターがいるというのに攻めてくるなんて命知らずどもめ……」


 ぽきぽき、と(意味もなく)指を鳴らしてみる。


 その方が調子乗ってる感あるからな。


「貴様ら……生きてこの地をでれると思うなよ……」


 で、ここで手を抜いて挑んで、返り討ちに遭う、というのが俺のシナリオ。


 ふっ……計画通り……。

 なんてスムーズなシナリオ運びなのだ。俺は一流の小説家にでもなれそうだ。


「「「「すみませんでしたぁああああああああああああああ!」」」」


「ふぁ……!? な、なに!?」


『盗賊達、武装解除して、みーんな土下座してるっすね』


 頭の上で白猫がため息をつく。


「ノア様に逆らう気など毛頭ございません!」


「なのでどうか、命だけは! 命だけはご勘弁をぉおおおおおおお!」


 盗賊達が必死になって命乞いしてる。


 え、なんで!?

 俺、まだ何もやってないのに……。


『ノア様、下、下。踏んづけてるそれ』

「この肉片がどうしたよ?」


『多分魔族っすよ。しかも残留魔力量からして、結構レベルの高い』


「はぁ!? 嘘だろ!? 魔族で、あんなちょこっとしか魔力量ないわけ!?」


『だからあんたが元居た頃から時間が経ってて、魔族のレベル……魔力量も低下してるんすよ。おそらくこの盗賊達は魔族を用心棒として雇ってたんすね』


「で、俺があっさり殺しちゃったから……って、あれ? も、もしかして……俺、またやっちゃいました?」


『おめでとう、やらかし記録更新っすよノア様』


「ぐあぁああああああ! やっちまったぁああああああ!」


 盗賊達が震え上がっている。

 やべえ、やべえぞ、こんなとこ領民達に見られたら……。


「「「さすがです、ノア様!」」」


「どっから出てきやがったぁああああ!」


 俺の背後から、狂信者リスタをはじめとして、武装したアインの村の連中が現れた。


「さすがだぞノア様! 盗賊達をお一人でお相手するなんて、なんという勇気!」


 騎士団長ディーヴァが涙を流しながら拍手する。


「ふっ……しかも武力ではなく言葉で、盗賊達を改心させるなんて。甘い男だ……だが……ふっ、さすが我が眷属。器の広い男よ」


 魔道士団長ライザが、感心しながら拍手する。


「お強いだけでなく慈悲の心まで持ち合わせるなんて! みました、ガルシア皇子!」


 リスタの腕の中では、ガルシア皇子がだっこされていた。


「のあさま、かっこいいですー! さいこーです!」


 あああああああまた領民の好感度が、しかも皇子のもまとめて好感度あげちまったぁああああああああ!


『ノア様ぜっこうちょーっすね』

「うわぁあああん! どうしてこうなるんだよぉおおおおお!」

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― 新着の感想 ―
[一言] ノア様誘拐(笑)に成功したら狂信者たちによる誘拐犯フルボッコ大会が始まりそう…。(もっと酷い展開に)
[一言] いくら皇族とはいえ、5歳の子を結婚させないでしょう 政略結婚でも、10以上も年上相手はないと思います
2021/11/06 12:02 退会済み
管理
[一言] 無能ムーヴをかまそうとしてもノアの考えの斜め上を現実がいきますねw
2021/08/23 01:53 退会済み
管理
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